エール労務サービス代表 社会保険労務士兼峯 大輔
2015-06-15 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
エール労務サービス代表 社会保険労務士 兼峯 大輔

残業代を減らす賃金設計の裏ワザ

 このコラムのポイント

法人設立をした後に気になる労務の話。残業代というのはそもそもどのように計算されているのか?、そして賃金から考える人材のかけ方についても触れられているコラムです。

フランチャイズWEBリポート編集部


労働トラブルのもとになりやすい。残業代の定義とは

人を雇用する前に決めておかないといけないのが雇用条件です。
そのなかで最も大事なのは給与設計。求人だけでなく、経営にも大きな影響を及ぼします。

最近では「ブラック企業」という言葉も蔓延していることから労働条件の適正化とコンプライアンスは企業にとって社会的な責任を問われる事項になっています。
労働トラブルの大半は残業代未払い問題。企業としては人件費の高騰と物価の高騰という2つの問題について頭を悩ませているのが現状でしょう。

確かに独立当初は経営を軌道に乗せるために必死になってオーナー自身が働きます。
それに共感した従業員もいっしょになって深夜までサービス残業。このように運命共同体として同じ夢を追っかけるといった美談は労働法の前では通じません。

労働基準法では1週間40時間、1日は8時間と決められておりそれを超えた場合は1時間当たりの時間給に割増率25%を割り増した残業代を支払わなければなりません。
そもそも残業代というのはある意味ではペナルティなのです。

これは深夜労働をした場合には基礎賃金の1.25倍以上の割増賃金(深夜手当)を、(法定)休日労働をした場合には基礎賃金の1.35倍以上の割増賃金(休日手当)をそれぞれ支払わなければならないとされています。

なお、使用者が一定の大企業で、かつ労働者の時間外労働が月に60時間を超える場合には、その60時間超過部分については、基礎賃金の1.5倍以上の残業代を支払わなければならないとも決められています。

もっとも場合によっては、午後10時から午前5時までの深夜時間帯に労働をした場合、それが深夜労働というだけでなく時間外労働でもあるというようなことや、法定休日に8時間を超えて労働をしたため、休日労働というだけでなく時間外労働も行っているということもあるでしょう。

このような場合、どのように割増賃金を計算すればよいのかということが問題となります。
原則論から言えば「足し算」です。つまり、それぞれの割増率を合計したものを割増率として計算をするということになります。ただし休日労働が含まれる場合は、特殊な取扱いもあります。

たとえば深夜時間帯に時間外労働(残業)をした場合の割増賃金は、深夜労働の割増率に時間外労働の割増率を足した割合になります。つまり【25+25=50】パーセント増しになるということです。

したがって深夜労働と時間外労働が重なる部分については、使用者は基礎賃金の1.50倍以上の割増賃金を支払う必要があるということです。

このような場合、どのように割増賃金を計算すればよいのかということが問題となります。
原則論から言えば「足し算」です。つまり、それぞれの割増率を合計したものを割増率として計算をするということになります。ただし休日労働が含まれる場合は、特殊な取扱いもあります。

たとえば深夜時間帯に時間外労働(残業)をした場合の割増賃金は、深夜労働の割増率に時間外労働の割増率を足した割合になります。つまり【25+25=50】パーセント増しになるということです。

したがって深夜労働と時間外労働が重なる部分については、使用者は基礎賃金の1.50倍以上の割増賃金を支払う必要があるということです。
それだけ残業代というのは企業にとっても負担が大きいのです。

一人あたりの残業代を減らし、人一人を雇うという視点も持ちたい

次に残業代の基礎となる賃金についてみていきます。
ここが今回のテーマである残業代削減の賃金設計のポイントなのです。

まず、月給の労働者の場合は1ヶ月で働くであろう時間数で月給を時間でわって時給単価を出す必要があります。その時の月給に含まれる賃金の種類とはなんでしょうか?
資格手当や役職手当は残業代の基礎となる賃金に含めなければなりません。
逆に含めなくていい手当があるのです。

労働基準法第37条第5項及び同法施行規則には、1. 家族手当、2. 通勤手当、3. 別居手当、4. 子女教育手当、5. 住宅手当、6. 臨時に支払われた賃金、7. 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金 とあって、これらは割増計算の元に入れなくて良いこととなっています。

つまり、同じ20万の給与の人でも基本給が20万の人と基本給が16万で通勤手当が1万円、住宅手当が2万円、家族手当が1万円という人では残業代に差が出るのです。

この例で行くと前者は残業代の基礎となる賃金は20万、後者は16万になります。
実際に2人が30時間残業をした場合を計算してみます。ここでは1ヶ月160時間働くと仮定します。

20万の給与を時間給で割り戻すと20万÷160時間です。
1時間当たりの時間給は1,250円。これに割増率25%と残業時間数30時間をかけると残業代が算出されます。その額46,875円。

それでは後者の場合を計算してみます。先で述べたように、通勤手当が1万円、住宅手当が2万円、家族手当が1万円は除外していいので16万を160時間で割戻して時間給を算出します。
16万÷160=1,000円。これに割増率をかけて30時間の残業代を算出すると37,500円です。いかがでしょうか?その差額は9,375円です。

約1万円と、同じ残業をさせた場合でも給与の内訳が違うだけでこんなに大きな差が出てしまうのです。これが従業員が10人だと約10万円。1年だと120万の人件費の差が出てしまうのです。これは大きいのではないでしょうか?

当然、賞与などが基本給がベースで計算するケースが多いので基本給が低いと労働者にとっても不利益なことがあるかもしれません。常識の範囲内で内訳を設計する配慮は必要ですが、このことを知っているか知らないかで大きく残業代の総額が変わってくるのです。

最適な賃金設計をすることで残業代を抑制し、見方によっては家族手当などの福利厚生的な手当がついていることがかえって、企業のイメージが良くなることも想定できます。

企業が目指すブランドイメージとそこで働く従業員の福利厚生も含め、よく考えた賃金設計をすることが初めに必要なのです。理想は残業をさせないオペレーションの効率化や業務シェアだと思います。

月の残業代の総額30万がコンスタントに続くという事態がそこにあるならば、もはや1人分の人件費なのです。
つまり、30万の残業代を支払っているというのはこの30万に25%の割増がついているという事。

つまり24万の給与の人を1名雇用したほうがいいのです。そうすることで残業代がへり、総額人件費を抑えること以外にも従業員の疲労やストレスを軽減できるという側面もあります。賃金設計と日頃の労務管理がいかに経営に影響するかについて今回の内容を参考にしていただけると幸いです。

エール労務サービス代表 社会保険労務士 兼峯 大輔

福岡出身。平成20年社労士事務所エール労務サービスを開業。平成22年サービスのFC事業に着手。 平成26年専門分野は介護・障害・保育・整骨院などの制度ビジネスのFCのモデル構築。また、社労士の知識を活かした賃金制度や評価制度、助成金のプランニング、労務リスクを回避する経営・労務監査を得意としている。