株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2017-07-16 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

マクドナルドが実践!『相手の立場に立って考える力』を養う3つのステップ

 このコラムのポイント

SNSなどでよく見かける「このお店なんか居心地悪い」のつぶやき。スタッフがお客様のために良かれと思ってしたことが、いつの間にかお店の評判を落す原因になることも、最近ではしばしば…。できることなら「このお店のスタッフさんの対応に感激!ファンになりました」という評価にぜひ変えたい!今回のコラムでは、お客様の思いに寄り添った質の高いサービスを提供できるスタッフに育てるために、マクドナルドで実際に行われている指導法について知ることができます。

フランチャイズWEBリポート編集部


step1:相手の立場に立って考えるための「基本」を知る


"お客様や仲間には、自分がされたら嬉しいことをする"

これは、マクドナルドの店長が、新人のアルバイトスタッフに教えている『仕事と人間関係の基本ルール』です。

新人には、「お客様や仲間に喜んでもらうための最適な方法の選択」に迷った時、自らがこの基本ルールを基準に「判断」することを求めているのです。 

でも、実はこれは… あくまでも「基本ルール」なのです。

マクドナルドでは、スタッフ達が、いつもお客様や仲間の立場に立って考えることが出来るようになることを目指して教育をしています。

しかし、相手の立場に立って考えることは、口で言うほど簡単なことではありません。

『相手の立場に立つ』こと自体、どうやったら出来るのかは、簡単には理解できないことなのです。 

そこで、まず行っているのが、冒頭でお話しした「自分がされたら嬉しいことを相手にする」という基本ルールを教えることです。

この基本ルールを教わった新人スタッフ達は、例えば…

お客様から「お冷やを1杯ください」と言われたら…
⇒「自分ならば、氷を入れた冷たいお冷やが欲しいな」と思ったら、それを基準に『氷を入れたお冷や』をお客様に提供します。

客席に直射日光が入ってきて、お客様が「眩しそうにしている様子」を見たら…
⇒「自分ならばブラインドを閉めて欲しいな」と思ったら、すぐにその行動を取るのです。


これらが「自分がされたら嬉しいことを相手にする」ということです。

新人には、この基本ルールを徹底させることで「自分で判断できる主体性」をも養っていくのです。 

step2:相手の行動を見て、自分の判断とのギャップに気づく

しかし、この基本ルールはここで終わるわけではありません。

マクドナルド教育の目的は、あくまでもスタッフ達が「相手の立場に立って考えられるようになる」ことです。

目的のレベルは「自分基準」ではなく、あくまでも「相手基準」…『相手軸』なのです。

マクドナルドでは、ただそれを単純に言葉で教えるのでは無く、自らが気づくように仕向けていきます。

そのファーストステップが「自分基準:自分がしてもらって嬉しいことを相手にする」ということなのです。

この自分基準ならば、誰でも「判断」はできますからね。

ところが、新人達はこの自分基準を元に判断をしながら仕事をしていると、ある時、この基本ルールだけでは「相手の立場に立てないこと」に気がつきます。

例えば、先ほどの「お冷やをください」のケースでは…

お客様が「そのお冷やを使って薬を飲んでいた」様な場合…
⇒ それを見たスタッフは、自分基準:自分軸では「冷たいお冷やでOK」でしたが、相手基準:相手軸では「冷たくない常温のお冷やの方が良かったのかも知れない」ことに気がつくのです。

お客様が「眩しそうなので、自分基準でブラインドを下ろした」んだけれど…
⇒ お客様は窓から外を見たかったので、降ろされたブラインドを自ら巻き上げるというシーンを見てしまった時、自分が良かれと思ってやっても、それが相手に取って必ずしも嬉しいことでは無いことに気がつくのです。


step3:相手の行動から、本当に望んでいることを引き出す

マクドナルドが大切にしているのは、この「自らが気がつく」という点です。

これが「考える力」を養うためのベースになり、彼らがトラブルやギャップや疑問に直面した時に『自分で判断できるスタッフ』に育っていく… マクドナルド教育の秘訣なのです。

もちろん、彼らの教育は「気がつく」というレベルでは終わりません。また「ただ考える」というレベルを求めているわけでもありません。

さらに「相手の考えを知り、相手の立場を理解する」ために、「相手に聴く」というスキルを教えるのです。 

その結果、前出のケースだと、

「お冷やをください」と言われたら…
⇒「氷はいかがいたしましょうか?」と伺うのです。

お客様が眩しそうにしていたら…
⇒「ブラインドをお下げしましょうか?」と伺うのです。


このようにして「相手がして欲しいこと、してもらったら嬉しいことを相手にする」レベルになるのです。

3つのステップを通して、店長がスタッフの成長を見守るべきポイントを整理

「相手の立場や気持ちを理解する」ことは、簡単ではありません。

もっと正確に言うと、相手の立場や気持ちを『自分基準で』判断するのは非常に難しいということです。 

だから、相手に「あなたはどうして欲しいのか?」を聴くのです。

それが、「相手の立場に立つための基本ルール」なのです。

【ステップ1】
 自分がして欲しいことを 相手にする

【ステップ2】
 自分がして欲しいことは
 「相手がして欲しいことでは無いこともある」ということに気づく

【ステップ3】
 相手がして欲しいことは、相手に「どうして欲しいのか?」と聴けるようになる


これにより、スタッフは『相手軸に立った行動を主体的に行うようになる』のです。

世の中の多くの店長やリーダーは、とかく相手を自分基準の中にはめ込んで判断をしようとします。

それは、内心、相手が自分と同じ考えであって欲しい、同じだと聴く手間が省ける、違うと面倒だ… なんて思っているのが原因です。 

しかし、その思い込みは、多くの場合、相手や部下との間にギャップを生み、不満やトラブルの原因になってしまうのです。

「相手の立場に立って考える」そのために、まずは「相手に聴いてみる」

是非ともやってみてください。間違いなく変化が起きますよ。

約束します!

 

次回は「自分では自分のことはわからない。だから店長はスタッフの『コーチ』になろう!」というテーマでお話しします。お楽しみに! 

  

  • 参考「『これからもあなたと働きたい』と言われる店長がしているシンプルな習慣」松下雅憲著(同文舘出版) 

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。