株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2016-11-27 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

雇ったばかりの新人スタッフを辞めさせない方法 【後編】

 このコラムのポイント

11/20公開のコラムの後編。スタッフを雇用する際、つい陥りがちなのが「シフトの穴埋め」採用。今回のコラムは、より良いお店づくりを共に考え行動してくれるスタッフを採用するいう視点が、お店の将来にとって如何に重要であるかについて気付かせてくれます。

フランチャイズWEBリポート編集部


後輩店長たちの悩み

「新人スタッフが辞めてしまうもうひとつの理由をご存じですか?」 

あるチェーン店のとても優秀な店長が、会議で後輩の店長達にこんな質問をしました。

後輩の店長達は、自分達の店のスタッフが、採用され、働き始めてから極めて早い時期に辞めてしまうことに悩んでいたのです。

もちろん彼らの店は、よく世間を騒がせているようなブラックな労務管理の店ではありません。労務管理については会社がうるさく言っていることもあって基本的な体制は整っています。また、前回のコラム『雇ったばかりの新人スタッフを辞めさせない方法【前編】』にあるような「受け入れ体制の出来ていない店」でもありません。

ユニフォーム、タイムカード、トレーニングツール、教育担当のベテランスタッフ、全てきちんと出来ているのです。しかし、それでも新人達は、すぐに辞めてしまうのです。

スタッフを雇う本来の目的は何かを問う

彼は、後輩達に質問をした後、次のように続けました。
先輩:「例えば、君たちは、スタッフを採用するときに、どういう基準で採用しているのですか?」

この問いに、後輩達は、
後輩:「希望シフトをたくさん出せる人」「笑顔が出せる人」「声の大きな元気な人」「日曜日に入れる人」「キャンセルや変更をしない人」
と、口々に、自分達が新人スタッフを採用するときの基準について答えました。

先輩:「確かにそれもあるんだけどさあ~君たちは、肝心なことを忘れているよ」
彼はため息をつきながら続けました。
先輩:「それは『辞めない人を採用すること』なんだよ。なぜ辞めてしまう人を採用するんだい?」

彼の言葉を聴いた後輩店長は一様にポカンとした表情をしました。

そりゃあそうですよね。なので、後輩達は口々に
後輩:「『辞めない人を採用する』と言われても、そんな夢みたいな事ってあり得ないじゃあないですか」
と反論したのです。

先輩:「辞めない人というのは、辞める理由がない、辞める必要が無いと言うことなんだ。君たちの店は、辞める理由がある… だから辞めてしまうんだよ。君たちは、応募者に対して、ミッション・ビジョンに対する共感レベルを採用基準にしていないだろ?それがそもそも間違いの元なんだ!」

すると、後輩達は、思わず反論をしました。
後輩:「それはわかりますが、今、人がいないのにそんなこと言っていたら採用なんて出来ませんよ」

先輩:「わかっているんだったら、お互いにヘルプを出し合ったりしながらシフトを何とかして、先にもっと採用基準にこだわろうよ。でないと、いつまでたってもイタチごっこは終わらないぞ。」
彼は、強い口調で言い切りました。

スタッフが辞めない店づくりの基本 〜従業員のステージアップを目指して〜 

「自分達が目指すミッション・ビジョンを達成するためにどういう人を採用するのか」を明確にし、それに共感する人のみを採用しない限り、ミッションやビジョンを達成する事は出来ません。

なぜならば、そこに共感できない人が、ミッション・ビジョンを邪魔してしまうのです。

いくらシフトが良くても、ミッション・ビジョンに共感していないと、「こう言う店を作ろう」と言う時に、目指す行動を一緒にやってくれないのです。採用時にそれに共感できていない人は、採用後に共感させようとしてもなかなかできるものではないのです。 

従業員満足の【第6ステージ】を目指して店作りをしていくのならば、最初からそのレベルに共感できるような人でないと、最後まで付いては来られません。それに共感できない人が作る店には、そのレベルに共感できるようなスタッフなど集まってこないのです。

もちろん、受け入れ側の既存スタッフ達にも「ミッション・ビジョン」に共感してもらわなければなりません。彼女達が「そんなの関係ない」と言っていたら、新人は続けることが出来ません。

・新人スタッフは「ミッション・ビジョンに共感できる人のみ」を採用する。
・既存スタッフは「ミッション・ビジョンに深く共感していただく」。
・店長は、既存スタッフの心をつかみ、共感度の高い新人を採用する。

これをぶれずに真摯に続けることが、スタッフが辞めない店の基本なのです。
そして、それが【第6ステージへの最短コースなのです。

次回は、「新人スタッフの初仕事前のオリエンテーションは店長がやろう」と言うテーマでお話しします。

お楽しみに!

  • 参考「『これからもあなたと働きたい』と言われる店長がしているシンプルな習慣」松下雅憲著(同文舘出版)

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。