エール労務サービス代表 社会保険労務士兼峯 大輔
2015-11-21 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
エール労務サービス代表 社会保険労務士 兼峯 大輔

マイナンバー制度に対する会社の対応策~年内にすることまとめ~

 このコラムのポイント

来年1月から本格運用が始まるマイナンバー制度。社会保険を一元管理するための手段としても注目されていますが、従業員を抱える企業にとってはデリケートな個人情報を扱うことになります。安全管理に気を配ることが大切になりますが、具体的にどのような準備が必要なのか?社会保険労務士の兼峯大輔氏に解説してもらいました。

フランチャイズWEBリポート編集部


会社における「マイナンバー管理」は担当部署を決めることから

これまでのコラムではマイナンバーは会社の経営に大きな影響を及ぼす課題であることをかきました。

したがって一部の人事や総務部門だけに任せる問題ではなく経営層も会社として一丸となって取り組む課題であるということは充分理解していただけたかと思います。
それではまずどのような管理が必要なのか時系列で解説します。

まずは、実務的な対応としては、マイナンバー法に関連する書類を扱う部門がどこに当たるかなど、業務の洗い出しを行うことから始めます。

どのITシステムを改修しなければならないか等もおのずとわかってきます。改修が必要なシステムに関しては、対象システムの担当ベンダーと協議しながら具体的な検討を進める準備に取り掛かる必要があります。
民間企業向けにマイナンバー制度対応の受託を打ち出しているシステムベンダーも見られますので、問い合わせてみるのも一考でしょう。

社内規定の見直しと運用に関するマニュアルの準備をすべし

次にマニュアルや社内規程を整備します。

従業員の個人番号を取り扱う際は、既存の事務業務とは全く異なる作業が多く発生しますので、マイナンバー制度導入の新運用に則したマニュアルの整備が必須となります。

また、個人番号が付加される特定個人情報に関しては、取り扱い上の制限がこれまでの個人情報より格段に厳しくなるため、社内規程の見直しも必要になります。

これまでの業務フローを改変し、新規業務フローを立ち上げ、それに対応した事務作業を行える準備をする。そして、社内規程を整備し直し、新たなITシステムを構築するには相当の時間とコストがかかります。

民間企業がマイナンバー制度について理解しておくべき事項に関しては、内閣官房のホームページ内の「よくある質問(FAQ)4.民間事業者における取扱いに関する質問」に詳しく掲載されていますので参考にしてください。

企業が個人番号をあつかうときの問題点3つ

実際、企業が社員の個人番号を取り扱うことになった際、問題になる点は主に3つあると考えられます。

1.取得時期の問題

「いつ、どのタイミングで収集するか」という取得時期の問題です。
従業員との関係でいえば、源泉徴収票等の書類は毎年提出されるものですから、毎年取得しなければならないのか、それとも入社時に取得しそれを毎年利用できるのかが問題となります。
株主との関係においても同様で、配当の際には支払調書を出しますが、その時点で取得するのか、あるいは株主になったときに取得してしまってよいのか、という問題が想起されます。

結論として、従業員に対しては入社時に一度取得すればそれを毎年使うことができ、株主においても、株主になった時点で取得することができるとされています。つまり、入社したばかりや、株主になりたての時期であっても、将来源泉徴収票や支払調書を作成することが予定されているのであれば、前もって取得してもかまわないとされています。

2.利用目的の特定

2つ目は利用目的の特定です。企業が所有している個人情報は個人情報保護法にのっとり運用されますが、それに個人番号が付加された途端にその情報は「特定個人情報」となり、マイナンバー法の厳しい規制を受けることになります。

しかし、従来の個人情報保護法も同時に適用され、そこには「利用目的をできる限り特定しなければならない」(15条1項)とうたわれています。民間企業の場合、ガイドラインに示された個人番号関連事務である「源泉徴収票作成義務」や「健康保険・厚生年金届出事務」などが利用目的と考えられ、それを個人情報保護法18条に従って、本人へ通知・公表するということになります。

3.マイナンバー所有の本人確認

3つ目が「本人確認を行わなければならない」との規定への対応で、これが最難関だと思われます。個人番号を提供される場合、企業側は、必ず従業員である提出側の人物がその番号を所有する本人であることを確認する必要があります。

確認は(1)番号確認、(2)身元(実在)確認の2点において実行されなくてはなりません。番号確認は、従業員が出してきた個人番号が正しいかどうかの確認で、身元(実在)確認は、窓口にやってきた従業員が実在する人物かどうかの確認です。

確認は、個人番号カードOR通知カードと運転免許証またはパスポートOR住民票の写し

上記の(1)番号確認、(2)身元(実在)に対する確認方法は3つあります。

1番目は「個人番号カードの提示」です。個人番号カードはプラスチック製のICチップの入ったカードで、写真も表示されています。個人番号カードは行政機関に出向き手続きを行わないと発行されません。注意したいのは今年の10月に送られてくる「通知カード」との混同です。通知カードはただ番号を知らせるだけの役割のもので、身分(実在)確認には使用できません。

2番目は通知カードと運転免許証またはパスポートの提示です。

3番目は番号カードを紛失した場合は住民票の写し(来年の1月以降住民票にも個人番号が記載される)と運転免許証またはパスポートの提示です。この3つの方法のいずれかによって本人確認を行います。

この本人確認を、従業員すべてに対し実施しなければなりません。これらを確認をする担当者を少なくとも年内には決めておきましょう。

次回は平成28年以降の実務の対応策について触れたいと思います。

エール労務サービス代表 社会保険労務士 兼峯 大輔

福岡出身。平成20年社労士事務所エール労務サービスを開業。平成22年サービスのFC事業に着手。 平成26年専門分野は介護・障害・保育・整骨院などの制度ビジネスのFCのモデル構築。また、社労士の知識を活かした賃金制度や評価制度、助成金のプランニング、労務リスクを回避する経営・労務監査を得意としている。