一般社団法人キャリア35 代表理事 行政書士尾久 陽子
2016-03-17 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
一般社団法人キャリア35 代表理事 行政書士 尾久 陽子

定年退職後のセカンドライフを充実させる!失敗しないシニア起業のススメ

 このコラムのポイント

行政書士として女性起業の支援に携わる尾久陽子氏が、法律事務所時代の経験を元に「シニア起業」で成功するための秘訣を解説したコラムです。 シニアで独立するからこそのメリットも傾向も理解した上で、成功への切符を勝ち取れるように。定年退職後のセカンドライフをお考えの方はぜひご覧ください。

フランチャイズWEBリポート編集部


「シニア起業」で成功するためのコツを解説します

今や人生80年時代。60歳の定年退職後も、悠々自適の年金生活なんて夢のまた夢。そのまま会社に継続雇用してもらっても、年収は半減。

それならば、今まで培ってきた自分の知恵と腕で継続収入をゲットする、シニア起業に一念発起。宮仕えのサラリーマンから、長年の夢だった一城の主、社長として第二の人生を一歩踏み出そう!

こんにちは! 女性のローリスク起業を支援する、「一般社団法人キャリア35」の代表理事、尾久陽子です。今回は、男性の方も必読。失敗しないための「定年退職起業」についてお伝えします。

というのも、私は、日ごろ行政書士として起業の手続きを承っていますが、行政書士になる前は、法律事務所の職員として勤務していたのです。

そのとき、自己破産する方の一定割合に「事業に失敗」、いえ、もっと詳しくいえば、「シニアになってから起業をして失敗」された方がいらっしゃったのです。

早々に脅かして申し訳ないのですが、シニア起業の場合、これから挽回のきく若者と違い、老後の貯蓄も信用も失う痛手は大きいです!だからこそ、失敗例は成功のもとにしていただきたいと思います。

そんな思いで、シニア起業で成功いただくポイントをまとめさせていただきました。

シニア起業の醍醐味は?

起業の醍醐味は、自分の好きなこと、能力を生かすこと、社会の役に立つことを自発的にできること。そして、生活時間や収入も自分で設計することができること。

意に添わぬ配属や転勤に応じてきた勤め人時代には味わえなかった仕事の真の楽しみを味わえます。顧客との関係もダイレクトになるので、仕事に対するモチベーションもアップ。「ありがとう」の一言は、身に染みるうれしさです。

シニア起業で何をする?

まず、企業で培ってきた業界知識、マネジメント経験、人脈を生かし、コンサルタントとして活躍することが考えられます。管理系業務に就いていた人であれば、顧客企業を獲得さえできれば、スムーズに業務を移行することができるでしょう。

また、特定の公務員経験があれば、行政書士や社会保険労務士、税理士などの資格に登録し、今までの業務経験を生かした専門知識を生かした起業も可能です。

コーヒーや食べ歩きなど、長年の趣味に基づく店舗経営や、ボランティア活動の経験を活かし、地域に貢献する社会起業の挑戦するのもお勧めです。

シニア起業の強みと弱み3つ

シニア起業の強みは、ずばり、事業経営に必要な資金や人脈、さらには業務経験という資源が潤沢であること。

しかしながら、これが強みにも、致命傷的な弱みにもなるので注意が必要なのです!
一言でまとめてみると、次のようになります。

 強み~ストロングポイント~  弱み~ウィークポイント~
資金がある! 過剰投資をしていませんか?
人脈がある! 昔の名刺を過信していませんか?
経験がある! それはベンチャーの経験ですか?

1.資金がある!←過剰投資をしていませんか?

退職金と勤め人時代からの貯蓄を原資にするため、若者起業よりも初期費用が潤沢であることが特徴ですが、そのせいで財布の紐が緩みがちになる傾向が。特に店舗を構えるときに、風光明媚な一等地にこだわりの内装を施すなど、過剰投資になりがち。

また、資金に余裕があるが故に、堅実な資金・販売計画を立てないまま見切り発車してしまったり、儲けにこだわりが薄いがために、経費ばかりが出ていくことも多いもの。経営の見直しや、辞め時を見失うのもシニア起業の特徴です。

資金には、限りがあることを忘れずに!

2.人脈がある!←昔の名刺を過信していませんか?

今の勤め先や取引先から業務を受託することを前提に、独立する方も多いでしょう。

しかし、独立したら「ただの人」。かつての部下は、取引先のお得意様となることを忘れずに。また、営業先のキーマンも、自分と一緒に年を重ねていきます。頼みの綱のあの人も、いずれ定年退職して前線から離れてしまうのでは?

自分の名刺から勤め先の会社名を外しても、その人脈、本当に生かせますか?シビアに自問自答をしてください。

3.経験がある!←それはベンチャーの経験ですか?

上場企業に勤務していた方は特に注意。自分で起業するとき、それは中小零細ベンチャー企業のスタートアップ。

組織運営も、上場企業の構造とは異なります。会計や事務、営業まですべて自分でこなさなくてはなりません。コピーを取ってくれる秘書もアシスタントも、もういません。

勤務先で上長としてマネジメントの経験があったとしても、それはすでに出来上がり確立した安定した組織の中でのこと。だから過信は禁物です。

これから始めることは、組織の立ち上げそのものからなのです。
事業主、経営者としては、ずぶの素人だということを忘れないでください。

投資を大きくしがちなシニア起業

シニア起業の失敗ポイントは、若者の創業のように、四畳半のぼろアパートで一から始めるのと違い、総じて「記念創業」になりがちなこと。

周囲の人に対する見栄も伴い、初期投資や交際費にもお金をかけてしまったり、経営初心者であることを忘れ、自分の勘や経験だけで突き進んでしまったりしがちなのです。

また、最初に大きく投資をしてしまった分、柔軟に変更や縮小・省力化することを恐れ、事業中止や見直しの判断をする時期を見誤りです。

  せっかく培ってきた経験を社会に還元できる、最高のチャンスなのに…!
  では、シニア起業が成功するには、どうしたらよいか。

シニア起業成功のポイントとは?創業融資制度やFCの活用も◎

それはずばり、幅広い客観的な視点を得ること、そして、ビジネスに対する支援者を多く得ること。年齢を重ねると、独りよがりになりがちだとよく言われますが、これも偏見と聞き逃さずにアドバイスだと受け止め、起業の新人であることを肝に銘じ、意識的に、積極的に、自分のビジネスプランに率直な意見を投げかけてくれる場に出向き、ブラッシュアップをすることを忘れないでください。

今は、シニア起業に優しい創業融資制度もあります。これには第三者からも納得のいく、事業計画や資金計画の立案が必要。創業補助金など、各種助成金にも積極的に応募し、審査に通過するだけの計画を練り上げる機会を得ることをお勧めします。

決して、自分一人だけで、自分のやりたいことにこだわり、抱え込まないこと。だからこそ、洗練した形で事業経営ノウハウを伝授してくれるフランチャイズビジネス(FCビジネス)に参画するのも一つの方法です。

雇われない生き方、すばらしいことがたくさんあります。
シニア起業で、定年のない第二の人生をさらに大きく花開かせましょう!

一般社団法人キャリア35 代表理事 行政書士 尾久 陽子

東京都八王子市出身、早稲田大学第二文学部演劇専修卒業。舞台演劇の脚本・演出・俳優活動を経たのち、法律事務所に勤務。民事・家事・債務整理事件の事務に携わる。2007年東京都行政書士会登録。許可申請のほか、キャリアカウンセラーとしての対話力を生かした業務も多く行っている。おぎゅう行政書士事務所・居宅介護支援事業所代表。女性の起業を支援する一般社団法人キャリア35代表理事。主な著書に『好きを仕事に』(ビーケイシー)、『相続業務に役立つ戸籍の読み方・調べ方』(ビジネス教育出版社)など。