株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2016-04-03 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

繁盛店になるために必要な客層分析は「客層キー」と「アンケート」の重視から始まる

 このコラムのポイント

店舗経営者様、ご自身そしてスタッフの方が接客されるときにPOSレジで「客層キー」を正しくタイプすること・・疎かにしていませんか?そしてアンケートはがきでお客様の意見が正しく聞けていると思ってはいませんか?実はこれだと正しい客層の理解をできていると言えません。 元マクドナルド店長が、正しく客層を把握するためのコツを解説します。

フランチャイズWEBリポート編集部


お客様が自店に足を運ぶ理由、実は正しく分析できていない場合がほとんど

「お客様が、あなたのお店を利用する決め手の中で最も多いものを教えて下さい」

これが、今日の質問です。
さて、あなたは答えることが出来ますか?

「うちの店は、自家製のチャーシューが評判です」
「獺祭がこの値段で飲めるのはこのあたりでうちだけですからね。これが決め手です」
「うちの店のピッツァイオーロは、本場イタリアで修行してきた職人です。これが決め手です」

どれも正しいでしょう。
それらは、お店の売りなのでしょう。

でもそれって、実際のお客様の声でしょうか?
お客様が「直接、具体的に答えて頂いた決め手」なのでしょうか?
あなたの、「売り」「想い」なのではないですか?

不思議なことに、とても多くの店長や経営者が、直接お客様の声を頂いていません。
特に、不振にあえぐお店の店長や経営者にこの傾向が強いのです。

なかには、テーブルの上に設置したはがき大のアンケート用紙で「味や接客の評価」を聞いているという方もおられます。でも、あれって自己満足以外には何の役にも立たない無意味な代物です。

あのはがきアンケートは、アンケート内容にも問題がありますが、もっと問題なのは、お客様の自主的な回答、もしくは、クーポンなど目当ての回答だからです。こう言う方法は、データの偏りが非常に大きくなるのです。
スマホアプリを使ったアンケートシステムも同じようなものです。

さて、それに反して、お客様の声をしっかりと「直接」伺っている店長や経営者がいます。
そんな方が経営するお店は、実は、そのほとんどが繁盛店なのです。
彼らは、テーブルの上のアンケート用紙やスマホアプリで自己満足をするようなことはしていません。

お店を選ぶのは、お客様です。
そのお客様が、どういう理由で、何が決め手であなたのお店を選んだのかを知ることは、繁盛店作りで最も大切なポイントです。

ですので、繁盛店を目指すあなたには、来店されたお客様に是非とも、「何故この店を選んだのか?」について「直接」お尋ねして欲しいのです。
それを知ることが、この後、お店が目的地に向かうための戦略に大きな影響を与えることになるのです。

POSレジの客層キーを活用できていないのは、客層のデータをとる重要性を認識できていない証拠

では、次の質問です。

「あなたのお店のお客様の属性・タイプを整理したリストを見せて下さい」

属性・タイプというのは、「性別」「年齢・年代」「職業」「来店手段」「来街目的」「目的機会」「同伴者数」などを指します。どのようなタイプのお客様か?と言う意味です。

基本は「性別」「年齢・年代」「職業」です。
つまり、女性、30代、会社員・・・と言った具合です。

「性別」と「年齢・年代」については、直接、お客様に伺わなくても、見た目で判断して調査することもあります。
全てのお客様に伺えない状況もありますからね。これについては、普段のお会計作業でデータを集めることが出来ます。

みなさんの、お店で使用しているPOSには、お客様の属性・タイプを打ち込む「客層キー」を設定することができるはずです。それを正確に入力すれば、どんなタイプのお客様がどんな割合で利用されているのかがすぐに分析できるのです。

ところが、この「客層キー」は、あまり有効に活用されていません。
キーの設定を解除して無効化しているか、もしくは、いつも同じキーを打ち続けているか、このどちらかのパターンのお店が非常に多いのです。

なぜ、客層キーを活用しないのでしょうか?
答えは簡単です。
「客層」つまり「どんなタイプの客様がどんな割合で利用されているのか?」を知る目的や、知ることで立てることの出来る戦略の効果を知らないからです。
実にもったいない・・・

店長は、月曜日の朝一番から、日曜日の閉店まで全てのお客様を見て、客層シェアの分析が出来ますか?
出来ませんよね。

ならば、POSにそれを打ち込めば良いのです。
ところが、店長も経営者もその情報の重要度がわからないため、適当にしか扱っていないのです。

そう言うお店の場合は、スタッフにも「お客様タイプ」の重要性や「POS客層キー」を正しく使うことの目的を説明しません。ただ、作業としてPOSの打ち方手順やルールを教えているだけなのです。

成功している店舗は自店のファンを大切にする施策を採用している

客層・属性・タイプを知ることの重要性について少し詳しくお話ししておきましょう。

郊外型のお店と都心型のお店では、客層は全く違って来ます。同じ都市型でも、駅前立地とビジネス立地では、これまた違って来ます。商業施設にテナントとして入居していたら、自店舗の客層も商業施設に合わせて違って来るのです。

その客層の違いを正確に把握せずに、施策を行ったり、施策の評価を行ったりすると、大きなズレが生じてしまう危険性があるのです。

たとえば、会社や本部が考えるナショナルブランドの「メインターゲット」が、もしもあなたのお店や商圏ポテンシャルには、あまりおらず、逆に、全然違うタイプのお客様がたくさんいたら・・・
あなたは売上を伸ばすための戦略としてどういう対策を考えますか?

「自店舗のメインの客層は横に置いて、ナショナルブランド向けのターゲットを増やすための施策を採る」
もしくは、
「現在大半を占めている自店舗の客層をローカルターゲットに置き、そのタイプのお客様のニーズに応える施策を採る」

成功しているナショナルチェーンは、間違いなく後者の方法を採っています。
後者は、「あなたのお店を選んでくれているお客様」を見ています。さらに、成功はポテンシャルの多いところを攻めるのが基本だからです。

あなたのお店を選ぶのは、商圏内にいる潜在顧客です。
そのお客様が、どういうタイプで、どこにどれだけいて、どのように動いているのかを知ること。
そして、そのお客様が、「何故この店を選んでいるのか」を知ること。
これが、商圏ポテンシャルを把握する最も重要なポイントです。

アンケートの精度を高めるために「特定の客席に座ったお客様」に声かけ

あなたのお店が、POSの客層キーを正確に打てるようになったら、今度は、先ほどもお話しした「何故この店を利用しているのか?」を、直接お客様、それも、最もシェアの多いメインターゲットのお客様に伺いましょう。

紙のアンケート用紙を使ってもかまいませんし、直接インタビューをしてもかまいません。
また、スマホのアンケートアプリを使ってもかまいません。
大切なことは、「アンケートに答えるお客様」を誰にするか?なのです。
アンケートに答えていただく、お客様は、お客様の自主選択ではなく、お店からの指名・要請であることが重要なのです。

その理由は、回答者のバランスを取ることにあります。

お客様が自主的にアンケートをしようとすると、その動機は、ほとんどの場合、クレーム、感動、クーポンゲットなどの強いきっかけが存在します。フラットで冷静なお客様は、自主的にはアンケートなどしないのです。強いきっかけの回答は、内容・評価そのものが大きく偏ってしまうのです。

しかし、お店側から回答者を選択して「お願い」をすると、フラットで冷静な状態のお客様もそこに含まれるようになります。



アンケートの専門会社が、回答していただくお客様を選ぶときは、一定のタイミングで、特定の客席に着席したお客様を選び、自然とランダムになるように工夫をしています。そうしないと、伺いやすいお客様にだけアンケートが集中するからです。

私が、マクドナルドの調査部でお客様アンケートを行っていたときは、このようにしてアンケートデータの精度を高めるように工夫をしていました。

さて、このようにして、集めたデータだけが、偏りのない、ほんとうに使うことに出来るデータになることはもうおわかりですね。

世の中の「お客様の声」は、実は、かなり偏った、バランスの悪い、揺らぎの多い、結果的に使えないデータになってしまっていることが多いのです。
これは、ほんとうに危険です!

「商圏ポテンシャル」を正確に把握するには、アンケートについても、正しい方法、正しい順番を知ることが大切なのです。

さて、あなたはどのような方法で、どれくらい、お客様のことを知っていますか?

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。