イベント会場の地域  本部インタビュー | フランチャイズショー2010を振り返る

フランチャイズ・ショー2010を振り返る

2010年3月9日(火)~11日(木)にかけて、東京都江東区有明の東京国際展示場「東京ビッグサイト」で、第26回「フランチャイズ・ショー2010」(主催:日本経済新聞社、特別協力:日本フランチャイズチェーン協会)が開催された。
今年で、ビデオカメラを回しての会場取材は三回目を数えるに至った。一昨年同様、あらかじめ取材の意図を本部に伝え、可能な限りの本部を会期中の3日間にわたって取材して回った。取材した本部は全部で44(106)本部。業種の内訳は小売業が4(19)本部、飲食業が15(41)本部、そしてサービス業が25(46)本部だった。3業種合わせたカバー率としては4割ちょっとということになる。できれば、全ての本部を収録し、フランチャイズに興味はあるが、どうしても当日都合で会場を訪れることのできなかった方々に全出展本部の様子ををお見せしたかったのだが、われわれスタッフの能力にも限界があり、仕方なく取材対象本部を絞らせて頂いたというのが実状だ。※かっこ内は実際の出展本部数。

初日は雨模様の肌寒いコンディションだったが、2日目、3日目と日が進むにつれて天候は回復してきた。主催者発表による来場者数は初日が7,656人、2日目が10,400人、3日目が11,620人の合計29,676人。これは昨年を大きく上回る数字だった。

出展本部の高い満足感

インタビューを開始して直ぐに、われわれは出展者の忙しそうな集客の様子の中に、いくつもの満足そうな笑顔を発見した。 ブースを訪ねたら、先ずは開口一番、尋ねる決まり文句がある。「今年のお客さんの入りはどうですか?」だ。そこで返ってきた答えが初日から割と好感触のものが多かったのだ。 今年は、昨年よりも出展者数、コマ数共に減少していたことが事前に分かっていただけに、会場に入るまでは、果たして入場者はどうなのか、会場は活況なのだろうかと気にしたが、実際にインタビューして回ると、来場者の真剣度が例年にまして高いものであることを実感した。 好感触だと語ってくれたある本部に、「行く先々で今年は例年になく良いという回答があるが。」と、質問をぶつけてみたところ、「やはり長引く不況のせいではないでしょうか。真剣に開業を考えている、冷やかしではなく、開業することを前提で色んなチェーンを見に来たという見学者が当社のブースにも数多くお見えになりました。」という返事だった。 余談だが、初日の午前中で加盟契約が決まったという本部にも出くわした。しかし、それは恐らく、事前にある程度検討していた方が実際にブースを訪れ、それで本決まりとなったのではないだろうか。いきなり、事前の知識もない方がほんの数時間で加盟契約を結ぶなど信じられないからだ。しかし、いずれにせよ、まだフランチャイズチェーンを展開して間もないその本部代表者の方の笑顔が満足そうであったことは確かだ。

実質本意の出展者

しかし、そんな熱気で充満した会場も昨年に比べると出展者数が減っているのも事実なのだ。数年前のショー的な華やかな印象もすっかり影を潜めてもいる。 例えば、香水の小売店をチェーン展開している本部などは、商品である香水を例年はブースの棚一杯に並べてるが、それも今年はやめてしまったそうだ。ひとえに費用が掛かるからというのが理由であった。香水などは商品としては小さいものだろうが、やはり搬入の手間がかかり、トラックで運び込まねばならないのだそうだ。 ところが、そうやって出展費用を切り詰めたにも関わらず、実際の反響は例年以上だというのだ。 何故だろうか。本部の方が語ってくれた。 従来、香水という商品の特性からだろうが、棚に数多く並べていると、物珍しさも手伝って、多くの方がブースを訪れ、商品を手に取ってくれたのだそうだ。 しかし、進むのはそこまで。集客はあってもそれは本部や展開しているチェーンにに興味があるというよりも、香水に興味があったりして、実際の加盟契約にはなかなかつながりにくいというのだ。かといってブースを訪れたお客さんをおざなりにするわけにもいかず、対応していると、本来加盟のために見学に来ていたお客さんへの対応がおろそかになっていたというだ。 そして、今回は商品は並べずに壁にパンフレットを貼るだけの、すっきりしたブースの仕様にしたら、集客率は落ちたが、ビジネスに興味を持ってくれるお客さんの比率が上がったので実質的には良かったのではないかと言っていた。 長引く景気低迷が、フランチャイズ本部・加盟希望者双方から見栄えの部分を取り外し、実質本意に走らせているようだが、そのことが一概にマイナスとだけなっていないのは面白い。 ピザチェーンを展開し、基調セミナーで講演したフランチャイズ本部の社長が話していたことだが、フランチャイズこそが不景気の際の失業等の受け皿になるという意見は、こういう現象を見ていると真実みが増してくる。 フランチャイズは、今の時代だからこそ、今までにない革新的なビジネスモデルを提供できるのかも知れない。

しかし、派手さも重要

実質本位でも、そこそこの商談は見込めると言ったが、実際、多くの来場者で賑わっていたのは、派手なというか人目を引くブースであったのは間違いない。また、それには、ブースの大きさも影響していたようだ。閑散としていたブースは1コマのブースに多かったように思える。何をやっているのか分からず入りづらい印象を受けた。 今回はフードコートの出展が少なく寂しかったが、飲食本部としては出展するかしないかは難しい判断だと思える。結局のところは大がかりな設備を用意してまで費用を掛けてもそれが加盟店獲得に結びつくかどうかということだろう。 飲食フランチャイズにおいては試食しないでの加盟は考えられない。いっそのこと、飲食本部の出展はフードコートへの出展を前提としても面白いのではないだろうか。 しかし、現実には難しいだろう。フードコートへの出展となると相応の費用が発生することは想像に難くない。また、ある飲食本部の担当者などは、フードコートに出展しても良いのだが、どうしてもお店と完全に同じ設備ではないため本来の味が出せない可能性があり、かえってそれがマイナスになるため控えたと話してくれた。 また、全国展開している本部であれば何もフードコートへ出展せずとも、試食の機会はいくらでもあるので強いて実行する必要はないだろう。 一部の地域でしか展開していないところはこのような場でしかトライできない。 何れにしても、飲食の提供は集客の面からは絶大な威力を発揮する。この効果についてはフランチャイズ研究所の黒川氏が物語コーポレーションを例に分かりやすい解説を書かれているのでそちらを参考に願いたい。

商談が全て

今回は来場者の真剣度が高い、というのは上で述べた通りだ。しかし全てのブースに全ての真剣度の高い方が訪れているかというとそうでもないように思える。ブースによってそれは大きく違っているように感じた。 いつものことながら、人気のある本部ブースにはたくさんの来場者が詰めかけるが、人気のない本部には本当に悲しくなるぐらいの人しか訪れない。 この差は、ブースの場所であったり、業態の人気度、或いはスタッフの対応等々によるものと思われる。 しかし、注意して見ていると、たとえ人は多く入って、賑わっているブースも、パンフだけをとって次のブースに行ったり、スタッフと名刺交換だけをして次のブースへという人が大半を占めているところがある。しかし、一方で、ブース内に置かれた椅子に座り、担当者と熱心に話をしていたり、その商談テーブルが空くのを待っている人がいたりするブースもある。この差は大きい。客を呼ぶだけなら、お金を掛ければある程度は実現できる。しかし、商談にまで持って行くには、そこに導くための策を用意周到に練ってこなければ実現できないことだ。この準備も含めて、ここに本部の本当の強さが表れているような気がする。

フランチャイズ・ショーとWEB

熱心に話を聞いている方が帰られた後、本部の方に、今の方は随分と熱心でしたねと尋ねると、「いやー、ずいぶんとネットで下調べして来られてます。」という返事を何度か聞いた。その方々は既に十分にネット経由で資料を取り寄せたり、ホームページを閲覧したりして、本部やチェーンの概要を十分に調べて知っており、その状態でなおかつ本部のブースを訪ねてきているのだ。中には、既に、半分加盟を決断してきている方もいる。そこまでは至らなくとも予備知識があるのだから突っ込んだ質問ができるわけだ。 ネットで十分に調べて、後はこのFCショーで担当者や代表者と直接話をして決める。そんな使い方が一般的になってきているようだ。 ”フランチャイズWEBリポート”というフランチャイズのポータルサイトを運営している弊社にとってはこれはとても頼もしい意見だった。

2011フランチャイズ・ショーに向けて

さて、今回はスタッフ数も増やして撮影に臨んだのだが、どうしても全ての本部を回ることはできなかった。時間が無く、別棟で催されていた各セミナーも聴講できなかったためレポートもお送りすることができない。 スタッフもわれわれももう3回目ということもあって、会場の雰囲気や様子になれては来たが、本部の方々にとって会期中はビジネスの真っ最中ということになる。そんな時にブースをお訪ねし、お話しをお聞きすることになるので、タイミング等が難しかったのは事実だ。

そのようなお忙しい中、取材にご協力いただいた本部様にはこの場を借りて厚くお礼申し上げます。