コンビニ研究家田矢 信二
2016-01-11 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
コンビニ研究家 田矢 信二

セブン-イレブンとローソン出身者が語る!自社らしい「最強チームを創るノート」とは

 このコラムのポイント

今、「1冊のノートにまとめなさい」というコンセプトの書籍が話題になっていますが、これは飲食店やコンビ二のスタッフ育成にも活用できるひとつの戦略である。では具体的にどのような成功例が出ているのか?これらをセブン-イレブンとローソンの元社員であるコンビ二研究家、田矢信二氏に語ってもらいました。

フランチャイズWEBリポート編集部


「1冊のノートにまとめる」がトレンドになっているのは日本人ならではの理由と可視化ができるから

いらっしゃいませ、コンビニ研究家、店舗育成アドバイザーの田矢信二です。

最近、東大に合格した学生のノート術・有名コンサルタント社員のノート術など、情報を1冊のノートにまとめる手法を提案した本が話題になっています。それではなぜ、IT・スマホ全盛時代に書くことがもてはやされるのでしょうか?

理由は簡単です。

「書く技術」は日本人なら誰もが持っている武器なのです。書くことで整理するだけでなく、共有することで可視化が可能になります。これは、日本の中にいては感じないことですが世界レベルからみた場合は非常に恵まれた教育環境にいる表れです。

なぜ今、コンビ二や飲食店で「手書きノート」がもてはやされるのか?

これを経営の現場に応用することで組織強化ができます。とくに小売業を中心とするコンビニや飲食店などの接客業は、業務中に会話する時間は限られており、その中で円滑なコミュニケーションを取るのは難しいものです。

そこで店舗で一冊のノートを使用します。全員、出勤時には必ずノートの内容を確認します。自ら考え、仮説を持たせながら業務を行い、一日の終わりにその検証を踏まえて感じたことを書きます。

内容は以下の「8つの書く習慣」いずれかの項目について書くように促します。

1.販売施策の情報共有
2.営業数値の共有
3.店長の目指す店舗コンセプトの共有
4.褒め、認め、感謝を伝え、チームワークを高める
5.お客様からのお褒めの言葉
6.店やお客様の情報共有
7.ミーティング議事録の共有
8.連絡と引継ぎ事項

小さな積み重ねを繰り返すことで、全員が自然にコミュニケーションを取ることができます。そうすることで、シフト時間帯のみの仕事ではなく、全体でお店を作り上げていくことを意識しはじめるのです。

1冊のノートで成功した具体例:成長を促し、自ら考えて動くスタッフを育成する

あるコンビニエンスストアでは、発注業務を教わったばかりのアルバイトが時間帯や天候によって来客数にばらつきが出ることに気づきました。このことをノートに書くと、店長から客数意識を持てたことをほめられました。

彼女はさらに仕事が楽しくなり、客数を分析することで発注の精度が上がったといいます。またこれを見ていた入社したばかりのアルバイトは、その先輩を真似して、客数を意識して仕事をするようになったという事例があります。

自ら考えて行動をする習慣を対面コミュニケーションではなく、書くコミュニケーションによって役職の階層に関係なく円滑なコミュニケーションを生むことができるのです。この部分が自社らしい育成のヒントにもなります。

次に新入社員・新人スタッフは勤務初日から感想を書かせると、成長過程を見ることができます。もし、既存のスタッフがなかなか習慣しづらい場合ですが、新人が書いた内容を見て管理職・店長は新人スタッフとの接し方に生かすことができるなど、有効活用できることで次第に書くようになります。新人スタッフは会社の経営理念や目標を知らずに働き始めることが多いのですが、全員で商売を覚え、全員で店を作り上げていくことができるのです。

コンビニ研究家 田矢 信二

大阪府生まれ。幼少より実家のおもちゃ屋を手伝いながら商売を学ぶ。CVSチェーン本部で業界1位セブンイレブンと業界2位ローソンにおいて、現場経験を積んだ後にコンサルタント会社も経験。コンビニ研究家として、店舗ビジネス業界へ「人」に関連する育成テーマにて講演・研修には定評がある。コンビニをテーマにテレビ・ラジオにも出演。著書に「セブン―イレブン流 98%のアルバイトが「商売人」に変わるノート」(TWJ BUSINESS)がある。