エール労務サービス代表 社会保険労務士兼峯 大輔
2015-06-01 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
エール労務サービス代表 社会保険労務士 兼峯 大輔

助成金を確実に受給するための労務管理

 このコラムのポイント

助成金は労務管理をしっかりとしている経営者の味方です。ここでは、助成金を受給できるような事業者になるためのコツについてまとめられています。

フランチャイズWEBリポート編集部


助成金受給の対象になるには雇用保険制度加入が必須

前回は助成金についてご紹介しました。今回はその助成金を受給するうえでのポイントを解説します。

そもそも助成金とは雇用保険が財源です。よって雇用の創出が見込まれ、適正に労務管理をしている事業主を「応援しましょう」というのが趣旨です。

よって事業所が雇用保険制度に加入していることが大前提となります。労働者を一人でも雇い入れた場合には、加入の手続きが必要です。

また、雇用保険被保険者の雇い入れが助成金の一要件になるものがほとんどであり、当然その対象となる労働者も雇用保険の被保険者とすることが必要です。

ハローワークを通じた求人募集と労働保険料の滞納がないように

そして、ほとんどの助成金は求人の募集方法が問われます。

雇用の創出の「公平性」と「公共性」を重視するので知り合いなどの縁故採用は対象外です。その観点から、募集はハローワークを通じて行うことが条件です。

また当然ですが労働保険料の滞納がないことが挙げられます。事業を開始して、従業員を雇い入れていても、労働保険料(労災保険・雇用保険)を2年以上支払っていない場合は、助成金の対象にはなりません。

労働者の解雇・離職数の数字にも着目

つぎに労働者を解雇したことがないこと。

多くの助成金では、事業主都合で労働者を解雇したことがないことが要件となっています。その労働者が助成金の対象である、ないにかかわらず、助成金の申請が出来なくなったり、受け取った助成金を返還することになったりする場合がありますので、注意が必要です。

職に就くことが難しい離職者を雇い入れることで助成金を受けることができるという趣旨を考えれば、”事業主都合の解雇”が助成金の支給要件に合致しないということがわかると思います。

それと解雇以外の特定受給資格者に該当する場合も不支給要件に係る場合があります。

これはどういうことかというと、当該雇入れ日における被保険者数の6%を超えて離職させていない事業主(特定受給資格者となる離職理由により離職した者が3人以下である場合を除く。)という要件があるのです。

それでは解雇以外の特定受給資格者とはどのような理由があるのでしょうか?
具体的には以下の条件です。

1 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者

2 賃金(退職手当を除く。)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった月が引き続き2か月以上となったこと、又は離職の直前6か月の間に3月あったこと等により離職した者

3 賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べて 85%未満に低下した(又は低下することとなった)ため離職した者(当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る。)

4 離職の直前6か月間のうちに3月連続して45時間、1月で100時間又は2~6月平均で月80時間を超える時間外労働が行われたため、又は事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者

5 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないため離職した者

6 期間の定めのある労働契約の更新によリ3年以上引き続き雇用されるに至った場合に おいて当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者

7 期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された 場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(上記7に該当する者を除く。)

8 上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者

9 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない。)

10 事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き3か月以上となったことにより離職した者

11 事業所の業務が法令に違反したため離職した者特に4の残業が多いために離職した人もたとえ、一身上の都合であったとしても賃金台帳と出勤簿上でこの事実がわかると該当してしまう恐れがあるのです。

そういった意味でも次の条件である労働関係帳簿書類(出勤簿、賃金台帳、労働者名簿等)を備えていることというのは重要なポイントです。

助成金を受給するためには、労働関係の帳簿書類をきちんと整備していることが必要となります。出勤簿(タイムカード)、賃金台帳、労働者名簿等を整備することは、きちんとした労務管理をするための最低限のことです。

単に助成金の申請だから、役所への書類の提出だから、ということではなく、日頃からきちんとしておくことが必要です。

書類の整備が助成金受給には必須

また、雇い入れた後も労働条件通りに出勤しているか?それに応じた賃金が適正に支払われているか?これらのチェックが厳しく行われます。そのチェックされる書類とは、出勤簿又はタイムカード、労働者名簿、賃金台帳、雇用契約書、就業規則がある場合は就業規則の提出も求められることがあります。

よって助成金を受給するポイントは労務管理の適正を図るための書類の整備が重要になります。

これらの書類は助成金受給のためだけでなく、日頃から適性な労務管理をしていく上では欠かせないもの。今は助成金の該当者がいなくても開業当初から書類を整備しておくことが重要です。

適正な労務管理を行う会社こそが遅かれ早かれ、公的な制度である助成金の恩恵を得るのです。

エール労務サービス代表 社会保険労務士 兼峯 大輔

福岡出身。平成20年社労士事務所エール労務サービスを開業。平成22年サービスのFC事業に着手。 平成26年専門分野は介護・障害・保育・整骨院などの制度ビジネスのFCのモデル構築。また、社労士の知識を活かした賃金制度や評価制度、助成金のプランニング、労務リスクを回避する経営・労務監査を得意としている。