フランチャイズ研究会 中小企業診断士木村 壮太郎
2015-05-22 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 中小企業診断士 木村 壮太郎

個人でフランチャイズを始めるメリット・デメリット

 このコラムのポイント

フランチャイズというのは新規事業を構築したい法人の加盟も近年増えていますが、やはり起業したいと考える個人にとって有効な経営手段でもあります。ここでは、個人の方がフランチャイズで独立したらどんなメリット・デメリットがあるかがまとめられています。

フランチャイズWEBリポート編集部


個人がFCビジネスを取り組む意義

前回、FCビジネスはFC本部、FC加盟者共に「限られた自社資源」の中で、互いに協力し合うことでビジネスを発展させていくのに向いたビジネスモデルであることをお伝えしました。

今回は、その中でも、特に個人がFCチェーンに加盟してビジネスに取り組むことのメリットを大きく3つに分けてみます。

1.お客様に提供する価値とブランド力

2.起業時に必要なものと設計図・指導者の存在

3.継続的なビジネスの発展

お客様に提供する価値とブランド力

ビジネスの基本的な仕組みは、お客様が求める価値を提供して、その代価として報酬を受け取ることにあります。また、その際には、『誰に』『何を』『どのようにして』提供するのかが重要です。

しかし、この価値の提供時において、ゼロからビジネスを始める時には早速2つの大きな壁にぶつかります。

1つ目は、そもそも自分でお客様に『商品』として提供できる価値があるのかという問題です。何を言っているんだ、と思われるかもしれませんが、売れると自分では思っていても、ビジネスとして成り立たない個人のアイディアで終わることが大半です。

私も起業家のビジネスプランのチェックや審査を務めることもありますが、事前の市場調査が甘かったり、単なる個人の思い付きや趣味の範囲を出ないものが残念ながら多いです。

一方で、前回もお話しましたが、そもそもこれからビジネスを始める個人が、お客様に魅力を感じてもらえる価値を提供することは、よほど際立った商品力や、他と違う個性・価値観やコンセプトを持っていないと難しいです。

その点、一定の成功実績のあるFCチェーンならば、既に市場でお客様にある程度受け入れられた価値としての商品がありますし、どういう客層のお客様に向いているのか、といったことも事前に把握可能です。スタート時点で競争力のある商品を持っていることは大きな強みになるでしょう。

また、2つ目の問題として、ブランド力・信用力の問題があります。同じ価値だとしても、どういう看板で勝負できるかが重要なわけです。特にこの点は労働者を辞めて起業する個人にとっては見逃せない観点です。

よく、「会社にいる時は会社の看板で売れた。会社でうまくいっていたから独立したが、全く商売にならなかった。」という話を聞きます。誰もがそうです。残念ながら、特に大手企業に勤めていたら、ほとんどは『会社の看板』で売れたという要素が強いです。独立したら、そのブランド力を一瞬で失うわけです。

ここで、一定の成功実績のあるFCチェーンならば、独立しても『会社の看板』をふんだんに活用することができます。例えば、私が大手コンビニチェーンとほぼ同じ商品を揃えて、『木村商店』という小さな小売店を始めても、余程でない限りあまり買う人はいないでしょう。

しかし、私が例えばセブンイレブン、ファミリーマート、ローソンといった大手コンビニチェーンの看板と店舗で出店していたら、ある程度お客様が買ってくれる可能性が高いです。

これは、お客様はセブンイレブン等のコンビニで買っているという感覚であり、FC加盟者の木村から買っているとはまず考えないからです。このブランド力の差は余りにも大きいです。

起業時に必要なものと設計図・指導者の存在

ビジネスの開業前後には、やるべきことが多くあります。例えば資金調達、人材採用、店舗の立地調査、店舗の開業準備、役所等への届け出、・・・、多くの準備が必要になりますし、実際に始めても店舗のオペレーション、接客、経理、総務、人材育成、販売促進策、多くのやるべきことが山ほどあります。

私は、その際に重要なのはまずは『設計図』であると考えております。人は具体的にイメージできないことは行動が難しいですし、イメージできたとしても体系的・効率的・徹底的に行動できなければ成功することが難しいです。

まして、ゼロからビジネスを始める個人が、前述の『提供できる価値』以外にもこれらの必要なものを適切に気付き、実行のための適切な計画を立てた上で行動できるだけの余裕や発想があるかというとやはり難しいことが多いのではないでしょうか。

その点、一定の成功実績のあるFCチェーンならば、開業準備から開業後のオペレーション、そしてアフターフォローまでパッケージ化された『設計図』が存在しますので、迷ったりすることなく徹底して行動することに集中することが可能です。

また、もう一つ重要なのは『指導者』の存在です。『設計図』を手に入れて行動したとしても、正しく実行できているのか、間違っているところはないかをチェックし、指導してくれる存在がいるかどうかは成功を大きく左右します。自分ではやっているつもりでも、実はできていないということも多くあります。

また、悩みや問題点について相談し、解決策を提示してくれる相談相手がいるかどうかも、個人が起業した際には非常に重要になってきます。

一人で問題を抱え込んだり、独りよがりな行動で自分が間違った方向に行っていることすら気付いていないことも多いので、『指導者』の存在は不可欠です。

ここでも、FCチェーンには担当のスーパーバイザーや各種本部のサポート体制がありますので、経営や店舗運営での相談を依頼したり、やチェックを受けることが可能です。

特に一定の成功実績のあるFCチェーンでは、多くの加盟店の事例や指導経験もありますので、適切に相談すれば多くのヒントや気付きを得られる可能性が高いです。

継続的なビジネスの発展

最後の観点が、『継続的なビジネスの発展』です。単に経営計画をしっかり立てて行動すれば成功できる訳ではありません。特に近年はビジネスモデルの陳腐化が早くなっており、以前は業種によっては10年以上続いたビジネスモデルでも、近年では3年、いや、1年でも陰りが出てくるという状況が増加しています。

ライバルも研究してくるので、よりお客様の求める価値を提供してきたり、あるいは価格競争を仕掛けてくることもあります。

そういった中で、お客様に継続的に満足してもらい、リピーターになってもらうにはより魅力的な価値を開発・提供し続ける必要があります。つまり、一度成功できたとしても、引き続き成功し続けるための努力が不可欠なのです。

しかし、小さな個人が継続的なビジネスモデルの開発を行っていくには、資金面・人材面・情報面等で様々な限界にぶつかることが多いです。例えば、飲食店を経営していて、新しいメニューを開発しようとすると、多くのコストと時間がかかりますし、個人店ならそもそも日々の店舗運営でメニュー開発に時間を割くには限界があります。

また、お客様が何を求めているのか市場調査を行おうとしても、個人で得られる情報は質・量共に限界があります。外部に依頼するなら、高額な費用がかかりますので、やはり個人店には難しいことが多いでしょう。

その点、FCチェーンに加盟すれば、新商品・サービスの開発はFC本部が行いますので、加盟店は最新の商品が出れば早速お客様に提供することが可能です。FC本部が開発してくれた新しい価値を取り入れていくことで、持続的な成長・発展を目指せます。

もちろん、FC本部の開発した新商品が振るわなかったり、競争負けすることもあって万能ではありませんが、自分で開発することのリスクに比べれば、日々の経営に集中しながらお客様に提供する価値をブラッシュアップできるというメリットの享受は非常に大きなものであると言えます。

FCビジネスは個人がスタート時に得られるアドバンテージが大きいのでおすすめ

1.お客様に提供する価値とブランド力、2.起業時に必要なものと設計図・指導者の存在、3.継続的なビジネスの発展、の3つの観点より個人がFCビジネスを取り組むメリットをお伝えしました。

もちろん、FCチェーンに加盟したから絶対成功できる訳ではないし、FC本部に依存するような姿勢ではうまくいきません。サービス業を中心に、自ら営業開拓が必要なものも多いので、並大抵のことでは成功することは難しいです。また、FC本部自体の経営が悪化するリスクもありますので、万全ではありません。

しかし、それでも個人が全て自分で考え、準備することに比べて、FCビジネスは受けられるメリットが大きく、リスクを軽減することが可能です。よほど「これでなければいけない」といったこだわりや、今回お話した3つの観点を最初から相当備わっていないなら、FCチェーンに加盟してビジネスを行うことも魅力的な選択肢であると言えます。

フランチャイズ研究会 中小企業診断士 木村 壮太郎

(一社)東京都中小企業診断士協会フランチャイズ研究会所属。大学卒業後リース会社や会計システム会社に勤務。HP運営やセミナーを担当しながら、顧客関係を深めるマーケティング活動を経験し、現在は中小企業診断士として活動。顧客価値の向上をテーマに、支援先のマーケティングやビジネスモデル構築を支援。フランチャイズ関連のWEB記事も執筆経験あり。