フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー安紗弥香
2015-05-28 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー 安紗弥香

コンビニ開業を考えたらまずやるべきこと

 このコラムのポイント

コンビニの仕事に興味をお持ちの方へ。自身は運営する側になりたいのか、経営者になってスタッフに接客などを任せていきたいのか・・。それによって進むべき道は変わってきます。また、経営者になりたいのならやるべきことというのがまとまった内容になっています。

フランチャイズWEBリポート編集部


こんにちは、コンビニ社労士、人材育成トレーナーの安紗弥香です。
「コンビニ経営」に関するテーマで、隔週でコラムを担当しております。

第4回は、「コンビニ開業を考えたらまずやるべきこと」について触れていきます。

コンビニ経営をしたい!と思ったら

普段は回りくどい表現が大好きな私ですが、今回は結論からお話しいたします。

コンビニ経営で大事なことは、

「知ること」

です。


「それだけ…?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、私はこれに尽きると思っています。しかし、十分に知ることなく加盟される方が多いのが実情です。

経営をしたいのか、運営をしたいのか

では、何を知るのか、ということなのですが、コンビニ加盟を考える際に、大きく2つの選択肢があると私は考えます。それは、

コンビニを経営したいのか

それとも、

コンビニを運営したいのか

ということ。それについて、自分はまずどちらの気持ちが強いのかを知っていただきたいのです。

そこで、後者…つまり、店舗業務に携わりたいのであれば、私は開業をいったん横におき、まず、加盟店や直営店の店長を目指したほうがいいと思います。

しかし、経営をしたい、つまり、自分自身はオーナーになって、複数店展開を視野に入れ、店長やアルバイトスタッフに店舗を任せていくことを考えているのであれば、経営を検討する段階から「経営を知っておいたほうがいい」ということなのです。
私はそこをうやむやにして加盟している方が多いような気がしてなりません。

一度開業をして、自ら運営にどっぷりと関わってしまうと、なかなか経営のことを考える時間が取れなくなってしまいます。経営とは、組織体制の仕組みにより事業を継続的に発展させていくことであり、組織を継続させていくための要素として、税務、労務、情報の管理や活用、その他法務などが主なものとなります。

必要に応じて、専門家を雇うケースもありますが、それについては必ずそれ相応の対価が必要です。それも行わず、全く知らないまま開業してしまうのは、どんなに本部の説明会に足を運んだとしても、正直言って「勢い開業」となんら変わりはありません。

コンビニの仕組みは言わずと知れたフランチャイズビジネスのモデルを活用したものです。
ここでは詳細は省きますが、本部は長年蓄積してきたノウハウを加盟店に伝え、加盟店はそれをロイヤリティという対価を払いながら活用していきます。

しかし、本部が提供できるのは、あくまでもフランチャイズ契約に基づく部分、つまり、店舗運営に関する部分のみです。もっと言えば、売上を上げるためのアクションについては提供されるが、利益を上げていくためのアクションについては、店舗運営の範囲内でしか得られないのです。

例えばコンビニは、個人事業でも法人でも始められますが、その違いはどこにあるのか。例えば、税務上や労務上ではどうなのか。社会保険の加入は?税金の支払いは?というところは、本部にとっては重要なポイントではありません。加盟者自ら情報をつかんでいくしかないのです。

よって、自分の手元にお金を残す、あるいは必要なものに投資するために、店舗運営による努力だけでは心もとない、ということです。

私は、本部の枠ではサポートしきれない、専門的な分野で経営者の役に少しでも立ちたくて、社会保険労務士という資格を取りました。税務についてはもっともっと詳しい方がいらっしゃいますが、オーナーの皆さまが、少しでも真の意味でコンビニの経営に専念できるように全力でサポートをしたいと考え、2013年に独立して今に至ります。

まとめますと、コンビニを「経営」したいのか、それとも「運営」したいのか。
それによって、そのあと取るべき道は変わってきます。とはいえ、意識や知識のないまま勢いで始める、ということだけは、どちらにしてもやめたほうがいい、ということですね。

コンビニ経営を考えたら実際にやること

とはいえ、実際に加盟を検討したらまず何をすればいいのか、一般的なところについてもまとめてみました。

1.資料を取り寄せる

加盟を検討している、あるいは興味があるチェーンの資料を取り寄せてみましょう。
各チェーンには資料請求のページがあります。そこで、必要な情報を入力し、送信するだけ。

もし説明会が身近な場所で開催されていない、あるいは予定が合わない場合は、まず資料を取り寄せて情報収集をしてみましょう。

そこから、開業を検討している所から最も近い場所で開催される説明会情報を受け取ることもできるようになります。

2.説明会に参加する

身近な場所で説明会やフランチャイズイベントが開催されている場合は、そちらに参加されてもいいと思います。そのほとんどが無料ですので、気軽に参加できます。

一通り加盟に必要なコストや開店までの流れ、店舗運営に関する説明を聞いた後に、個別相談の時間で疑問や不安要素について確認をすることができます。

3.加盟店を訪問する

もし、よく行くコンビニがある、あるいは本部や知人の紹介などですでに加盟している方の話を聞ける環境があれば、ぜひ生の話にも耳を傾けてみてください。

特に、本部紹介の場合は、経営状態の良好な店舗を見ることができるよい機会です。
しかし、1店舗に止めず、複数の店舗を見てみてください。また、可能であれば、単なる店舗運営だけでなく、税務や労務などの経営面についても聞いてみてください。

時間は限られていますので、聞くことを明確にし、訪問先としっかりアポイントを取って訪問するようにしましょう。個包装のお菓子など、手土産も忘れずに。

4.家族としっかりコミュニケーションを!

コンビニは通常24時間営業ですので、家族の協力は絶対的に必要です。

家族が直接経営に関わる場合はもちろん、たとえ直接的に経営に携わらなくても、確実に話をするようにしてください。

「コンビニ加盟を考えている」と話すと、家族はだいたい反対するか、難色を示すでしょう。

家族の心配、反対にあいやすい原因は、「長時間働くことになることへの不安」「経済的な不安」「家族の時間が合わなくなることへの不安」がほとんどです。

そのため、説得はそう簡単なことではありません。しかし、どうしても経営への意志が固い場合は、しっかりと目指すべき姿を家族に伝えていきましょう。

ちなみに、1から4については、物語形式でお伝えしていますので、よろしければご覧になってみてください。

FCビジネス起業物語【コンビニ編:全4回】

 

以上、コンビニ経営を考えたらまず行うことについて見てきました。

少し厳しい話になってしまったかもしれませんが、コンビニを経営する、ということは、決して簡単な話ではない、ということをお伝えしたかったのです。

とはいえ、私はコンビニ業界がもっともっと発展していくために全力でサポートをしたいと考えている一人。コンビニ経営はノウハウも多く、やりがいはたくさんあります。
加盟を検討されている方に、私の話が少しでもお役に立てれば幸いです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
次回は、「24時間経営を夫婦でうまく乗り切るコツ」について触れていきます。

フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー 安紗弥香

ディズニーで5年間、最高の接客と人材育成を経験した後、CVSチェーン本部へ転職。7年間、4,000人超の社員、加盟オーナーの研修に携わる。その中で、店舗の職場環境向上と労務管理支援に活路を見出し、2012年、社会保険労務士登録、翌年独立。労務管理、採用支援、スタッフ育成研修と幅広いサポートには定評がある。著書に「Q&Aでわかる 小売業店舗経営の極意と労務管理・人材育成・事業承継」(日本法令)がある。