フランチャイズに特化した異業種交流会

業界の登場人物

フランチャイズという業界を見渡した場合、そこで主役級の役割を演じているのは、主催者であるフランチャイザーと加盟者のフランチャイジーです。舞 台に立ち、時にスポットライトを浴び、時に幕間で呼吸を整えながら、それぞれの役割を演じながら観客に感動というサービスを提供しています。
客を飽きさせないため、また次の公演にも足を運んでもらうため、ザーとジーは協働してそれぞれのパートを演じているのです。

ところがここにもう一人、舞台の袖に隠れていて見えない黒衣的存在、あるいは、主役とは呼べないけれど端役というわけではなく、この主役二人を結びつける重要な役割を担っている役者がいます。いや、時としては役者ではなくディレクターや監督のような立場かも知れません。
それは、聞き慣れた私たちのことば、つまり業種で言うと、フランチャイズコンサルタント会社や加盟開発代行会社ということになります。
彼らは、フランチャイザー、フランチャイジー双方のサポート(演技指導)をすると同時に両者を引き合わせ協働事業へと導きます。

そういった役割を担うフランチャイズコンサルタント会社や加盟開発代行会社ですが、この両者の境界はあまり判然とはしません。
照明のあて方、あるいは軸足のかけ方、重心のバランスで変わるようです。

登場人物のキャラクターそれぞれ

企業が、自社のビジネスをより広く、より速く展開したいと考えた場合、フランチャイズという手法を用いてそれを実現しようということはよくあります。
特に、繁盛しているお店を経営していたり、評判のサービスを提供していたりすると、これってもしかして全国でうけるかも、こんな小規模でチマチマしている場合じゃないなと思ってもおかしくはありません。
しかし、直営で出店していくには、資金もあまりなく、スタッフもいないから、フランチャイズが良いんではないかとか突然経営者の脳裏に閃光が走る瞬間も あったりするでしょう。あるいは逆に、サービスを提供している相手から、御社の商品をぜひうちでも扱いたいからフランチャイズ展開していただければ、弊社 も加盟したいとか言われて、じゃー、そこまで仰るのならばとフランチャイズ展開を試行することもままあると思われます。

しかし思ったは良いけれど、ではどこから手を付ければよいのでしょう。それを実現化するのには自社のビジネスを展開してきたのとは全く異次元の思想とスキルが求められます。
外部にパートナーを求めるわけですから、全く新しい理念が求められます。法的な対応も準備しておかなければなりませんし、組織の再構成や新しい人材も必要です。
そういった場面にスッと参上し、「フランチャイズ本部を立ち上げるのですね。弊社にお任せ下さい。弊社は毎年**件の本部を立ち上げ、会社設立以来の5年間では***の本部を立ち上げた実績がございます。契約は一年間で***万円となります」。
と、見積もりを提示するのがいわゆるフランチャイズコンサルタントと呼ばれる業者の方々です。

さー、本部は立ち上がりました。体制は整いました。さて、次に本部が行わなければならないことは何でしょうか。
本部を立ち上げただけでは、恐らく何年たっても当初の見込み通り、加盟店がバンバン増えて全国制覇まもなく実現!とはなりません。

そうです、加盟店を増やす努力をしなくてはなりません。加盟店あってのフランチャイズシステムなのですから。

そこで、次にスッと本部の前に現れるのが、先に紹介した「加盟店開発代行業者」です。
「本部の立ち上げは順調ですか? あまり加盟店さんは増えていないようですね。でしたら是非弊社にお任せ下さい。弊社は毎年**件の加盟店を開発しており ますし、会社設立以来の5年間では***の加盟店を開発した実績がございます。加盟店開発に当たっては独自のノウハウと多くの顧客を有しております。契約 は一加盟店につき***万円あるいは加盟金の半額をいただくというのでいかがでしょうか」。

現れる時期やタイミングが違っているのがお分かりいただけると思います。
ただ、現実には、後者の加盟店開発までこなすフランチャイズコンサルタントもいらっしゃいますし、本部立ち上げを行う加盟店開発業者もいらっしゃいます。
本部立ち上げは一回で終わるものではなく、状況に応じて本部機能を変えていく必要がありますし、加盟店開発というのはフランチャイズを運営していく上で継続的に行っていかなければいけないものでもあります。
従って、両者はフランチャイズを展開する上での車の両輪のような存在だと言っていいでしょう。

一応の括りとして本部の立ち上げにまつわる仕事をメインにこなしているところはフランチャイズコンサルタント会社。加盟店開発に重きを置いているところは加盟店開発会社ということになるのだと思われます。
いくつか前のログで紹介した株式会社ベンチャー・リンクは加盟店開発ではつとに有名です。

黒衣的存在とは言いながら、逆に黒衣故にでしょうか、一時はその存在がマスコミを賑わし、その営業手法に対して問題が指摘されたのは事実です。
ひさしを貸して母屋を乗っ取られるみたいな悪評も出ました。しかし果たして本当にそうなんでしょうか。単なる手法の違いであり、その手法に対する価値観の 違いが問題を大きくしていったようにも感じます。羮に懲りて膾を吹くではベンチャースピリットは失われてしまいます。このような場合、私たちのとるべき最 良の道は、”直接お会いして自分たちの目で見てみる”だと考えています。

フランチャイズに特化した異業種交流会

すっかり前置きが長くなってしまいましたが、今回、紹介する株式会社パワフルブレーンズはどちらかというと加盟店開発に重心を置く、加盟店開発を得意とする企業と言って良いでしょう。
それは、同社代表者の経歴からも伺えます。
社長の西山公人氏の前職は株式会社リンク・ワン、そしてその前職は株式会社日本エル・シー・エーです。株式会社日本エル・シー・エーの代表取締役会長兼 Co-CEOの小林敬嗣氏は株式会社ベンチャー・リンクの代表取締役会長です。

株式会社パワフルブレーンズがフランチャイズオーナー会という集まりを開くというので取材に出かけてみました。
同社は、弊社サイトフランチャイズWEBリポートに「東京厨房」という名前でフランチャイズの加盟情報を掲載しているところです。
掲載は、同社が「東京厨房」を運営している株式会社新鮮組本部に対して行っている営業支援の一環だと思われます。

さて、そのような情報を元にオーナー会に行ってきたわけですが、「FCオーナー会」という言葉をそのまま聞いてフランチャイズ業界関係者が思い浮かべるのは、多分フランチャイズ本部が主催しているオーナー会です。この場合、主催者はフランチャイズ本部です。
しかし、実際にはこの会の主催者は株式会社パワフルブレーンズであり、出席者は各FCオーナーということでした。
ただ、もしそのFCオーナーというのが同社の関係本部のオーナーばかりであれば、あまりおもしろくありません。単なる身内の親睦会です。
しかし、事前の話ではそうではないということでした。その瞬間食指が伸びました。

セミナーの後の自己紹介が始まったところで会の性質ははっきりしました。
挨拶の大半は以下のような台詞で始まりましたから。
「えー、皆さん初めまして、○○株式会社でフランチャイズ事業を担当している××です。弊社は~チェーンを**店舗、~チェーンを**店舗展開しています。今回は初めての参加ですが、有意義な話が聞けそうで楽しみにしております」。
「えー、皆さん初めまして、~チェーンを**店舗運営していますが、ご存じのようにこの業界はあまり景気がよくありません。ここでおもしろそうなチェーンのお話が聞けたら嬉しいです」等々。
という自己紹介が15~6名の口から同様に聞かされます。おもしろいのは頭に付く~チェーンを運営しているとか、~に加盟しているということばです。
こういった自己紹介を聞く機会はそうそうにないのではないでしょうか。

自己紹介に先立って行われたセミナー(勉強会)のタイトルは「いまどきの若者の心を捉えるアルバイト採用手法」でした。人材派遣などの人材ビジネス を業務とする株式会社クイックによる講演です。参加者の全員がフランチャイズオーナー、つまり現場で採用に当たっている、苦労している方々ばかりなわけで すから、関心を持たざるを得ないタイトルです。

FCオーナー会というと、本部相手に集団訴訟したりするグループ、あるいはそこまではいかなくても、オーナー同士悩みを聞きあったりするグループで あったりということが想像されたりもします。どちらかというと弱者連合みたいないイメージです。←決して、決して悪意ある表現ではありません。本部と加盟 店は対等であるといくら言っても、一対一になってしまうと多くの場合は圧倒的に本部が優位です。そういった意味から、オーナー同士のユニオン的な組織も必 要ということでしょう。ただオーナーといえども上は大企業から下は個人が脱サラで開業というところまで実にさまざまなわけだし、基本は全てのオーナーは事 業家というポジションなのでユニオンという用語も相応しくないのかもしれません。ここら辺の事情がフランチャイズ業界のカオス化に拍車を掛けているとも言 えるわけですが、これについてはまた別のログで考察してみたいと思います。

前向き、とにかく前向きな人たちのオーナー会

さて、しかし、ここは違います。良い意味でも悪い意味でも180度正反対と言ってよいでしょう。このビルの一室に漂っているのは成功を目指す人たちの情報です。京都議定書違反すれすれのCO2量です。そしてこれも目に見えるわけではありませんが、その情報をキャッチするためのアンテナが各人の頭の上 に数本ピッピと立ち上がっている感じです。
異業種交流会のFCオーナー版、FCオーナーに特化した異業種交流会といった趣きですが、こういった積極的な会の成立は多分に主催者の個性が反映しているのだろうなとも思わせます。
交流会の間中、一人でぽつんと立っている方はいませんでした。唯一いたとしたら筆者ぐらいのものです。カメラ片手にマイクを突き出す筆者は結構孤独でした。
常に誰かが誰かと話をし、積極的を通り越してどん欲なまでに情報を得ようとしていました。出席者の一人が、積極的でない人はこの会に出席してもつまらないでしょうねと言っていましたがまさにその通りです。

それでもたまたま一人になる会員さんもいらっしゃいます。そんなときは主催者の誰かがスッと寄っていって、**さん、どうですか景気は?とかなんとか話しかけていました。主催者の気遣いも場の盛り上げには一役かっているようでした。

インタビューの中で一番多かった発言は、「本部は良いことしか言わない、決して悪いことや本部が不利になるようなことは言わないので、現状がどうな のか現実は一体どうなのかがよく分からない。しかしここはオーナーの集まりだから、実際の話、現実の数字を聞くことができるからとても現実的な意味があ る」というようなものでした。
本部が良いことしか言わないとまでは言えないと思います。中には悪いことも含めて情報開示に積極的な本部もあります。しかし、このようなオーナー同士の会はそういった悪い情報だけでなくより有意義な情報を得られるという点で意味があるのでしょう。

交流会では、主催者であるパワフルブレーンズが提携している本部商品が試食という形で提供されていました。さながらフランチャイズショーなどて開催されるフードコートのミニミニ版という雰囲気でしたが、趣旨そのものは同じです。
飲食において商材の魅力を伝えるのに試食に勝るものはありません。パワフルブレーンズそのものが飲食業を得意とする企業ですし、出席者の大半も飲食を中心とする企業の出席が多いわけですから、重要な演出の一つだと思えます。


会は15時に始まり18時解散。およそ3時間のスケジュールでした。
出席者は約16人、半数がフランチャイズチェーンのオーナーであり、残りの半数は企業のフランチャイズ部門責任者という方々でした。ざっと聞いて回ったと ころまだまだ主催者のパワフルブレーンズや同社のスタッフとの個人的付き合いで参加された方が大半のようでしたが、規約にそれがうたわれているわけでもな いようです。参加資格としてうたわれているのは「フランチャイズビジネスのオーナーもしくは、事業の責任者であること」となっています。

 
この会の発案者は同社フランチャイズ支援事業部 部長の小林氏です。当日は司会進行をされていました。直接お話をする機会はなかったのですが、この会の意 図そのものは何なのか疑問に思われている出席者もいました。「こういった会はジーとしてはありがたいが、会の目的はよく分からない。自分がここで情報を得 て、何らかのチェーンに加盟しても場の提供者には何のメリットもないから、どうなんだろうか」
素直なぎもんだなという感じです。
しかし、恐らくそれでも主催者は構わないのでしょう。場の提供者としてのポジションを目指しているのでしょう。囲い込みではもうダメという気持ちは伝わっ てきます。そのためには場を提供し交流を促進し情報を開示し、その結果イニシアチブを取っていくのが目的なのではないでしょうか。
想像ですが、どうなんでしょうか。
よくあるFCショーなどは、今から加盟しようかなと考えている方々が参加するわけですが、このような既にFCのオーナーである方々の会合というのは、たとえ人数は少なくとも目的や話題に共通点がとても多いので、参加者による人的シナジー効果が容易に発生するようです。
しかし、そのためには、より効果を高めるためには、今のところ参加メンバーがまだまだ同社のコネクション、営業先、個人的知り合いから構成されているようなので、それ以外からの多種多様な方々の参加がのぞまれるのではないでしょうか。

※出席者の方々へ、オーナー会に参加したきっかけや回数、出席しての感想などをインタビューしました。
交流会に興味のある方は、再来月の八月にも第4回目が予定されているようですから、自ら出席し体験されることをお勧めいたします。

オーナーズボイス1

常磐線沿線にラーメンチェーンを4店舗運営するオーナー。
参加は今回が3回目で全て出席。自分自身も今のラーメンチェーンに加盟したのは本部の風通しが良いと判断したから。ここの会も色んなチェーンのオーナーが集まっていて、風通しの良さを感じる。こういったオープンな会を催すことができる主催者はそれなりの自信があるのではないでしょうか。

オーナーズボイス2

宅配業、運輸業を主業務とする会社の飲食部門の次長
現在は複数のフランチャイズ本部に加盟し、飲食チェーンを運営。
フランチャイズ事業はあまり収益が上がる事業とは言えないが、未経験者が参入するには有効なツールではないでしょうか。
フランチャイジーとしてこういった集まりに出席できるのは幸いです。 本部から出てくる数字というのは信頼できない部分もありますが、こういったところで聞く、実際に運営されているオーナーからの声は何よりもありがたいです。