フランチャイズ研究会 中小企業診断士井上竜也
2011-08-11 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 中小企業診断士 井上竜也

事業説明会から見るデキル本部の見つけ方

 このコラムのポイント

資料請求して興味のあるビジネスを見つけたら、説明会に参加しましょう。説明会にも個別・集団などのスタイルがありますし、貸し会議室などで行う本部もいれば本社で行う本部もあります。いずれにせよ本部の一スタッフに会うこのきっかけは、加盟するにふさわしいか見極めるのに最適な場所です。このコラムにある評価方法を見て説明会にのぞみましょう。

フランチャイズWEBリポート編集部


1.事前準備:本部訪問前の準備はしっかりと

事業説明会は、加盟希望者が本部を選択するのと同時に、本部も加盟希望者を確認する場でもあります。担当者と良好な関係を構築し、生きた情報を引き出すには、まずその本部を知ることが大切です。本部の経営姿勢や情報開示の積極性を図る意味でも、説明会に参加する前には事前に訪問本部の情報を十分に収集した上で、事業説明会に参加しましょう。

ウェブサイトや資料請求を活用し、事前に確認しておくべき項目は次の通りです。

  1. 企業概要(創業年度、売上、利益、業界での位置づけ、店舗数、代表者の経歴)
  2. 事業内容(取り扱い商品、サービス)
  3. 経営方針(本部の目指している方向性、行動指針)
  4. 契約情報(加盟金、保証金、ロイヤルティ、契約期間、募集エリア)
  5. その他の条件(必要免許、開業までの日数)

2.事業説明会に参加しよう

加盟希望者個人が多くの時間をかけても、集められる情報には限界があります。一方で、先輩オーナーの様々な経験談を聴いたり、実際の運営を見学・体験出来たりするなど、事業説明会でしか得られない情報は数多くあります。これは、本部側も加盟を検討している希望者へ様々な働きかけを行い、自社の理解を深めてもらうために努力をおこなうためです。説明会では事前に質問したい項目をまとめ、担当者へ確認出来るようにしておきましょう。

3.事業説明会からみた「デキル」本部とは?

事業説明会へ参加したが、話を聞いただけで本部の評価が出来なかったという、とても残念な事例をよく耳にします。安易な契約を避けるためにも、自分なりの本部評価基準を持って説明会に望んでください。では、どのような視点で本部を評価したらよいのでしょうか?デキル本部を見つける評価ツールとして、下記チェックリストを活用してみてください。

チェック項目評価の目安
本部の雰囲気 社員やスタッフの受付時対応が好印象で活気がある。
担当者 あらゆる相談に対応する姿勢がある。好感の持てる身だしなみで、信用できる人物である。
勧誘姿勢 加盟を急がせない。また、「絶対に儲かります」「不振店はありません」等、根拠がない発言をして、強引な勧誘を行わない。
経営トップ 経営トップ自らが、加盟希望者へ説明を行っている。また、熱意や誠実さを感じさせる人物である。(設立が浅く、店舗数も少ない本部であれば、経営トップが説明会に参加することは一般的な事です)
情報開示 事業リスクやマイナス情報でも、進んで開示する姿勢がある。
出店費用 初期投資額が明示されており、追加投資が必要なケースも説明している。
モデル収益の開示 売上に焦点を当て過ぎていない。ロイヤルティ、経費、利益の項目についても、説明が明確である。他社比較をした場合でも、誇張や曖昧さがない。
商品・サービス力 他社では簡単に真似することができない競争優位の源泉が確立されている。または差別化のポイントが明確である。
マニュアル 加盟後は、運営マニュアルの貸与があり、未経験者でも運営可能な仕組みが整っている事が、説明で理解できる。
支援体制 SVの訪問頻度及び、指導方法や指導内容についても説明している。定期的な販促や来店支援の説明があれば更に良い。
加盟店紹介 訪問可能な店舗を紹介してくれる。また自分が選定した店舗への訪問も調整してくれる。
見学・体験会 本部が推奨する、試食やサービス等の体験や見学ができる場を設けている。または、依頼することで体験や見学が可能である。
個別相談会 加盟希望者が納得出来るまで相談に応じている。トップ面談も可能である。

チェックリスト活用の際には、以下3つのチェックポイントから、本部を評価してみましょう。

  1. チェックリストの項目について説明があったか
  2. また、自分自身で確認・理解ができ、その内容は評価できるものであったか
  3. 項目の説明がなくても、質問の結果、適切な回答が得られたか

本チェック項目は、加盟を検討するにあたり、どれも重要な視点になります。評価の結果、自身が理想とする本部の状態と乖離している場合や、業界の平均的な加盟条件と比較して劣る項目が多い場合は、その本部は加盟候補から外したほうが無難と言えるでしょう。逆に、チェック項目に挙げている内容を満たしていれば、すぐに契約しても良いという事でもありません。契約は自身が事前計画で定めたすべての項目で納得ができ、周囲の理解が得られるまで、焦らず時間をかけてから行って下さい。

その他に注意する点として、リスク情報については、質問しなければ開示されないケースが多くあります。例として、出店した後に本部が事前の説明もなく、同一商圏内に別の店舗を出店してしまう事があります。この場合、通常であれば収益の大幅な悪化が起こるため、加盟店にとっては死活問題になり得ます。一方的に本部側が有利になる条件が設定されていないか、加盟店側の制約は解約時も含めてどのような項目があるか、必ず確認しましょう。

想定されるリスクを理解していない状態で契約を交わし、そのまま経営を行っているオーナーは大変多く存在します。このような状態で経営を行っていると、万一のリスクが発生した場合、本部とトラブルに発展してしまうこともあります。 まずは本部の方針や支援体制などをしっかり理解し、自分に合った本部を選択する意味でも、事業説明会では一方的に話を聞くだけでなく、疑問や不安な点は気兼ねなく質問することが大切です。当日の説明や回答内容は、今後の検討材料として役立てるために必ず記録しておきましょう。

フランチャイズ研究会 中小企業診断士 井上竜也

株式会社ローソンにて、店舗運営・支援業務を経て、マーケティング本部マーチャンダイザーとして企画・開発・運用業務に従事。2009年より、コンサルティングオフィス井上を開設し独立。(社)中小企業診断協会東京支部フランチャイズ研究会会員。