ATカンパニー株式会社 代表取締役浅野 忍土
2015-04-28 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
ATカンパニー株式会社 代表取締役 浅野 忍土

フランチャイズ本部の提示する事業シミュレーションは信用できるのか?

 このコラムのポイント

加盟モデルや収支モデル。本部のオーナー募集を見ていると必ずと言っていいほど出てくるデータです。これがあれば加盟希望者自身はシミュレーションする必要がないのか?、また、シミュレーションするならどの部分を重点的に進めたらいいのか?という部分にこちらのコラムでは触れています。

フランチャイズWEBリポート編集部


自身でも事業シミュレーションしたほうが適切な判断ができることに違いない

今回のコラムでは、フランチャイズ事業を検討するときに、本部が提示する事業シミュレーションは信用しうるものかについて触れていきます。

信用できるかどうかという視点で言えば、各本部ごとにシミュレーション作成の基準や視点が異なり、一概に言えません。

故に、事業シミュレーションはあくまでも判断材料の一つであるという事を念頭においておく事が必要であり、最終的にはご自身で独自に作成される事をお勧めします。もしくは、数字の妥当性をしっかりと検証し判断する事が絶対に必要であります。

どの本部も、それなりの根拠を持って、事業シミュレーションを策定していると思われますが、その算定根拠などは各本部でまちまちと言って良いでしょう。

よって、提示された計画の全てを信用するのではなく、本部のシミュレーションを基に、独自に策定し直す方が最も正確な事業判断に繋がると言えますし、そもそも自分で作成が出来るレベルまで事業を理解出来れば、適切な判断ができると言えます。

事業シミュレーションで見るべきポイント3つ

そこで事業シミュレーションで見るべきポイントに関して、解説致します。重要な視点は各数字の妥当性とその根拠です。大まかには下記3つの重要な視点が挙げられます。

1.初期投資金額の妥当性
2.売上予測の妥当性
3.販売管理費項目の抜け漏れの確認(結果としての利益の確認)

1.初期投資金額の妥当性

そもそも、事業に掛かる初期費用が大きくブレれば、事業としての投資回収対象金額が変わり、結果として投資回収期間が延びてしまいます。

よって、初期投資金額が妥当かどうか、その根拠を見極めなければなりません。

視点は2つで、

1)抜け漏れが無いか?
2)過小に見積もられていないか?

多く見られるのが、物件保証金が組み込まれていない場合や各必要資金項目が過小に見積もられている場合。

同時に、店舗ビジネスの場合、貴社(あなた)が出店したい地域の物件や人件費の相場を基に、各初期投資項目を見直す必要があるでしょう。

それ以外にも、運転資金(運転資金はランニングコストですが、初期赤字が出る事業であれば、運転資金は初期投資として考えなければなりません。)など、本来事業として掛かる資金、全てに関してしっかりと把握する事をお勧めします。

2.売上予測の妥当性

次に、売上予測に関しても、しっかりと妥当性を判断しなければなりません。

事業シミュレーションはあくまでも予測である為、当然、どんな事業でも、売上を高く見積もれば魅力的な事業シミュレーションが出来上がります。しかし、その売上自体が非現実的な場合、投資回収はおろか、利益すら出ないなどという状況に陥る事も予測できます。

そのため、売上予測を本部事業シミュレーションの80%や120%に変動させて、多角的に考察する事をお勧めします。

3.販売管理費項目の抜け漏れ確認(結果としての利益の確認)

そして、販売管理費の内容をよくよく精査しなければなりません。

例えば、

・収益性の高い事業だと思ったら事業シミュレーションに減価償却費が計上されていなかった。

・人材の流動性の高い事業ため、人材採用費がかさんでしまう事業だったが、事業シミュレーションには人材採用費が一切計上されていなかった。

・各項目、チェーンの平均値から数字が算出されており、結果的に、自社(あなた)が展開を望む地域の相場とかけ離れていた。


これら3つのポイントを元に、事業計画を理解し、検証しなければなりません。

本部の数字を参考に、自身の目で判断する事で、より精度の高い事業シミュレーションを作り上げる事が可能です。更にはこうした作業を通じて、よりその事業の内容を理解する事ができ、事業判断の強化に繋がる事は間違いありません。

事業選定に失敗しない為にも、こうした手間をかけた事業検証を行う事を必ずお勧めします。

同時に、モデル売上を実現もしくはそれ以上の結果を残している店舗を実際に見に行く事も重要です。逆に、モデル通りに行っていない店舗も見る事をお勧めします。結果として、事業の重要な視点を理解する事に繋がるでしょう。

 

ATカンパニー株式会社 代表取締役 浅野 忍土

経営コンサルティング会社でフランチャイズ開発に携わり実績を上げた後、2009年ATカンパニー設立。各企業の経営戦略に沿って有望な新規事業を提案。小規模デイサービス事業、乳幼児教育事業など幅広い業種のフランチャイズ企業を支援。支援チェーンの一つ、乳幼児教室「TOE Baby Park」は3年半で、200加盟達成。2009年10~2014年9月までに延べ272件、月平均約5.4件ベースで加盟開発を実現する等、短期間での多店舗チェーン作りを得意とする。