株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2016-05-23 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

「繁盛店のはずなのに売上が上がらない!」と思ったときに試したい改善法2つ

 このコラムのポイント

「おひとりさまが多いのに4人掛けテーブルが多い」、「注文したものが届くのが遅い」―おそらく飲食店などに行かれた時誰もが出くわしたことがあるシチュエーションではないでしょうか。 人はたくさん入っているのになぜか売上が上がらない・・とお悩みの方は、効果的な客席配置や回転数を高める方法についてこのコラムを読んで改善していきましょう。

フランチャイズWEBリポート編集部


一見繁盛店なのに利益が上がらない理由とは

「そこそこお客様は入ってるんですけどね~でもなかなか利益が上がらないんです」

と、あるチェーン店のオーナーが嘆いていました。
このお店は、郊外の幹線道路に面したカジュアルイタリアンの路面店。
客席数は、80席有り、十分な規模のあるお店です。
日祝日のランチタイムには、駐車場に入りきらないお客様があきらめて素通りしてしまうほど繁盛しています。

しかし、残念ながらある売上のラインを超えることが出来ず、経営的にはギリギリの苦しい状態が続いていました。

私はオーナーの相談を受けて、ある日曜日に一日中お店を観察することにしました。
すると、下記のような問題が見えてきました。

1.ピーク時に80席全てが埋まっているわけではない
2.注文後の料理提供時間が遅い
3.食後のデザート提供時間も遅い

メニューにもいくつかの問題点は見つかりましたが、それ以上に「キャパシティ」の問題がかなり大きいと考えたので、まずはそこから手をつけることにしました。

すべての客席を活かせていない(2人客が多いのに4人席が多かった)

結論を先に言うと、この店は、80席の客席を十分に活かせていなかったのです。この店は4人席用の客席が多く、2人客だと2席が死んでしまっていました。

ビジネス街の飲食店の場合は、お一人様や2人客を最初から想定してレイアウトを考えることが一般的ですが、郊外型はファミリー客を想定して、4人席を中心にレイアウト設計をするのでこう言うことになってしまったのでしょう。

しかし、この店は、日祝のランチタイムでも意外と2人客が多かったのです。恐らく、周辺商圏の住宅状況や道路の性格からそのような客層になったのでしょう。

こう言うときには、客層を変えるのか、受け皿を変えるのか、どちらかを選ぶ必要があります。

長期的には、客層を変えていくようにメニュー構成を変えて行くのが良いのですが、まずは、その前に受け皿ともうひとつの問題を解決しておく方が先決だと、私は考えました。

客席を活かすための対応策2つ

1.2人席を増やした

最初に行ったのは、客席の満席率、つまり80席に利用効率を高めるために、一部の4人席を2人席と2人席の組合せが出来るように、テーブルを入れ替えていただきました。

もちろん、全ての席をそうすることは出来ませんでしたので、40テーブルの内の10テーブルだけ2人席にし、席数を変えずに、テーブル数を50テーブルにしたのです。
おかげで、2人客をその席に案内することが出来、満席率は大きく上昇しました。

この作業は、お金さえ掛けることが出来れば、発注して一晩の工事で作業完了が可能です。

こう言う考え方を、「客席レシオ」と言います。
ピーク時の同伴者数に合わせた、客席レシオでレイアウト設計をしないと無駄が多くなりますよ、と言うお話です。

2.キッチンの生産能力(回転数を高める)

つぎは、キッチンの生産能力。

これが一番重要なポイントです。
お店のキャパシティを考えるとき、一般的には駐車台数や客席数と言った、物理的なキャパシティに眼が行きがちですが、もうひとつ「時間的なキャパシティ」も重要な要素なのです。

「時間的なキャパシティ」・・・つまり「客席回転数」のことです。
11時から14時までの3時間のランチタイムで、何回転させることが出来るか?を考えるのです。

では、どうすれば回転数を高めることが出来るのでしょうか?

答えは、「空白時間」と「いごこち」です。
今回は、「空白時間」についてお話ししましょう。

私の言う、飲食店における「空白時間」とは、お客様がテーブルについて食事をされていない時間のことを言います。

お客様がテーブルに着いてからの流れ

1.客席に案内されて着席する ~ 注文を受ける
2.注文を受ける ~ 料理が運ばれる
3.食事中
4.食事終了 ~ デザート、ドリンクが運ばれる
5.デザート中
6.デザート終了 ~ 席を立つ

これらの時間の中に、たくさんの「無駄な空白時間」があるのです。

もしも、ご注文を受けるまでの時間が長かったら・・・
もしも、注文時間そのものが長くかかったら・・・
もしも、調理時間が長くなり食事が届くまでの時間が長かったら・・・

などなど、逆にこれらが、1秒でも1分でも早くなったら、自然と滞在時間は「快適かつ短く」なるのです。これらを実現しようと思ったら以下6つの対策を練りましょう。

回転数を上げる対策6つ

1.ホールスタッフ数の充実
2.素早く判断できる見やすいメニューリフレットとオススメ
3.オーダーエントリーシステム
4.キッチンスタッフの数と素早い動き
5.出来上がった料理の素早い提供
6.タイミングの良いデザートのお届け
7.丁寧に許可を取る空き皿下げ

これらが、きちんと対応出来ていなかったら「無駄な空白時間」がドンドンと増えていきます。 特に、キッチンの製造能力が低かったら、そこから先はドンドンと「無駄な空白時間=無駄な滞在時間」に繋がるのです。

そうして、回転数が少なくなり、送客数が増えない原因となるのです。

メニュー変更・値上げ・値下げ前に「キャパシティの問題がないか意識を

お客様が快適に食事時間を過ごされているお店は、必ず繁盛しています。
その結果、客席数をフルに活用出来ているのです。

反面、「無駄な空白時間」を過ごさせて回転数を落としているお店は、お客様の足が自然と遠ざかります。
その結果、客数を確保できずに、苦戦することになります。

世の中には、このようなキャパシティの問題に気がつかずに、単純にメニューを変えたり、値上げをしたり、クーポンをばらまいたりして、自分で自分の首を絞めているお店がたくさんあります。

あなたのお店がそうならないことを切に願っております。

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。