ATカンパニー株式会社 チーフコンサルタント鈴木 宏康
2015-08-11 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
ATカンパニー株式会社 チーフコンサルタント 鈴木 宏康

店舗出店で気を付けるべき三つのこと

 このコラムのポイント

店舗ビジネスの要、立地調査。撤退リスクまで見越してこれをどのように進めていけばいいのか。立地開発および出店サポート専門の経験がある鈴木宏康氏流に解説しています。

フランチャイズWEBリポート編集部


はじめに~店舗出店で気をつけるべき立地選定と決定~

業種や業態にもよりますが、店舗型ビジネスの場合、出店時における立地選定と決定は大変重要になります。店舗出店には多大なる労力と費用がかかり、また一度出店してしまうとその変更は容易ではありません。

開業後「こんなはずではなかった!」とならないためにも、店舗出店において気を付けなければならない点を以下に解説したいと思います。ポイントは、三つ挙げられます。

1.自社業態の顧客ターゲットをよく理解し、業態に合った商圏、立地に出店する

2.業態に合った物件取得条件で、物件を選定する

3.撤退リスクを正確に把握・織り込んだうえで出店する

1.自社業態の顧客ターゲットをよく理解し、業態に合った商圏、立地に出店する

はじめに、自身が出店しようとしている事業の顧客ターゲットの、性別・年代・職業・家族構成・所得・教育水準などを充分に理解しましょう。またそれら顧客ターゲットの志向性やライフスタイルなどをしっかりと把握することが重要となります。

次に商圏内に新たな店舗が成立するだけのマーケットボリュームが存在するか、業態のコンセプトに合致したマーケットなのかを、統計データの収集・確認や実地調査を行うことによりチェックします。

実地調査では、商圏内を徹底的に歩き(車での来店が予想される場合は実際に走る)、併せて近隣競合店舗の商品サービスレベル、時間帯別の混雑状況や客層・注文内容・客単価なども徹底的に見極めましょう。この方法は地域の特性を把握する上で、大変有効な手段です。

候補物件の出店検討にあたっては、対象となる物件が商圏内のどの場所に位置するかや、顧客ターゲットの動線の状況、店舗の形や視認性の良し悪し・間口の広さなどの物件特性についてしっかりと調査・検討することが重要となります。

2.業態に合った物件取得条件で、物件を選定する

物件取得条件を検討する際には、初期費用としての物件取得費用(イニシャルコスト)と毎月の賃料(ランニングコスト)の2点について、注意することは鉄則です。

不動産オーナーとの交渉においては相手方の意向や近隣相場をしっかりと把握したうえで、適正な条件交渉をおこなうことが重要となります。不動産仲介会社等を通じて相手方の意向はどこにあるのかを把握し、近隣の不動産情報などをしっかり調べたうえで交渉に臨みましょう。

交渉においては自身の希望を一方的に伝えるだけでなく、相手方の希望も聞きながら譲るべきところは譲るというスタンスも重要です。

3.撤退リスクを正確に把握・織り込んだうえで出店する

事業を行うにあたり計画通りに売上が上がらず、結果、想定した利益を得られず、赤字を出したため撤退するという事もあるでしょう。最悪の場合も想定して、撤退リスクを織り込んだうえで出店する視点を持つ事をお勧めします。
具体的には、違約金や契約終了後の保証金の償却率、解約予告の期間、撤退時の原状回復義務などの退去条件等、撤退の際に大きな損害を被るような条件が含まれていないか、またそれら撤退リスクをなるべく低く抑えるように契約する事が重要です。

撤退に際して、物件保証金の償却や物件返還の条件によってはスケルトンに戻す為の費用がかかる事があります。その他、契約内容によっては解約予告の期間の縛りにより解約までの賃料がかかる事も有ります。

この様に想定していたよりも費用が掛かってしまったという例をたくさん見てきました。
出店以上に、撤退に多くの労力を費やす結果となり、1つの撤退が他の成功店舗の利益を大きく食い尽くしたり、決算に大きな悪影響を与えるような事もありえます。だからこそ、最悪の場合を考慮に入れて、出店戦略を立てる事が必要なのです。

出店をする事が目的(ゴール)となり、出店する為に無理をした条件を飲んでしまうケースが多く見受けられますが、撤退時に何が起こるのか?何に気をつけなければならないのか?は事前に予測可能です。

物件取得に際しては事前に交渉を重ねれば、回避できる項目が数多くあるものなのです。
これらを総合的に考えて、店舗出店を検討する際には撤退リスクを意識した物件取得をお勧めします。

最後に

店舗型ビジネスの成功のためには、地道で継続的な調査や物件探索活動と、粘り強く的確な条件交渉から実現されます。上記のような視点をもとに、より良い立地において好条件にて店舗出店ができるよう、活動していただきたいと考えます。

ATカンパニー株式会社 チーフコンサルタント 鈴木 宏康

金融機関で経験を積んだのち、フランチャイズ専門のコンサルティング会社にて、立地開発および出店サポートを専門でおこなってきた経験をもつ。 ATカンパニーにおいて、業態に合わせた立地診断の確立や立地開発の標準化など、事業を短期間で多店舗展開させるのに必要な支援をおこなうことを得意分野とする。