エール労務サービス代表 社会保険労務士兼峯 大輔
2015-06-29 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
エール労務サービス代表 社会保険労務士 兼峯 大輔

優秀な人材を採用するための面接のポイント

 このコラムのポイント

経営者になった後に人材採用をどのように進めていけばいいのか、というコツについて書かれています。特に店舗ビジネスなどは人材が要となるビジネスが多いので覚えておくといいでしょう。

フランチャイズWEBリポート編集部


従業員募集でまず使うべきはハローワーク

事業を始める時に規模によっては当然、従業員の募集をしないといけません。

独立する前に人事にいた経歴をもつオーナーであれば、面接の経験はあるとしても殆どの方が面接したことがないということで私のところにも相談が来ます。まず、募集の方法はどのようなものがあるかを整理したいと思います。

先ずは、ハローワークへの求人募集です。事業所の所在地を管轄しているハローワークに申し込むことになっています。はじめてハローワークを利用する会社は、『事業所登録シート』を記入し、登記簿謄本の写しなどを添付して窓口に提出します。

『事業所登録シート』の“事業内容”、“会社の特長”欄は、求職者が見る求人票に記載されます。できるだけ具体的にかつ魅力的に記入しましょう。会社の方針や業績、将来性、社風、自慢の福利厚生など、「この会社に入りたい」と思わせる文章にまとめることがポイントです。

そして以前のコラムでも書いたように助成金の受給条件のほとんどにハローワーク経由の採用という条件が付いていますし、求人を出すのも無料です。求人が来るか来ないかは別問題として、まずは、ハローワークに登録することをお勧めします。

面接でのNGワードなど知っておくべきポイント

さて、いざ求人面接に入る前に面接で聞いていけないNGワードがあることを知っておかなければいけません。
厚生労働省から採用面接時に、以下のことを聞いてはいけないという指針が出ています。

まずは本人に責任のない事項です。たとえば本籍・出生地に関すること、家族に関すること(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入、資産など)、住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近隣の施設など)、生活環境・家庭環境に関することが挙げられます。

そして次に本来自由であるべき事項です。宗教に関すること、支持政党に関すること、人生観・生活信条に関すること、尊敬する人物に関すること、思想に関すること、労働組合・学生運動など社会運動に関すること、購読新聞・雑誌・愛読書などに関することなどです。

さらに、職業安定法(法に基づく指針)では、募集を行う際、原則として収集してはならない個人情報が以下のように規定されています。(職業安定法違反の場合は罰則として6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金)

人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項(家族の職業、収入、本人の資産等など)や思想及び信条(人生観、生活信条、支持政党、購読新聞、雑誌、愛読書労働組合への加入状況(労働運動、学生運動、消費者運動その他社会運動に関する情報)です。

あとでクレームになったりするので十分配慮が必要です。それでは中々、質問しにくいという声も聞こえてきそうです。しかし、考え方としてはこれから仕事としての価値観の共有が大事ですので禁止された事項以外にしっかりと見極めるポイントがあるのです。

まずは当たり前ですが志望動機を聞きます。ここでのポイントは「詳細に聞く」というところです。たとえば求職者が「理念に共感して」と答えた場合は理念のどの部分がなぜ共感したのか、深堀した質問を投げかけてみるのです。

深堀した質問で本質を見抜くことが大事です。1つの質問に答えがかえってくるとその答えに対しての質問を2、3回やり取りをすることで会話のキャッチボールがスムーズにいくかどうかを感じることができます。これは今後仕事を一緒にするということでは大事なことです。尋問にならない程度にリラックスした雰囲気で質問するといいでしょう。

次によく問い合わせがあるのが筆記テストのようなものをしたほうがいいか?という質問。これが少なくありません。私の考えでは筆記はしたほうがいいでしょう。

単純に学力を見るということではなく直筆で記入してもらうので記録や伝票処理などをアナログで処理するような業態であるならある程度、字の丁寧さというのは外せないポイントかもしれません。

また、いくら学力はあまり考慮しなくていいとしてもやはり基礎的なものは必要だと思います。そういった意味合いもあって、最後に採用を迷った時の客観的な資料としては筆記テストは最適だと思います。
最近は不採用の理由を求める求職者もいます。その時に面接だけでは具体的な理由を説明しづらい場合もあるでしょう。その時に筆記テストでの結果を理由にすることは本人も納得しやすいのです。

優秀な人材を見極めるにはフェルミ推定が有効

さて、それでは私が優秀な人材を見極めるために、面接時に必ず使っている質問をご紹介します。
それは・・・「日本に何台、車があると思いますか?」です。

???・・拍子抜けした方もいると思いますが決してこれは車の販売会社だけが使う質問ではないのです。このような質問の類は、フェルミ推定で使われます。

フェルミ推定とは実際に調査するのが難しいようなとらえどころのない量を、いくつかの手掛かりを元に論理的に推論し、短時間で概算することを指す。オーダーエスティメーションともいわれます。

フェルミ推定はコンサルティング会社や外資系企業などの面接試験で用いられることがあるほか、欧米では学校教育で科学的な思考力を養成するために用いられることもあるようです。

ポイントは正確な答えでなく、それを導き出すためにどのような段階で思考を重ねたかということが大事であり、ビジネスシーンにおいても先回りして物事を考えることができるかが大切だからです。

同じ価値観と相性を持ち合わせた求職者を見極め事業のスタートを順調に進めるには経営者本人も選ばれる対象として魅力あることが大事であることは言うまでもありません。次回は給与設計について書きたいと思います。

エール労務サービス代表 社会保険労務士 兼峯 大輔

福岡出身。平成20年社労士事務所エール労務サービスを開業。平成22年サービスのFC事業に着手。 平成26年専門分野は介護・障害・保育・整骨院などの制度ビジネスのFCのモデル構築。また、社労士の知識を活かした賃金制度や評価制度、助成金のプランニング、労務リスクを回避する経営・労務監査を得意としている。