販路企画 代表田口 勝
2016-09-21 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
販路企画 代表 田口 勝

多店舗展開を成功させる5つの秘訣!〜数と情報で利益を改善する〜

 このコラムのポイント

業界最大手のコンビニエンスストアチェーン本部にて10年勤務、店長・スーパーバイザー・マネージャーを経験を持つ、中小企業経営コンサルタントで「販路企画」 代表の田口 勝氏の連載コラム『多店舗展開を成功させる5つの秘訣!』の第4弾です。 今回のコラムでは、繁栄を続ける多くのチェーンが原動力としている『スケールメリット』について知ることができます。

フランチャイズWEBリポート編集部


多店舗展開の「スケールメリット」とは?

前回までに多店舗展開の成功のポイントは、『成功モデルの明確化』『出店戦略が生命線』『人材採用と教育の仕組み』について解説いたしました。。

今回は、4番目として『スケールメリット』についてご説明いたします。


スケールメリットと言えば、『数の力』を活用し、仕入れ先と「数をまとめて仕入れる」または「大量の仕入れが期待できる」という理由で仕入原価を交渉したり、リベートの交渉をしたりすることができることを言います。

原価が下がったり、リベートが増えたりすれば、利益に大きく影響を与えます。
店舗数が多くなればなるほど、その効果は大きくなります。

また仕入れ原価には、仕入れ先との材料原価の交渉だけでなく「輸送」にも関係してきます。

原料を店舗に運ぶには「輸送費」がかかります。輸送も小口であれば高くなりますが、数を伴えば、1店舗あたりの輸送費用は安くなります。仕入れ原価にこの費用が含まれる場合は、さらに原価交渉が可能となります。

これらのこと以外にも、スケールメリットを与える要件があります。
それは『情報』です。

昨今では、時代の変化が激しく、一度は売れた商品であってもリニューアルをしたり、新たに開発を進めることで、お客様の嗜好の変化や飽きに対応していますが、その時の検討材料や判断材料となるのが、店舗から上がってくる売上データや商品ごとの売れ行きのデータ等になります。

これも1店舗だけなら限られた情報ですが、多店舗になれば多くの情報が上がってくることになり、より精度の高い戦略策定に活きてくることはご理解できることと思います。これもまたスケールメリットによる効果になります。

つまり「数」は、利益の面でも、その後のマーケティング戦略の立案の側面でも、大いに役に立つのです。

スケールメリットを活かす交渉や情報の活用の仕方

1.原価交渉の方法

スケールメリットを活かした交渉とは『数での交渉』であることは、すぐにご理解いただけるでしょう。

例えば『自社は全国1,200店舗もの出店数があり、扱い量も年間○○トン規模になるため…』といった形で、交渉する方法です。

こうした交渉には、店舗数だけでなく、販売データも把握しておかなければなりませんし、原材料などの仕入れ区分ごとに、日別・月別・年間別のデータも把握しておく必要があります。
さらに、今後の出店戦略も併せて説明することができれば、仕入れ先に期待を持たせることができ、今後の取引に良い影響を与えることができます。

また、相見積もりを採ることも有効な手段です。総合卸と専門卸の原材料など仕入れ区分ごとに使い分けをしていくことも重要です。
 

上記以外にも、多店舗展開で自社単独で交渉ができない場合には、(1)同業者とのアライアンスを組むという方法(2)中間の卸を飛ばして生産者に近づくという方法もあります。間が少なくなればなるほど、仕入れ値を安くすることができます。
そして(3)ロットの見直しという方法。仕入れロットが大きくなればなるほど、仕入れ原価は安くなります。

とはいえ、一口に「原価交渉」と言っても、ただ「数があるので、交渉に応じてほしい」では交渉は難しいのが現状です。仕入れ先へのメリットや、この取引が自社にとっていかに重要かを理解してもらえるかが大切です。

物流費もまた大きなコストです。輸送効率を考えた出店戦略ができているか否かも、仕入れコストに大きく関わってくる要素になります。
 

2.情報を活用する

社内には、多くのデータが眠っています。

現在、時代の変化に対応し成長を続けているチェーンの多くは、常に顧客ニーズのデータを主にPOS等で収集し、時代の嗜好や地域別に情報を集約し、検証を行っています。
 
これが世に言う「ビックデータ分析」です。
 
 
実際、これらを行っていくにはそれなりの費用がかかる話ですので、多店舗展開のステージに合わせて、採るデータの範囲を拡張していくのが現実的であると言えます。

最初のステージでは売上や商品ごとの販売データのみになりますが、それ以外にも時間帯別売上、客数、客単価、買上点数、購入客層、天気・曜日、来店動機…など、データの収集範囲を段階的に拡げていくことで、商品開発や販促などのマーケティング戦略の見直しの視野も拡がります。

重要なことは、事前にどういう目的があり、そのためにはどういうデータが必要で、その結果をどのように分析し、現場にどう反映していくのかを決定しておくことです。

そうでなければ、データは積もるばかりで、結局、無駄になってしまいます。

まとめ

今回は、多店舗展開の秘訣の第4弾として「スケールメリット」についてお話ししました。
ここで書いていることは、多店舗展開の段階に合わせて、継続的に実施すべき内容になります。

これから起業される方で「多店舗展開」を事前に視野に入れおられる方は、ぜひ、上記の視点を早い段階で構築され、継続的に実践されることをお勧めいたします。

販路企画 代表 田口 勝

大学卒業後、熊本県の経営コンサルタント会社に勤務。マーケティング戦略立案・管理者研修等で中小企業のコンサルティングを担当。その後、業界最大手のコンビニエンスストアチェーン本部にて10年勤務、店長・スーパーバイザー・マネージャーを経験。退社後は販路企画を立上げ、商圏に基づくエリアマーケティング戦略立案・出店調査・FC本部展開支援・従業員戦力化研修、セミナー講演活動を行っている。