販路企画 代表田口 勝
2015-11-11 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
販路企画 代表 田口 勝

躍進するコンビニエンスストアチェーンの強さの秘訣 ~Part.5~

 このコラムのポイント

私たちにとって身近なコンビニチェーン。2015年9月時点で全国53,108店舗もの規模にまでなっています(日本フランチャイズチェーン協会調べ)。そんなコンビニチェーンも近年では自ら商品開発に携わりオリジナルブランドの商品を打ち出しています。今回はコンビニ商品開発の強さについてせまります。

フランチャイズWEBリポート編集部


1.コンビニエンスストアチェーンの変化の形

今回はコンビニエンスストアチェーンの強さの秘訣として、商品に焦点を当てていきたいと思います。コンビニエンスストアチェーンの強さは『変化への対応』であることをPart.1で述べました。

小売業ですので、『変化への対応』が大きく『形』となって関わってくるのが商品・開発の視点になります。

時代の変化に従って、NB(ナショナルブランド中心)からPB(プライベートブランド)中心に変化を行っております。今回は、この商品開発についてお話をしていきたいと思います。

2.PB商品こそ時代の変化に対応をしている

まずは、ナショナルブランドとプライベートブランドの違いがわからない方もいると思いますのでその違いからお話をします。

ナショナルブランド(NB商品)とは、他のメーカーが商品開発から製造を行った商品を仕入れて販売する商品のことを言います。つまり、商品パッケージは、メーカーの看板を背負って販売される商品となります。

プライベートブランド(PB商品)とは、小売業が自ら商品開発に携わり、自社のオリジナルのブランドとしてメーカーに商品を製造してもらい、小売業が自社だけで販売する商品のことを言います。
つまり、プライベートブランドは、消費者に近い小売業主導であり、ナショナルブランドはメーカー主体の商品です。

少し前までは、プライベートブランド商品は、他社よりも『安い』というイメージが強かったのではないでしょうか?『そこそこの品質』で『安い』商品と思われている方も多いと思います。

しかし、皆さんも日頃から近くのコンビニエンスストアを利用されていると、このプライベートブランドが、美味しくなったと感じる方も多いと思います。
これは、『時代の変化』に対応し、お客様にニーズに合わせた商品開発を行っているからなのです。

  2000年 2006年 2012年
とにかく安くて経済的なものを購入する 50.2% 45.3% 41.2%
多少値段が高くても品質の良いものを買う 40.0% 43.3% 46.4%
自分のライフスタイルにこだわって商品を選ぶ 22.9% 31.5% 36.0%

生活者1万人アンケート消費者価値観調査:野村総合研究所(2012年調査)より

生活者の意識が年々変化し、『安い』ものを求めるよりも『品質』を求める方に変化してきており、プライベート商品についても、商品を時代変化に合わせて変化させているのです。

その結果、コンビニエンスストアチェーンの商品に対する意識が変わってきていると思います。ではなぜ、コンビニエンスストアチェーンが実現出来るのか?
それは、次の仕組みを構築しているからなのです。

3.コンビニエンスストアチェーン本部による商品開発の強さの秘訣

『コンビニの商品』は美味しくなった。
このように、私がSV(スーパーバイザー)を務めていた時も多くのお客様から聞くことが多かったです。こうした商品力の強さをもって顧客満足度を得るには、以下のようなポイントが要となったと考察します。

1.マーケティングリサーチの強さ

コンビニ各社はマーケティングリサーチを徹底しております。お客様の消費動向、ニーズの全体的な情報だけでなく、POSシステムからの商品の販売動向、また、電子マネーを中心としたID-POS分析により、商品の販売動向だけでなく、お客様の消費行動も徹底的に分析し、商品開発に繫げているのです。

また、商圏に応じたエリアマーケティングも積極的に実施。地域毎のお客様の嗜好までを研究し、商品開発に繫げているのです。例えば、地域限定商品や醤油の味がその土地特有の好みに合わせたものとなっている・・など。こうしたことがいわゆるローカライズに対応した取り組みです。

コンビニエンスストアチェーンのマーケティング戦略が優れていると言われるのは、このマーケティングリサーチの強さが理由だと私は思っております。

2.自社専用工場の保有

コンビニ各社がオリジナル商品を開発しているのは、それぞれの専用工場。各社は、専用工場数は違えどそれぞれが専用工場を保有しております。
専用工場は、自社の商品しか製造を行わないので、ノウハウ流出の心配も少なく、自社独自のマーケティング戦略の結晶と言える商品を開発し、発売することが出来るのです。

3.店舗数

自社専用工場を持つためには、供給する先の店舗数がモノを言うことになります。なぜなら専用工場を各地域に配置するためには、工場から配送ができる範囲内で高密度出店(多数のコンビニ出店)を行う必要があるためです。

そして、高密度出店を行うにあたって小商圏エリアでのビジネスモデル構築が出来ていなければ実現ができません。よって、店舗数の増加が自社専用工場の保有も加速させ、よりそれぞれの地域のお客様のニーズに沿った、商品開発が出来るのです。

4.物流網の整備

新鮮な商品の方が、美味しい。これは当たり前のことだと思います。実現するためには、当然、専用工場から店舗までの最短時間での配送が重要となります。よって、物流網の整備が必要となるのです。
その仕組みを構築していることが、コンビニエンスストアチェーンの強さの秘密にも繋がっております。

4.まとめ

今回は、コンビニエンスストアチェーン本部の強さの秘訣として商品開発に焦点を当てて、お話をしました。商品は小売業に関わりなく、商売においては重要です。フランチャイズシステムに加盟される独立志望の方は、当然『強い商品』『強いビジネスモデル』を求めて加盟されると思います。

商品開発の強さは本部の役割で非常に重要な役割であり、それを実現するには、仕組みが必要となります。独立志望の方は、今回のコラムの視点をもとにフランチャイズ本部の仕組みに着目されることも非常に重要だと考えます。

販路企画 代表 田口 勝

大学卒業後、熊本県の経営コンサルタント会社に勤務。マーケティング戦略立案・管理者研修等で中小企業のコンサルティングを担当。その後、業界最大手のコンビニエンスストアチェーン本部にて10年勤務、店長・スーパーバイザー・マネージャーを経験。退社後は販路企画を立上げ、商圏に基づくエリアマーケティング戦略立案・出店調査・FC本部展開支援・従業員戦力化研修、セミナー講演活動を行っている。