コンビニ研究家田矢 信二
2016-04-09 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
コンビニ研究家 田矢 信二

コンビニバイトでマネジメント力を鍛えられる!?身に付く3つのスキルを解説

 このコラムのポイント

コンビニ業務は、接客の基本。人手不足がさけばれるコンビニ業界ですが、コンビニで働くことで得られるスキルはこんなにある―コンビニ経営者の方がアルバイト募集や育成で説明できるようになるといいポイントについて、そして先を見て動けるスタッフを増やすための年間計画を立てる重要性などについて解説しています。

フランチャイズWEBリポート編集部


コンビニで働けば、どこでも通用するマネジメント力が鍛えられる

パート・アルバイトの採用環境が厳しくなる中で、コンビニ加盟店が経済的に提供できることは非常に限られています。現実に、最低賃金を少し上回る時給で経費コントロールしている加盟店は少なくありません。

そんなコンビニチェーン最大の魅力。それは、仕事から学べることが実に多い点。特にこれから社会に出ていく高校生・大学生にとっては、接客マナーやマネジメント・売場づくりなど、将来の職場で役立つ職場スキルを経験できます。

そのことを店舗責任者がパート・アルバイトに情熱・想いを伝えることで、アルバイトのモチベーションを高め、定着率を上げることができます。採用面接時や初回研修の場を上手に使うべきです。

コンビニで働くことで得られる3つのスキル

コンビニにて働くことで得られるスキルは大きく3つ。接客スキル・マナーとマネジメントスキル、そして仕事に対する責任感です。

1.接客スキル・マナー

コンビニでは、基本的な接客技術や挨拶の仕方を覚えられるだけでなく、さまざまな客層のお客さまに対する接客コミュニケーションを学ぶことができます。これは、就職活動にも役立つスキルになります。

立地や時間帯で主な客層は決まっていますが、それでも、ビジネスマンやシニア、主婦など、異なる生活環境をもつお客さまが来店します。それぞれの顧客ニーズを意識して接客対応することで、どういった人にどのような接客アプローチが求められるのかが理解できるようになり、自然と接客スキルやマナーを習得できます。

2.マネジメントスキル

「発注と仮説・検証」のサイクルを経験することで、マネジメントスキルが磨かれる―これぞコンビニで働く大きなメリットです。

商品を発注するには、仮説を立てることが必要不可欠。過去の販売データを基に、納品日の天候条件や地域催事などのデータを読み解き、売場づくりを計画して発注数量を決定します。そして、実際に売場を作り、販売結果の検証を次回の発注改善につなげていきます。この一連のマネジメント実践は、どのような仕事に着いたとしても必ず役立つものです。

3.仕事に対する責任感

マネジメントの実践をすればおのずと習慣化されてくる責任感。
シフトによっては、発注者と売場担当が異なる場合もありますが、自らの発注カテゴリーや売場を任せることで、仕事に対する責任感やモチベーションは変わってきます。マネジメントの実践を通じて仕事の面白さが見えてくるので売場にアルバイトの演出が表現されてきます。

成功する複数店経営者の条件。カギは「人材育成」

多店舗化するコンビニが増えている昨今、複数店オーナーの「共通の悩み事」が、新規出店に備えた人の育成です。人材育成に成功し、強い組織を作っている加盟店経営者ほど、研修や勉強会を通じ、スタッフに学ぶ機会を提供しています。こうした取り組みは、店舗ミーティングの場を使えば、個店経営のオーナーでもできるはずです。

ただ、最後に言っておきたいのは、コンビニで働くというメリットも、オーナーや店長が仕事の考え方や技術をきちんと教えることで、その後の戦力化に大きく影響します。

スタッフに仕事を丸投げしていては、アルバイトが仕事を通じたモチベーションアップなど自ら行うことは不可能に近いです。加盟店経営者や店長自身がスタッフに対する教える姿勢がお店の評判があがり顧客満足度も向上します。

コンビニで働くメリット「5つのポイント」(働いてくれるスタッフに経営者が伝えたいこと)

1.接客の基本技術や挨拶の他、コンビニを利用するさまざまな顧客対応に対しての接客ノウハウを習得できる
2.データなどで仮説を立て、発注と検証、そして次の改善につなげるマネジメント・スキルを学べる
3.自らの発注カテゴリーや売場をまかせることで、仕事に対する責任感・モチベーションが変わり自主性が生まれる
4.新商品のPOPを作成したり、エンドなどの売場の工夫をすることで、販売スキルが習得できる
5.複数の仕事を同時進行で進めることが多いため、仕事を組み立てる適応力と対応力が取得できる

先を見る仕事をする・してもらうには「年間計画」を立てること

先を見る仕事をするにはどうすればいいのか、ということにこれから触れていきます。これは、スタッフ全員がPDCAサイクルをまわせていれば実践しやすくなります。年間計画を立てるということです。

しかし売上数値は、日次から週次へ、週次から月次へ、月次の積み重ねが年間計画へと繋がります。ただしそこには、落とし穴が。

月次から年間計画に向けての期間が長いので先を見た仕事を意識しにくいのです。一般の経営者でさえそうなのですから、そうならないためにも3か月計画の区切りをつけ第1~第4期と分けます。



こうすることで店舗責任者のモチベーションと数値が繋がります。現場におけるアルバイトの1日の流れも同じです。アルバイト達は自分の時間帯で精一杯なので他の時間帯の仕事状況を自発的に知ろうとはせず、見えない時間に向けて不満を誘発させます。

これをなくすためには、作業割当表(業務の流れを表にしたモノ)での業務の明確化(オペレーション)と細部にまでこだわる仕事のスキル(発注、売場、接客)をオープンにすることです。商売の本質は、バック・ルームを改善をはかり、仕組みと先を見た指示を伝える―コンビニ商売の一歩は、ここから始まるといっても過言ではありません。

競合店に負けないために。スタッフ戦力化で店舗力を養うことが必須

コンビニ店舗の現場で起こりやすい問題点は、消費者の求める多様性に適応するため様々なオペレーションが増えていること。現場が効率化を優先しすぎたために先を見る仕事のアナログ部分の成長を止めており、考えなくても店舗運営できるようになってしまっていることです。

顧客をおもてなしするのは「人」。今後10年も「人」が接客すると予測できる以上は、店舗責任者、スタッフも全員で先を見すえた仕事をすべきです。シンプルですが、これが新興勢力のネット店舗には出せないリアル店舗の強みになります。それぞれ個店同士の勝負であるという商売の本質は変わりません。

顧客の感情は人それぞれ。顧客は買い物のプロと心得ましょう。

ローカライズ戦略がそのためには必要であり、その地域、エリアに住む人に働いてもらわなければなりません。

コンビニ本部・加盟店が今抱えている大きな問題は、競合コンビニ店との競争激化と人手不足。

新店の勢いに呑み込まれないためにも、スタッフを戦力化し、退職者を出さないようにすべきです。人財不足の悪循環サイクルに陥るより、人手不足でも育成力で数少ない戦力を経営参画させるために、先を見た仕事をまかせ体験させることで個店独自の店舗力を養うことが可能になります。

コンビニ研究家 田矢 信二

大阪府生まれ。幼少より実家のおもちゃ屋を手伝いながら商売を学ぶ。CVSチェーン本部で業界1位セブンイレブンと業界2位ローソンにおいて、現場経験を積んだ後にコンサルタント会社も経験。コンビニ研究家として、店舗ビジネス業界へ「人」に関連する育成テーマにて講演・研修には定評がある。コンビニをテーマにテレビ・ラジオにも出演。著書に「セブン―イレブン流 98%のアルバイトが「商売人」に変わるノート」(TWJ BUSINESS)がある。