株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2016-05-01 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

来客数を減らす原因になる「インカーブ立地」とは?店舗経営者必見の改善方法も

 このコラムのポイント

お店を開業したころには繁盛していたのに、急にお客様が減った気がする・・その原因は「味」「接客」「競合」など3つの要因がまず考えられますが、それでも違ったら。立地を疑ってみてください。 もしかしたらあなたのお店は、お客様が発見しづらい「インカーブ立地」にあるかもしれません。しかし改善方法もしっかりとあるので当てはまる方、ぜひ実践してみましょう!

フランチャイズWEBリポート編集部


売上が急激に落ちる3つの原因は「味」「接客」「競合」。だけど・・

「最近売上が急激に落ちてきているんです・・・オープン当初は売れていたのに。目の前の道路にはたくさんの車が走ってるんです。けれど、全然うちの店には入ってこない。少し先の競合店はけっこう繁盛しているんですよ。なぜ、うちのお店はお客様が来なくなっちゃったんでしょう?」

ある郊外のドライブインタイプのラーメン店のオーナーからこのような相談を受けました。
このお店は、3ヶ月前にオープンした新しいお店です。
オープン当初は近隣に大量のクーポンチラシを折り込んだことも有り、近隣住民がたくさん来店されたのですが、3ヶ月たって落ち着くと、一気に売上がダウンしてしまったのです。

新店オープン後3ヶ月立つと、確かに売上が落ち着くのは一般的なのですが、この店の落ち込み方は酷いものでした。

原因を調べて対策をアドバイスして欲しいとの依頼を受けた私は、早速、お店を訪問し、周辺調査と店舗観察を行いました。

一般的に、かつて繁盛していたお店の売上が低下してくる主な理由は、「味の低下」「接客の低下」「競合の出現」の3つです。

しかし、この店はオープンしてまだ3ヶ月。
そう言う現象が出てくるにはちょっと早すぎるのです。

依頼を受けた私は、まずはお店のQSCと競合店の状況を確認しました。
「味」については特に問題はありませんでした。
「接客」については、まだまだ新人だらけなので安定はしていませんが、決して嫌われるようなレベルではありません。
「競合店」が、この3ヶ月の間で近くにオープンしているわけではありません。

店長の言う、少し先の競合店は、このお店がオープンする前からありました。
このお店も競合店ではありますが、そのお店が、特別に何かキャンペーンなどをしているわけではありませんでした。

来店客が減った理由。インカーブ立地で視認性が悪くなっている!?

では、何故この店にはお客様が来なくなってしまったのでしょうか?

実はその原因は、お店の立地そのものにあったのです。

結論から言うと、このお店の立地は「インカーブ立地」だったのです。インカーブとは、進行方向に向かって左に曲がっているカーブのことを言います。道が左に曲がっていると、ドライバーの目線の先には、反対車線側にある建物などが見えることになります。

このお店は順方向にあるわけですから、ドライバーの目線の左側にあるのですが、道が左側にカーブしているとお店はさらに左側に位置することになるのです。

真っ直ぐの道路ですと、看板や建物は、目線のやや左側に見えてきます。
なので、お店を見つけるとスピードを落とし入口のところで左にハンドルを切ります。
しかし、左にカーブしていると、お店は手前の建物よりもさらに左に位置することになるので、陰に隠れて見えにくくなるのです。

先週のコラムでもお話ししましたが、看板や建物が見えないと言うことは「そこにお店はない」のと同じことなのです。

つまりこのお店は、インカーブに立地していたため、看板も建物の非常に見えにくい状態にあったのです。

オープン当初は近隣住民が自転車や徒歩で来てくださっていたため繁盛していたのですが、一巡した後で近隣住民の来店数が少なくなり、お客様の総数が半分以下になってしまいました。

通常は、周辺住民と入れ替わりに、たまたまこのお店を見つけたドライバーが「よし、このラーメン店に入ろう」と言って入店する、いわゆる「機会来店客」を獲得することで、安定飛行を維持することになるのです。

ところが、このお店は、車からは見えません。
見えないお店はそこにはないのと同じことなので、お客様は入ってきません。
ラーメン店のようなカジュアル価格帯のお店が、機会来店客を獲得することが出来ない場合、その売上は恐らく半分程度になってしまうでしょう。

このお店が、オープン3ヶ月で、不振店の仲間入りしてしまった原因は、「インカーブ立地」による「視認性」の悪さが原因だったのです。

このようなインカーブによる視認性問題は、なにもドライブインタイプのお店だけとは限りません。

ショッピングセンターのレストラン街や、モール街。路面店でも緩くカーブしている道沿いのお店などでは、同じように「インカーブ」という魔物に邪魔されて視認性を落としてしまっているお店がとてもたくさんあるのです。

もしかして、あなたのお店は、インカーブに立地していませんか?

もしもそうだったのなら、もう一度自分のお店の視認性を確認してみましょう。
その結果、看板や建物が見えにくくなっているようでしたら、すぐに対策を採らねばなりません。

誘導看板とプラカードで「視認性の悪い立地」をカバー

さて、冒頭のラーメン店ですが、売り上げ不振の原因がわかったので、すぐにその対策を講じることになりました。

しかし、道路に突き出して看板を設置するわけには行きません。
なので、入口のすぐ手前側の壁、そしてお店の100m手前、さらに500m、2km手前、計4枚の誘導看板を設置しました。

また、日曜日には、駐車場の入口手前にスタッフが立ち、プラカードを持って呼び込みをしたのです。
もちろん、そのおかげで機会来店客が増え、お店の売り上げはすぐに伸びはじめたのは言うまでもありません。

いかがでしたか?
お店の建物や看板が見るということはとても大切なことなのです。是非あなたももう一度お店の視認性を確認してみてくださいね。きっと、何かに気がつくはずですよ。

【補足】インカーブの反対が「アウトカーブ」です。アウトカーブだとお店が進路の正面に見えるので視認性は抜群ですね。また、右カーブの場合は、右側がインカーブになります。

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。