フランチャイズ研究会 中小企業診断士木村 壮太郎
2015-05-01 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 中小企業診断士 木村 壮太郎

私とフランチャイズとの出会い

 このコラムのポイント

今回のコラムを執筆した木村氏は価値観マーケティングというのが専門です。例えばビジネスをやる上で集客を軌道にのせたい時。競合に負けないように付加価値のある商品やサービスを提供しないと差別化できないままになってしまいますよね?その対策を考える専門家です。

フランチャイズWEBリポート編集部


はじめに~顧客をファン化することを追求しています~

はじめまして、木村壮太郎といいます。私はリース会社での営業経験、会計システム会社での保守サポートや顧客セミナー等の講師、マーケティング活動を経て、現在中小企業診断士として活動しています。

メインの研究・活動分野は、経営資源の限られた中小企業や個人の事業者が、どのようにして顧客を魅了し、関係性を深めながら顧客価値を高め、ビジネスを発展させていくかということ。これをひたすら追求しています。

今回は、そんな私がどのような活動をしていて、なぜFCの支援に関わるようになったのかについてお話できればと思います。

顧客価値を高めようというスタンスは「資源の限られた企業に何ができるのか?」が原点

私が昔勤務していた会計システム会社は会社規模では当時せいぜい約30億円規模の会社で、競合先は売上高が数百億円、1兆円規模の企業がひしめいている状況でした。

会計システム業界では会計基準や指針の改正等があると、制度改正に対応した処理ができるように新しいバージョンや製品を開発したりします。しかし、そのような制度改正への対応は業界として当然であって、ここでは他社と差別化は難しいものでした。

また、経理部門だけでなく、営業、販売、企画、総務等の各部門を超えて統合的に情報を管理・運営できるいわゆるERPパッケージが増加していましたが、私の勤務していた会社ではもちろんそこまで開発できるような予算も人員もありませんでした。

当時私はカスタマーサポートの部署で、経理部門のお客様からシステムの操作や会計処理についてお問合せ対応やフォローを行っていました。お客様のお問合せの傾向や、担当者の特性を考えたところ、取引先は人事異動が定期的にある一定規模の企業が中心でした。


その企業の担当者の異動が取引先にとってはシステム操作のスキルや会計知識の定着に課題を抱え、私の会社にとってもそれはシステム未使用化の懸念を抱える悩みごとでした。

私は取引先数百社のシステム利用状況やお問合せの傾向を分析し、このことを逆手にとって囲い込みはできないかを考えました。

そして、他社がよく掲げる「制度改正への対応」や「新機能搭載」といった機能面を中心にするのではなく、「会計人材の育成やサポート」という、違った視点を軸にお客様にアプローチするようにしました。

具体的には担当者に大体の異動時期をヒアリングして、会計関連の教育サポートの提案や、システムの活用のセミナー、相談会等の定期的な働きかけからアフターサポートまで行うように取り組んでいき、お客様とも定期的に人材の育成やスキル向上、メンテナンスを図っていくような方向性を共有していきました。

その結果、年間百社以上で新システムの移行や新たな案件の発生へと貢献することができました。

お客様との接点を増やし、課題や価値観を共有することによって独自の関係を構築し、継続的に発展させていくというスタンスは、私がコンサルタントとして活動している現在でも一番力を入れている分野です。経営資源の限られた中小企業がお客様と共に考え、ビジネスを発展させていくことを支援することに大きな甲斐を感じています。

とはいえ付加価値を追い続けるのは中小企業の体力に限界がある

私は顧客との独自の関係を築いていくことに重きを置いていましたが、中小企業がこのやり方で事業を拡大していくのにはある一定段階で限界や高いハードルが生じることも多いと感じるようになりました。理由は大きく分けて二つです。

・いくらコアなファンや熱心なお客様ができたとしても、規模を拡大したり、より一層の商品やサービスを提供するには資本面での限界があるため

・獲得したお客様の信頼や満足に応えるためには自らのビジネスの水準を上げ、より付加価値の高いものを提供するための研究開発と、そのための資金や時間、人員等が必要になってくるため(成長し続けなければ、お客様に飽きられるが、自社単独で成長を持続させていくのには限界あり)

つまり、ビジネスで継続的に成長・発展を遂げていくためには自社単独では困難なことが多く、同じ志でビジネスを取り組んでくれるパートナーが重要となってくるわけです。

また、パートナーとなる起業家も、ゼロからビジネスを始めるよりは、既に一定の成功を収めている事業者と組めた方が事業をより早く軌道に乗せられる可能性が高まります。

FCに携わっていた知り合いの影響からフランチャイズ研究会に所属

私はこれらの状況を解決するビジネスモデルとして、FC(フランチャイズ)ビジネスが有効なモデルの一つであることに着目しました。これがFCとの出会いです。きっかけは中小企業診断士として活動を始めた時に知り合った方がFCに通じた方で、FCの研究会があると教えてくれたこと。そして私はフランチャイズ研究会というグループに参加することになりました。

本部とオーナー。それぞれのメリットについて私が思うこと

FCという仕組みは、ノウハウを提供する本部にとっても、提供されるオーナーにとっても有益なシステムです。それぞれについての私が思うメリットというのを解説したいと思います。

FC本部→自らの理念やビジネスを、分身・パートナーとも言える加盟者にパッケージを提供することで規模をさらに拡大でき、加盟者からのロイヤリティ等の受け取りによってで収益の安定化や新たな付加価値の開発への充当が図れる

オーナー→FC本部の優れたノウハウやシステム、ブランドを活用でき、サポートも受けられるのでゼロからビジネスを立ち上げるよりも一般的にはリスクを低減させ、成功確率を高めることが可能

※実績や基盤もない個人が、今の時代一からビジネスを始めることは余程でない限り厳しいため。よく独自の強みを持て、と言うが、そもそもゼロスタートの個人が最初から強みを持つことは困難。既に一定の成功を収めているFC本部のFCパッケージ活用は、非常に心強い味方に

両者の努力によって、継続的にお客様に喜ばれる価値を開発・提供していくことが可能となり、ビジネスを成功に導ける状況を作り出せる所に、私はFCビジネスの魅力を感じています。

もちろん、FCビジネスに向くビジネスと不向きなビジネスがあったり、FC本部と加盟者がしっかりと経営理念や価値観、方向性を共有して取り組んでいかなければ失敗することも多いので、FCビジネスにしておけば安心とか、成功しやすくなる、ということを簡単には言えません。

しかし、FC本部、オーナー共に「限られた自社資源」の中で、互いに協力し合うことで大きくビジネスを発展させられる可能性を秘めています。特にこれからビジネスを始めたいという方は、FCビジネスについて検討してみる価値はあると思います。

フランチャイズ研究会 中小企業診断士 木村 壮太郎

(一社)東京都中小企業診断士協会フランチャイズ研究会所属。大学卒業後リース会社や会計システム会社に勤務。HP運営やセミナーを担当しながら、顧客関係を深めるマーケティング活動を経験し、現在は中小企業診断士として活動。顧客価値の向上をテーマに、支援先のマーケティングやビジネスモデル構築を支援。フランチャイズ関連のWEB記事も執筆経験あり。