合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表中土井 鉄信
2015-11-16 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表 中土井 鉄信

塾経営者を指導する教育コンサルタントが語る!教育サービス業とサービス業の違い

 このコラムのポイント

このコラムは学習塾経営の戦略に通じた教育コンサルタント、中土井鉄信氏が執筆しています。広く教育ビジネスで起業したいという方や、中でも学習塾経営で失敗したくないという方。まずはサービス業から見た教育ビジネスとはどのようなお仕事としてとらえるべきかをおさえましょう。

フランチャイズWEBリポート編集部


教育ビジネスとは単なるサービス業ではない

昨今、教育について色々な言われた方をしています。例えば、ワタミの元社長である渡邊美樹氏は、教育はサービス業だと定義して、学校経営をしています。この渡邊氏の発言は、もう10年以上も前のことになりますが、渡邊氏の発言は、大きな影響力を持っていたため、教育は、「サービス業」だという定義が、随分と広まりました。

しかし、この発言は、正確に言えば正しくはありません。教育は、単なるサービス業ではないのです。教育は、教育サービス業というサービス業としてはちょっと変わった領域を占めるものです。簡単に言えば、2つの面でサービス業としては特殊なものです。

お客(生徒)に指導すること、顧客の二重性が教育サービス業の特徴である

その1つは、指導性があるということです。サービス業では基本的にお客様に対して、指導はしません。どんな注文にも快く応じる居酒屋が典型的なものです。「はい喜んで!」と注文を承る仕事です。

それに対して、教育サービス業は、お客様に対して指導をして、スキルを身につけさせ、お客様の能力を高めることをする仕事です。ですから、その瞬間では、お客様に不愉快な思いをさせてしまうことがあるということになります。「君の勉強の仕方は違っているよ!」とか「もっと真剣に取り組まないと、君の目標は達成できないぞ!」と叱咤激励する場面もある仕事なのです。サービス業には、お客様を不愉快にさせる行為は、前提にないのです。ここが一般のサービス業とは違うところです。

そして、もう1つ特殊なことは、お客様が、二重に存在するということです。サービス業は、基本的にサービス提供者(従業員)とサービス受益者(=お客様)が、そのサービスを行なう場面にいて、そのサービスがよければ満足し、サービスの対価を払って完結します。従業員が一生懸命サービスを提供し、技術が優れていれば、お客様は満足をし、またそのサービスを受けたいと思うのです。サービス業では、基本的に顧客の二重化はおこりません。

それに対して、教育サービス業では、サービス提供者(=教師)が、サービス受益者(=子ども)に対してサービス(指導)を提供しますが、そのサービスを評価するお客様は、そのサービスを直接受けた子どもとその子どもを育てている保護者になるということです。ここに顧客の二重性があります。

そして、重要なことは、教師がいくら一生懸命に指導をしても、その指導を受ける子どもが、やる気になって、態度変容(子どもの姿勢が変化する、勉強が分かるようになる、等々)を起さない限り、保護者は評価してくれないということです。ここが、一般のサービス業とは圧倒的に違うところです。ですから、一般のサービス業よりは、難しい仕事のだと私は考えます。

♢通常のサービス業
サービス提供者(店・会社)は顧客に直接サービスを提供し、そのサービスを受けた顧客が対価を支払う。

♢教育サービス業
サービス提供者(学校や学習塾)は直接顧客=子どもに対し、サービスを提供するが、そのサービスの対価は保護者が支払う。その点において保護者は間接顧客となる。

学習塾経営で成功するコツは生徒と保護者から逃げないこと

学習塾経営で重要なことは、顧客が二重化しているということです。この点をしっかり理解しておいてください。学習塾は、子どもの指導を行なうのは当然のこととして、子どもの保護者にもしっかり説明責任があるということです。

学習塾に子どもを預け、その子どもの態度変容を期待するか実感して、保護者は、その学習塾を信任するのです。そして、保護者は、授業料を学習塾に支払うのです。

つまり、学習塾の評価は、子どもとその保護者がするものです。この事実から学習塾の経営者は、逃げないようにした方が良いと思います。教育が、教育サービス業である以上、学習塾は、顧客の評価をしっかり受け止めて、自分の仕事に向かうことです。
。ここが、一般のサービス業とは圧倒的に違うところです。ですから、一般のサービス業よりは、難しい仕事のだと私は考えます。

合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表 中土井 鉄信

教育機関NO.1クラスのコンサルタント。学習塾における運営コンサルティングの依頼は、規模も、指導方法もニーズも様々であるが、的確な判断力と、データ分析力で今までに携わった学習塾は全国津々浦々80塾以上。 在籍数減少など苦境に陥った多くの学習塾の再建を成功させた手腕と、歯に衣を着せぬ人間的な魅力で、全国の教室オーナーからの信頼は厚い。また、私立学校のコンサルティングや全国各地の教育委員会での講演や管理者対象研修などの依頼も多く、日々、全国を飛び回っている。