株式会社きよ吉 代表取締役大野澤 潔
2016-05-13 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社きよ吉 代表取締役 大野澤 潔

宮城県の起業事情とフランチャイズで独立するならおすすめの業種

 このコラムのポイント

宮城県で起業・創業するときに知っておきたい宮城県の地域特性やフランチャイズで開業するときに検討したい業種、宮城県で起業するならどこがいいのか―宮城県で経営コンサルタントを務める大野澤潔氏に解説いただきました。

フランチャイズWEBリポート編集部


今回、宮城県の起業の状況やフランチャイズで独立する際のおすすめ業種についてお話させていただきます。株式会社きよ吉の大野澤と申します。よろしくお願いいたします。

宮城県の起業状況と地域特性

まず初めに宮城県の起業の状況について見てみたいと思います。県全体で見ますと、年間起業件数は1,600件強。宮城県の会社設立登記件数が全国の会社設立登記件数に占める割合は2%弱となっています。

宮城県は、東北地方の太平洋側に位置し、人口は200万人程度です。その内100万人が仙台市に集中しています。そして第二の都市として石巻市、大崎市と続きます。

2011年の東日本大震災があり、沿岸部の石巻市や気仙沼市などは県外の方でも良く耳にされたと思います。元来、宮城県の沖合(牡鹿半島や金華山の沖)は魚の豊富な漁場として知られていました。塩釜港・石巻港・気仙沼港は現在でも高い漁獲高を示しています。労働従事者も仙台圏が50%台とほぼ人口に比例していることがわかります。

サービス業などについてはやはり人口の多い仙台市に集中していると言えますが、今後も仙台一極集中の形に変わりはないものと考えられます。昨年12月に2本目の地下鉄である東西線も開通し、地下鉄沿線の都市開発も盛んになってきました。今年の7月には仙台空港が民営化される予定となっており、県内のビジネス機運はかなり高いと言えます。

宮城県で起業率が高い業種

喫茶店・塾・掃除のフランチャイズが人気

震災復興という目標があり、この5年間は建設業の需要が高かった点があげられます。既存の水産業者等の奮闘で水揚げ高などの数値は震災前の状況に戻りつつあります。しかし、事業従事者は大きく減少しており、高齢化も進んでいることからここから大きく飛躍することは難しい状況です。農業・林業についても同様の状況にあります。

フランチャイズで見ると、喫茶店塾事業、比較的小規模なお掃除事業などの進出が目立ちました。介護報酬の改定があった介護保険事業は低調でした。介護予防系デイサービス事業から撤退する事業所も多かったです。復興事業で利益を得た建設事業者などによる高齢者住宅への投資も目立ちました。

宮城においては、この数年間はビジネス環境としては特殊なものであったと言えます。近年のデータを見て宮城県の起業トレンドを判断することはできないと考えるべきだと思います。

開業しやすい場所。仙台近隣の出店が吉

宮城県でフランチャイズを活用して事業に参入することを考えるならば、仙台商圏を第一に考えることになるかと思います。仙台に拠点を作り、可能であれば石巻、古川に進出することがセオリーとなります。

仙台近隣でドミナント展開する戦略が最も成功可能性の高いやり方であると言えます。仙台商圏以外でフランチャイズ加盟する場合は、市場の把握に時間をかけてほしいと思います。販路を確保できる目途が立てば、仙台以外の都市でも成功は十分可能です。

東北における仙台の集客効果はものすごく、週末になると他県である山形、岩手、福島から来客がある状態となっています。投資資金に余裕がある場合、仙台の中心地(アーケード街)に陣取ることを考えたいところです。

地下鉄東西線により、仙台駅の東側の開発が一気に始まりました。東西線の東側の終着駅である荒井地区は、駅を中心とした開発が行われており、大きな可能性を持っています。また、地下鉄南北線の長町駅周辺の開発も大きく進んできています。仙台市立病院も移転開業したことから、高齢者を中心に導線が変わったことがわかります。

仙台での出店を考える際には、成熟した中心部から北西部での事業を考えるか、南側・南東部側の開発地域での事業を考えるかでかなり様相が変わります。事業を行う上で、どちらのエリアが適しているか実際に視察しながら決断していくことが大切だと思います。

着目点を仙台の中心部から広げていきますと、主要な幹線道路がビジネスチャンスにつながっていることがわかります。宮城県も車での移動が多いことからロードサイトへの出店が候補として挙げられます。

国道4号線沿い、国道45号線沿いが最も交通量が多くビジネスチャンスがあると言えます。最近は、駐車スペースの大小が大きく集客に影響しています。仙台中心部以外は、いかに車での来客を呼び込むかに事業の成否がかかっています。

どんな業種のフランチャイズビジネスが宮城県で求められているか

介護ビジネス

ニーズのある事業は、やはり高齢者向けの事業であると考えられます。宮城県も高齢化が進んでいます。小規模デイサービスや訪問介護は、現在の介護報酬基準を考えると単体では難しいと考えられます。なにかのサービスと合わせた複合型のサービス提供を工夫することで、事業としては成功の可能性が増します。介護タクシーや、お掃除ビジネスは参入の余地があると思います。

整骨院・リラクゼーションビジネス

整骨院やリラクゼーション事業は、飽和していると言えます。開業する際は、集客方法を工夫してください。訪問マッサージ事業は、高齢者の増加に伴い成功の可能性があると思います。

飲食ビジネス

飲食は、常に一定の需要があります。一時的に流行しているサービスは熟慮する必要があります。東北人は、新しいサービスを受け入れるまで時間がかかります。受け入れられる頃にはブームが終わっている可能性がありリスクが大きいです。開業する際は、旬を意識してスピード勝負で挑戦してください。ラーメン店は人気があります。競争は激しいですが、ひとたび口コミが広がれば行列店になることも可能です。

他に飲食店で可能性がある分野は、中華とイタリアン、お魚料理屋ではないでしょうか。中華とイタリアンに関しては需要が供給より優っている状況です。鮮魚を扱うお店も人気があります。やはり立地と味、マーケティング戦略は相当練りこむ必要があります。

学習塾ビジネス

などの教育事業も参入の余地があります。出店場所が大事です。語学教育はねらい目かもしれません。その他プログラミング、科学やロボット製作などの教育事業の進出はまだ少ないので、これから取り組む起業家にはチャンスがあると思います。

美容ビジネス

美容ビジネスなどの小規模出店も、まだチャンスがあると思います。仙台駅周辺に出店できるかが鍵になります。良いテナント・ブースを確保できるかが勝負になると思います。

コンビニビジネス・ファストフードビジネス

コンビニエンスストアファーストフードも進出廃業の改変期にあります。広めの駐車場を確保できる見通しがあれば、参入する時期として良いと思います。

カーシェアリングビジネス

カーシェアリングは、認知度アップが鍵になります。商圏は狭いので、エリアマーケティングを工夫することで収益につながります。将来的に、高齢者の輸送手段として自動運転や介護タクシーの需要が伸びることは間違いないので、参入の仕方により成功の可能性があると思います。

仙台で事業を起こすことが成功の近道。準備資金も余裕を持って

どの分野でもビジネスチャンスがあると考えられます。しいて言えば、まずは仙台市で事業を起こす方が成功可能性は高いと思います。もしも縁があって、他の地域で起業することをお考えの際は、より販路確保に力を入れることで成功が見えてくると思います。

販路の確保は十分調査と根回しを行うことが大切です。資金も本部試算よりも3割以上積み増すくらいの考えて取り組むことをお勧めします。万が一計画を下回ることがあっても余裕資金が、事業を支えてくれます。

結果はすべて自己の責任としてフィードバックすることが成功のポイントになると思います。宮城県での起業者が増えることを祈念しております。いつの日か、ビジネスでご一緒できる日が来ることを心待ちにしています。

株式会社きよ吉 代表取締役 大野澤 潔

法科大学院にて会社法・財務会計を研究。後に経営コンサルタントとして独立。 2011年3月、介護予防事業の会社を設立。音楽療法と理学療法を融合させたサービスを開発し、人気を博す。高齢者向け住宅の入居改善コンサルティングも開始する。中堅デベロッパーの出資を得て首都圏へ進出。これを機に、介護予防事業の持ち株を売却して育児セミリタイヤする。 2015年7月、少子高齢化社会の問題解決を目標に掲げ、新会社を立上げる。