フランチャイズ研究会 中小企業診断士楊典子
2015-04-15 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 中小企業診断士 楊典子

フランチャイズで起業、本当にローリスク?

 このコラムのポイント

独立のひとつの手段であるフランチャイズを活用して開業する女性というのはまだまだ少ないのが現状。もちろんデメリットもあり人によっての向き不向きもあるでしょう。しかし、システム自体を理解することで経営のヒントが見える―そんな新しい視点を持つことを女性起業支援のスペシャリストがフランチャイズの仕組みを解説しつつ新たな視点を持つことを提案したコラムです。

フランチャイズWEBリポート編集部


こんにちは、女性のローリスク起業を支援する、中小企業診断士の楊典子です。今回のテーマは『フランチャイズで起業、本当にローリスク?』です。

まずは、フランチャイズが悪であるという発想をクリアに

女性が起業を考え始めたときに、フランチャイズで起業するという選択肢を検討する方はごく少数です。実際に起業した人でも「フランチャイズ加盟は意識すらしなかった」という方がほとんどでしょう。

ではなぜフランチャイズ加盟が選択肢に浮かばないのか。
それは「フランチャイズ自体がよく分からない」、「フランチャイズに悪いイメージがある」からではないでしょうか?


コンサルタントとして独立して、フランチャイズに関する仕事や勉強を始めるまで、実は私も皆さんと同じような印象を持っていました。

―お店に対する思い入れはなく、単なる利益主義なのでしょう?

―加盟者(オーナー)はアルバイトに全部やらせるのでしょう?

―オーナーとは名ばかりで、朝から晩まで働き、本部に搾取されることもあるのでしょう?

―「味気ないマニュアルを強制されて、自分の意見も言えないのでしょう?

―コンビニやファストフードなど、ごく一部の業種しかないのでしょう?

起業で自由を手に入れるはずなのに、制約ばかりあって、頑張っても利益を本部に持って行かれる、私が持っていたのはそんなイメージでした。

しかし実情を知れば知るほど、私は自分のこのような思い込みや無知さが恥ずかしくなりました。

そんな自分の反省を踏まえて、まず『本部と加盟店は対等なビジネスパートナーで“搾取する側、される側”という関係ではない』ということを皆さんにぜひお伝えしたいと思います。

 

フランチャイズがどんな仕組みかを今一度おさらい

フランチャイズ本部は自分が経営する直営店で培った「この事業で成功するための仕組みやノウハウ」と「信頼の証になるチェーン名やロゴ」(これが大きく集客力に影響しますね)、そしてそれを「活用できるようにするためのサポート」を加盟者に提供します。加盟者はその対価として、本部に対し加盟の段階で「加盟金」を、それ以降は「ロイヤリティ」を支払うというのがフランチャイズビジネスの仕組みです。

 

そして本部と加盟者の義務や責任といった決めごとは、すべて加盟時に交わす「フランチャイズ契約書」に盛りこまれています。

ですので、本部と加盟者の間には上も下もなく、全ては加盟者が契約書をしっかり理解して納得した上で加盟を決め、対等なビジネスパートナーとして互いの義務と責任を果たしていくというのがフランチャイズの本質なのです。

対等だからこそ本部も加盟者のことを見ているしパートナー選びをする

「対等」ですから、皆さんが本部を選ぶように、本部も加盟者を選べます。
皆さんが加盟したビジネスを成功したいと思うように、本部もそのチェーンを成功させたいと思っています。なので、本部もチェーンの成功むけて力になってくれそうな加盟者を選ぶのです。

フランチャイズでは「儲かる本部はどこか?」が最重要と思われがちですが、実は成功のために最も大切なのは「本部の経営理念やその事業で成し遂げたい将来像(ビジョン)に加盟者が共感し、一緒にその実現に力を合わせていけるか」という点です。

皆さんも起業を考えるとき、起業後の収入だけではなく、起業で世の中にどんな影響を与えたいのか、どんな人の役に立ちたいのかなども一緒に思い巡らすことでしょう。

もしフランチャイズに加盟することによって、収入の確保と合わせて、その自分の「想い」をより確実に実現できるとすれば、加盟を検討する余地はあると思いませんか?2,000件近くあるといわれる本部の中には、もしかしたらあなたの想いを代弁してくれている本部もあるかもしれません。

フランチャイズへの食わず嫌いをなくせば、活用しなくても経営のヒントが見つかる

ここでぜひ皆さんにお伝えしたいのは、「食わず嫌いはやめませんか?」ということです。起業は人生の中の一つの大きな出来事になります。自分の先入観や思い込みで、得られるかもしれないチャンスを逃すのはもったいない!

起業を考える際には、ぜひ一つの選択肢として、フランチャイズの世界を覗いてみてください。加盟しなくても、そこで得られる情報(特に成功しているビジネスの仕組み)や気づきは間違いなく起業の際の財産になりますよ。

そして、もしそこであなたの価値観に会う本部に出会い、「ここに加盟して、ビジネスをしてみたい」と思えたなら・・・、それはとてもラッキーなことです。
なぜなら、一人でゼロから事業を興すよりも、本部のノウハウとブランド力を持って、サポートを受けながら事業を始めた方が、明らかに事業がうまくいく確率が上がるからです。

女性の起業で立ちゆかなくなる原因は「経営者としての経験不足」「営業力不足」、そして店舗を持つ場合には「立地の失敗」が中心です。

加盟金やロイヤリティは必要となるとはいえ、加盟することでこれらの部分の支援を受けられるメリットは甚大です。これらの点は自力で起業する場合でも、事業を早く軌道に乗せて成功させるために、その道の専門家の協力を仰いでもらいたいポイントです。

いくら稼げるかより同じ思いを持てる本部と出会えるかが成功の鍵

私は「いくら稼げるか」という視点だけで、フランチャイズ加盟を決めることは全くお勧めしていません。

あくまでも、自分が目指すものと同じ方向を向いている本部があることが、加盟にあたっての最初の選択基準になります。

そのうえで、自分だけで起業した場合と比べてどのくらい費用的な負担が増えるのか、その分はどのくらいの期間で回収することができるのかなど、得られるメリットとデメリットをしっかりと検討することが、加盟する・しないを決めるにあたってとても大切になります。

フランチャイズ加盟は「結婚」に良く例えられます。
誰にとっても「最高で完璧な結婚相手」がいないのと同じように、
誰にとっても「最高で完璧な本部」は存在しません。
本部選びは、あなたが理想とする人生を描き、その実現に力となってくれるパートナー(本部)を見つけることです。

起業を考えるのであれば、自力開業の検討を進めながら、そんなパートナー選びも楽しんで進めてみてはいかがでしょうか?

次回は『実はこれもフランチャイズ!?女性のセンスが活かせるフランチャイズビジネス』です。お楽しみに!

フランチャイズ研究会 中小企業診断士 楊典子

福島県出身、立教大学経済学部経済学科卒。新卒から一貫して経営コンサルティング業務に従事し、外資系コンサルティングファーム等を経て独立。五葉コンサルティング株式会社代表取締役。世界的企業から個人の創業まで、多数の支援実績を持つ。製造業の業務改革や各種FC本部構築などに関わる。主な著書にフランチャイズ入門(同友館)、フランチャイズ本部構築ガイブック(同友館)、好きを仕事に!―私らしいローリスク起業(BKC出版)など。