販路企画 代表田口 勝
2016-03-09 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
販路企画 代表 田口 勝

セブンイレブン元店長も実践!人手不足解消に効くシフト作成のコツ

 このコラムのポイント

例えば人手不足と言われるコンビニ業界や飲食業界。新しい人材を採用するためのアクションはもちろん大切ですが、それまでは今いる人材を活かしたシフトの組み立てを意識する必要があります。 マネジメントに集中できない状況を改善するためにも。店舗経営者様、こちらのコラムを参考にしてみてください。

フランチャイズWEBリポート編集部


人員を増やさず「現在の従業員数」で人手不足を解消する方法とは

今回は、人手不足解消の第5弾目となります。これまでの間に人手不足解消対策として、『退職率を低下させる方法』『募集方法を変えること』『求人のターゲットを変えること』をお話してきました。

今回は、『シフト構造を変えること』についてお話をしていきたいと思います。

シフトの組み方は、人手不足に悩むコンビニ、飲食業等業種や営業時間によって、変わってくるでしょうし、シフトの必要人数も変わってきます。

今回は、現在の従業員数で人手不足を解消することができないか?という視点で考えたいと思います。

コンビニ業界で人手不足になりやすい「早朝」を埋めるための改善事例

たとえばコンビニ業界で、一番人手不足に陥る可能性の高い時間帯は、どこかというと早朝の6時~9時の時間帯ではないでしょうか?

深夜業務が22時~6時でシフトを終了し、パートさん等の主婦の方が9時から出社してくるため、この時間帯が空くのです。

この時間帯は、学生は出勤できませんし、主婦の方も出勤できないという環境となっております。そのため、コンビニ業界では早朝は時給を上げる等して対策をとっている店舗も多いと思います。

シフト構造を変える手法は、実は、全ての店舗で当てはまることはなく、同じ業態でも抱えている従業員さんによって変わります。そこで、ある一定の事例を用いて、シフト構造を変える方法の視点についてお話します。

1.深夜のフリーター+8時から出勤できる主婦に協力をあおぐ

例えば、深夜の従業員さんがフリーターさんだとします。その場合、24時~8時までの出勤スタイルにした場合どのようになりますでしょうか?(深夜の従業員さんが、Wワークの従業員さんの場合、この手法は難しいです)

更に主婦の方に8時~出勤してもらうことにします。(主婦の方は一概には言えませんが、子供さんが学校に出た後は出勤できる可能性があるのです)
そうすると今いる従業員さんで、早朝の時間帯の人手不足は解消されるのです。

シフト構造を変えるということはそういうことです。

2.16時から出勤できる夕方勤務の大学生+16時まで出勤してもらえる主婦に協力をあおぐ

コンビニは通常2人体制をとることが多いですので、深夜の1人しか、8時まで出れることがないこともあるでしょう。その場合、店長やオーナーが出勤しなくてはならない可能性が高まります。

店長や経営者が他のシフトに出勤している場合はどうでしょうか?
その場合は、6時~14時までの勤務(8時間労働)が、通常の流れとなります。

店長やオーナーが9時~17時までシフトに入っているとすれば、当然、14時~17時までを埋める必要があります。

その場合、夕方勤務のための人員として、大学生を採用しているのであれば、時間によっては16時から出勤が可能でしょうし、主婦の方にお願いすれば16時まで出勤して頂けることもあるでしょう。

シフトというのは、私は、定型はあっても、最終的には、中にいらっしゃる従業員さんの働ける時間を含めてフレキシブルに変えていく必要があるものであると思います

人手不足時に重要な「従業員への接し方」3つ

シフト構造を変える際に、非常に重要なことは、店長やオーナーさんが1人で悩まずに、従業員さんに現状の人手不足の現状を知って頂き、対応を行っていることも理解してもらった上で、出来る限り協力してもらうことです。

理解を得るということ。これが実は本当に出来ている店舗は意外に少ないのです。シフトに入れる余裕があっても、従業員さんが協力的でないケースがあります。

この時重要なことは、3つあります。

1.愛情を持って接し信頼を得る

1つ目は、「従業員によるオーナーや店長への信頼があること」。困った時に協力してもらえるのは、正直、人望が厚い経営者や店長であることに間違いありません。例えばシフトに入るよう強制したところで、不満が生まれ更に退職を生む原因となります。

だからと言って、『叱らないように・・・』するということではなく、愛情をもって、従業員さんを真摯に戦力化したいという思いがあり、接することが大切です。精神論になりますが、実はこれが一番従業員さんとの信頼関係が生まれます。

当然、店長や経営者が従業員さんを『人手』という発想では、信頼関係は生まれません。従業員はそうした心の機微を感じ取ります。(従業員さんを戦力化する方法については今後のコラムで具体策を明確にお話します)

2.現状のシフト(多めのシフト状態)が特別ということを伝える

2つ目は、今のシフトが人手不足の状況を鑑みたシフトであることを従業員さんに伝えること。これは非常に重要です。人手不足を解消させるために従業員さんの採用を行う活動を経営者の方は、ぜひおさえておいてください。

現行の人数でシフトをカバーするということは、1人に依存する時間が長くなり、今いる従業員さんの月給は上がる状況となります。

一度月給が上がり、しばらくその状態が続くと新しく従業員さんが入った時に、シフトの時間を減らすということは、充てにしている給料が入らなくなり、実は不満につながってきます。そうすると、『稼げなくなった』という意識が生まれ、退職に繋がる場合があります。

3.任せられる従業員を育てる

3つ目は、任せる従業員さんをつくることが、この条件を満たすことになります。
従業員さんを戦力化し、経営者や店長がいなくても責任ある仕事を任せること―つまり従業員さんの戦力化が人の問題を解決する上で大事なことです。

人手不足の問題の一部はシフト構造の工夫で解決できる!

今回は一部の事例を用いてシフト構造の変更についてお話をしました。

上記の事例は当てはまる当てはまらないというのがあると思いますが、今回お話したいことは、従業員さんから本当に協力を得てもらえる環境を作っているか?、そして、効率的にシフトを工夫して組めないか?という視点を持つということです。

大手コンビニチェーンで店長をしていた私の経験上、人手不足の問題はシフトだけでは解消出来ません。ただし、一部は改善できることも良く理解しておりますし、改善できるのにそのままにされていることも多いと感じます。

再度、シフト構造を検討する機会にして頂きたいと思います。

販路企画 代表 田口 勝

大学卒業後、熊本県の経営コンサルタント会社に勤務。マーケティング戦略立案・管理者研修等で中小企業のコンサルティングを担当。その後、業界最大手のコンビニエンスストアチェーン本部にて10年勤務、店長・スーパーバイザー・マネージャーを経験。退社後は販路企画を立上げ、商圏に基づくエリアマーケティング戦略立案・出店調査・FC本部展開支援・従業員戦力化研修、セミナー講演活動を行っている。