フランチャイズ研究会 中小企業診断士楊典子
2015-05-27 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 中小企業診断士 楊典子

オーナー業と家庭の両立、ここに気をつけよう!

 このコラムのポイント

独立するということはこころと体のエネルギーを大きく使うもの。ここでは、フランチャイズオーナーになりたい女性のために、ハードなオーナー業と家庭との両立を叶えるための術についてふれられています。

フランチャイズWEBリポート編集部


こんにちは、女性のローリスク起業を支援する中小企業診断士の楊典子です。今回のテーマは『オーナー業と家庭の両立、ここに気をつけよう!』です。

仕事と家庭の両立・・辛くなったりしていませんか?

家庭を持っている女性が起業する際に忘れてはいけないポイント、それは「仕事と家庭の両立」です。夫や同居家族との家事分担や家庭の役割分担が明確になっていて、思う存分仕事に打ち込める環境が整っているという家庭はまだまだ少数派。

なんとなく家事や育児、家の雑務はほとんど自分が引き受けている、という方が多いのではないでしょうか?

この状況の女性が起業してオーナーとなったときに生まれやすいストレスは

・仕事にもっと時間を割きたいのに、時間がない

・仕事が多忙で家事などを家族にやって欲しいのに、やってくれない

・家族が分担した家事をやってくれるものの、その品質に不満が残る

などが代表的です。

一方「この部分(育児や料理、家計管理など)、または家事全般は自分でやりたい」からやっているという方も多数いらっしゃいます。

このタイプの女性が起業してオーナーとなったときは

・自分の家事の品質に納得ができず、自分を責めてしまう

・家事や育児の時間が減ることで幸福感が下がってしまう

・全てを自分で行おうとして、身体を壊してしまう

このようなストレスや状態が続いてしまうと、起業してオーナーとなったこと自体を後悔することになりかねません。

このような状況を避けるために効果的なのは、3つのステップであなたと家族の考えをしっかりすりあわせしておくことです。そのステップについて具体的に見ていきましょう。

ステップ1:あなたにとっての両立とは?

先に書いたように、仕事と家庭のバランスについての考え方はひとりひとり違いがあります。

こうなったら両立できている!という基準値があるわけでもありません。だからこそ、あなたにとっての両立について明らかにしておく必要があります。

「あなたにとって、仕事と家庭が最高にバランスのとれている状態とはどのようなものですか?」

深く考えすぎず、自分にこと言葉を投げかけてみましょう。

そして、頭に浮かんだことをそのままに、ひたすら書き出します。

皆さんのイメージの邪魔をしたくないので、あえて例は出しません。思い浮かんだままに書き留めてください。

もしかしたら、書き出した中には、矛盾する内容が含まれるかもしれません。それは気にせずに進めてください。それこそが、整理をする際には本当にどちらを選ぶのかしっかり考えるポイントになります。

たくさん挙がったら、特に自分が重要だと思うものを5つ選んでください。

そして、それぞれに1番から5番まで、優先順位をつけていきます。

これはあなたが事業や本部を選ぶとき、働き方を決めるときの大切な判断基準になります。また、起業後の状態のチェックリストにもなります。

ステップ2:5年後、自分はどのような生活を送っていますか?

あなたが5年後に理想的だと思う状況を描いてみましょう。

あなたや家族の表情はどうですか?
暮らしぶりは変わりましたか?
朝起きてから寝るまでに、どのようなことをしていますか?
お休みはどのように過ごしていますか?
家族でどんなことにチャレンジしようとしていますか?

5年後の自分や家族の顔や姿を想像しながら、できるだけ細かくイメージしてみましょう。そして、それを文字にして書き留めておきましょう。

あなたが描く5年後には、ステップ1で書き出した5つの両立の条件もあわせて描かれているはずです。

もし欠けているものがあれば、その条件の必要性をもう一度自分に問いかけてみましょう。そして、必要だと確認できたら、その条件を踏まえた未来をもう少し描きこんでみましょう。

ステップ3:家族全員で変化と未来のイメージを共有する

オーナーになると決めたなら、事業の内容や資金計画などについて家族としっかり話し合いますよね。でも、起業後に家庭内不和が起こるのは、事業そのものが原因ではなく、あなたがオーナーとなったことで起こった「生活の変化」が原因になることがほとんどです。

起業する前の時点で、家族は「あなたがこんな事業を始める、何時から何時まで家に居なくなる」ということは理解できても、家族一人一人の生活がどのように変化するのかまでは想像がつきません。

なので、起業後のささやかな生活の変化(会話時間が減った、手作りおかずか減った、掃除が行き届いていない、電話にすぐ出ないなどなど)に戸惑い、その不満をぶつけてくるようになります。

そしてあなたも「起業してオーナーになったのだから、そのくらい想像つくでしょ!みんな自分のことばかり。なんで私の大変さを分かってくれないの!」という気持ちが少しずつ募り、孤独さとイライラを感じるようになるでしょう。そんな気持ちが態度に出ると・・・あとはご想像の通りです。

事業の成功で得られる幸福感と、家庭から得られる幸福感は別の物。男性は両方の幸福感の総量で自分の幸福度を判断する方が比較的多いのですが、起業支援をする中で、女性はそれぞれに基準値があり、両方が基準値を超えないと幸福であると実感できないということに気がつきました。

だからこそ、事業について考えるのと同じくらい、家庭についてもしっかりと考え、家族の応援を獲得することが大切なのです。

起業について、加盟について家族で話し合いをするときには、あなたが一方的な話し手になるのではなく、聞き手に徹して、あなたが事業を始めた後の不安や疑問をできるだけ引き出し、それらについて丁寧に答えるようにしましょう。

特に仕事の時間が伸びたり休日が減ったり、休日も急な仕事の対応が入ったりなど、家族の生活に変化が出る部分については、より具体的なイメージができるように説明することが重要です。

そして、その先にどんな家族の未来(ビジョン)を描いているのかも合わせて共有するようにしましょう(ステップ2が役立ちます)。

その際に、家族から異なる5年後の理想像を聞かされるかもしれませんが、それは未来の火種を消す大チャンス!です。相手の希望を聞きながら、家族みんなで共通する理想のイメージを描いておきましょう。

本部選びの時には理念やビジョンを共有することが大切ですよね。

それと同じ、いやそれ以上に、家族とも生活面での同じビジョンを共有することが大切です。

「いま大変だけれど、このビジョンを実現するためなんだ」、「いまこういう判断をするのは、このビジョンを実現するためなんだ」と納得できていれば、家族の生活の変化も“あなたに押しつけられたもの”ではなくなります。

しかしその前に、「あなたはどのような状態になれば仕事と家庭を両立していると感じるのか」を明らかにし、「あなたは家族とどんな未来を築きたいのか」を描き、そして家族の意見も反映させて創った「家族共通のビジョンを共有する」ということを丁寧に行ってみてください。

想定外ばかりが続く起業後の嵐の中でこそ、その威力を間違いなく感じていただけることでしょう。

起業しオーナーになると、決断を迫られたり、想定外の事柄に迅速に対応したりと、勤めていた頃に比べると精神的に負担になることがぐんと増えます。

そんな中、あなたの仕事を前向きに応援してくれる家族の存在は何より心強いものとなり、事業推進の力にもなります。

事業を成功させるためにも、そのような家庭環境をつくることも大切であると心に刻み、創業計画をつくる際には、ぜひ『家族会議』もそのスケジュールに埋め込んでくださいね。

フランチャイズ研究会 中小企業診断士 楊典子

福島県出身、立教大学経済学部経済学科卒。新卒から一貫して経営コンサルティング業務に従事し、外資系コンサルティングファーム等を経て独立。五葉コンサルティング株式会社代表取締役。世界的企業から個人の創業まで、多数の支援実績を持つ。製造業の業務改革や各種FC本部構築などに関わる。主な著書にフランチャイズ入門(同友館)、フランチャイズ本部構築ガイブック(同友館)、好きを仕事に!―私らしいローリスク起業(BKC出版)など。