販路企画 代表田口 勝
2015-10-21 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
販路企画 代表 田口 勝

躍進するコンビニエンスストアチェーンの強さの秘訣 ~Part.2~

 このコラムのポイント

街中を歩いていると、同じ看板のコンビニがいくつもある!なんてことありませんか?ドミナント出店というのですが、このねらいやコンビニが近年最大出店を続けている理由がわかるコラムです。

フランチャイズWEBリポート編集部


1.なぜコンビニエンスストアは近年、最大出店を続けているのか?

これは、実は私が一番良く聞かれる質問です。フランチャイズビジネスでこれから起業をしたいとお考えの方以外に一般の企業経営者からも良く聞かれます。
今回は、コンビニエンスストアチェーン強さの秘訣のひとつ。『出店』についてお話をしていきたいと思います。

皆さん不思議に思ったことありませんか?

あっちにもこっちにもコンビニエンスストアが沢山存在する。
なんで?やっていけるのか?と・・・実は、これも前回お話した『時代への変化』への対応と大きな関係があるのです。

2.コンビニエンスストアチェーンの出店状況

コンビニエンスストアは、近年主要3チェーンは最大出店を目標に掲げて出店抗争をかけております。当然、チェーン同士の『いわゆる看板変え』も多数あり、チェーン本部の提携やM&Aも進んでいます。(俗に言う経営統合も)
現在のコンビニエンスストアチェーン数は以下の通りとなります。

単位:店 2015年8月 2014年8月 前年同月比(%)
全店 53,208 51,367 3.6%

JFAコンビニエンスストア統計調査月報2015年8月より

現在日本全国のコンビニエンストアチェーン店舗数は、53,000店で更に増加を続けております。更に主要各社は約1,000店以上の出店を2015年にも計画し、今後も出店競争は激しくなってきております。

なぜこれだけの出店が必要なのか?これには時代背景があるのです。

3.コンビニエンスストアに求められる時代背景

コンビニエンスストアは時代の変化に応じて成長を続けてきたことを前回のコラムでお話をさせて頂きました。その中で今、コンビニエンスストアに求められるニーズは、『便利さ』です。コンビニエンスストアは若者がメイン顧客層の時代もありましたが、現在では子供からお年寄りまでに利用され、商品だけでなく、公共料金の支払いやATMまであり、地域密着型のインフラとなってきております。

その中で時代は人口減少。そんな時代では地域のシェアをどれだけ上げていくことが出来るかが実は一番大きな売上に影響を与える要因となってきております。

つまり新規客が少なくなるのであれば、他競合からお客様を奪うか?来店頻度を上げるしか客数を増やすことは出来ません。

お客様は、『近くの店舗』に通う傾向が強く、出来るだけお客様の『利便性』を上げることで来店頻度を上げる必要があります。そのため、店舗数を増加する必要があるのです。
昔はコンビニエンスストアの商圏は半径1kmや2kmと言われていましたが、現在は500m商圏とも言われ、キメの細かい出店が必要となってきているのです。

4.シェアを上げるのって本部の都合?

商圏内で店舗数が増加し、商圏シェアが上がること。
これによって加盟店の売上が上がるメリットは次の通りと私は考えております。

1.競合の駆逐

他のコンビニエンスストアへ売上の影響を与えることで競合店を駆逐し、既存店の売上が上がる。
これが実は一番、既存店の売上に与える影響が大きいです。要は競合店を挟み込み駆逐することで、その競合店の売上をお互いに分けましょうというもの。

2.競合店の出店抑制

商圏シェアが高いところには、当然、競合店は出店しにくい環境が出てきます。
なぜならば、多数の同じ看板があるところでは、商圏シェアを持っているチェーンの方がブランドが確立しており知名度も信頼度も高いからです。

その中で店舗出店を行うということは売上が上がらない可能性も高く、閉店リスクを伴います。どれだけ最大出店と言っても、不採算店舗を増やそうと思って出店を行うチェーンはありませんので、競合店の出店抑制に繋がるのです。

3.広告宣伝効果

同じ商圏に同じ看板のチェーンが多数存在するメリットは多数あります。
同じキャンペーンや商品は間違いなく、商圏に1店舗しかないよりも複数存在した方が、認知度は高くなり、キャンペーンや商品の販売が上がりやすいのです。
つまり他の店舗があることで広告宣伝効果がより上がるのです。

4.ブランドイメージの確立

商圏に同じ看板のチェーン店が多数あった方が、商品やキャンペーンの広告宣伝だけでなく、店舗の信頼度やブランドイメージも高まります。
つまり、安心感が強くなるため、お客様のロイヤリティが高くなるのです。
お客様のロイヤリティが高くなれば、当然、固定客化に繋がりますので、売上は上がりやすくなります。

5.物流コスト低減

コンビニエンスストアチェーンは粗利分配方式を行っております。
つまり、売上から原価を引いた粗利を本部と加盟店で分配しましょうという方式です。
そうなると加盟店にとっては荒利益も非常に重要になるのです。原価には当然商品の原価もありますが、物流コストも含まれています。
物流コストが下がれば、粗利益も上がります。同じ商圏エリアの中に店舗が多い方が、1台の車で配送が可能となり、当然物流コストは下がるというわけです。
また、配送時間も短くなり、新鮮な商品を配送することも可能となるのです。

5.まとめ

商圏シェアが上がることで、既存店に与える売上の影響は上がるということについて今回はお話を致しました。しかし、商圏シェアが上がることは、チェーンにとってはプラスでも、加盟店にとってマイナス面がないとは言い切れないのです。
それはカニバリゼーションと言う、同じチェーンの『喰い合い』というものです。実はその対策も実は各社が成長を行う上でやっているケースがあります。それは次回のコラムでお話を致します。

最大出店で各社はシェア争いが更に激化します。その中でどのチェーンを選ぶのか?
そのチェーンの仕組みを活かして、最終的には、加盟店希望の皆様がどうするのか?が一番重要だと思います。
フランチャイズはあくまでも武器。武器をしっかり使いこなしましょう。

販路企画 代表 田口 勝

大学卒業後、熊本県の経営コンサルタント会社に勤務。マーケティング戦略立案・管理者研修等で中小企業のコンサルティングを担当。その後、業界最大手のコンビニエンスストアチェーン本部にて10年勤務、店長・スーパーバイザー・マネージャーを経験。退社後は販路企画を立上げ、商圏に基づくエリアマーケティング戦略立案・出店調査・FC本部展開支援・従業員戦力化研修、セミナー講演活動を行っている。