株式会社エムズ 代表取締役的羽 一郎
2016-07-12 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社エムズ 代表取締役 的羽 一郎

兵庫県の商業地での居抜き出店とフランチャイズ活用

 このコラムのポイント

店舗型のビジネスを立ち上げる際に非常に重要な物件選定。更地に立てて用意するのか。居抜き物件を利用できるのか。これにより初期投資額が大きく変わってきます。ここでは居抜き物件を活用するメリット・デメリットを解説いたします。

フランチャイズWEBリポート編集部


事業を始めるにあたって投資額と資金調達をどうするかということは、非常に大きな問題です。

とりわけ、飲食業など設備投資に多額の費用が掛かる業種での起業は、いかに初期投資を抑えることができるかということが、事業の成否に直結します。できることなら、少しでも投資を抑えたいと思う人は多いでしょう。

今回は、居抜き出店について考えてみましょう。

居抜き物件が発生する理由

私は、これまでにおよそ400店舗の飲食店の新規開業に携わってきました。郊外店のように、更地から建物を建てて内装・設備を施工することもあれば、
駅ビルやショッピングセンターのように、建物を用意してくれていて、内装と厨房を設置するだけのような場合も多くあります。

中には、開店して日が浅いのに撤退してしまう物件もあります。内装や厨房設備も新しく、看板さえ書き換えればすぐにでも営業できる店舗にも、数多く出会いました。

営業不振で撤退する場合、テナントは、自分で投資した内装や厨房設備などを撤去して原状回復して地主さんに返す必要があります。これは、開店時に大きな投資をしてまだ十分に投資を回収していないのに、撤退するにあたってさらに費用が発生することになります。

テナントにとっては、まさに、泣きっ面にハチというところです。

地主さんにとって、一番困るのは、テナントが撤退して後継テナントが決まらず、賃料が入ってこないことです。
後継テナントを探す際に、物件内に厨房などが残っていると後継テナントの業種を狭めてしまいかねないため、何も無いスケルトンの状態で募集するのです。

しかし、もし残った内装や設備をそのまま使いたいというのであれば、無理に撤去してもらう必要はありません。

地主さんは後継テナントが見つかり、撤退するテナントは撤去費用が必要なく、新しいテナントは出店費用が抑えられ、まさに『三方良し』です。

居抜き物件の流通について

では、居抜き物件はどのように流通しているのでしょう。

大手の飲食企業は、自分で後継テナントを探してきます。例えば、居酒屋チェーンの店舗開発担当者は、撤退が決まった時に、焼肉チェーンの店舗開発担当者に情報を流したりします。

なぜそんなことをするかというと、一つのビルに居酒屋が複数あって互いに競合していることはよくあります。すると、居酒屋にとっては立地が悪い場合でも、まだ出店していない焼肉店にとってはいい立地だったりするのです。

焼肉チェーンは、居酒屋の内装をそのまま使ってロースターと排煙設備だけを設置して出店することが可能になるのです。

開発担当者は、普段から情報交換を活発にしていますので、撤退物件の情報交換なども盛んに行っているのです。

いい物件は、不動産屋に出回る前に決まることが珍しくないのです。

居抜き出店のメリット・デメリット

投資を抑えられるという意味では、居抜き出店は大いにメリットがありますが、一方でデメリットについても考えておく必要があります。

撤退した理由が何かということは、最大のリスクです。

味や接客、清潔さという飲食店の基本に問題があった場合は、問題点をクリアしていれば成功する可能性は高まります。

その一方で気が付かない立地の悪さということもあります。

出店を決めるときには、何度も現地を見に行くと思います。それでも、見落とすことはたくさんあります。夜のピーク時に賑わっていても、客足が途絶えるのが意外に早いということはよくあります。
若い人が多い立地だと思っていたのが、大学の長期休暇の時は、若者の姿がめっきり減るなどということもあります。

それらの立地の悪さを見逃していると、せっかく出店したのにあえなく撤退することになるのです。

そして忘れてならないのが、自分が撤退するときの条件です。
出店するときに残置されていた内装や設備をそのまま引き継いだのですが、撤退するときは、すべて撤去してスケルトンにするという契約も珍しくありません。

居抜き出店で成功する仕組み

居抜きで出店するときには、何らかの理由で撤退したというのを忘れずに、投資が抑えられた分、お客様に何を還元するのか考える必要があります。
投資を抑えた分を原価に反映させるとか、手間をかけた料理を提供するとかの工夫を考える必要があります。

少なくとも、撤退した業種・業態より明らかに価値観のある業態である必要があります

フランチャイズで得られるメリット

居抜き出店こそ、フランチャイズのメリットが活かせます。

■めったに出回らない物件情報を持っていること。

■その立地に適した店舗を作るノウハウがあること。

■撤退した理由を冷静に見極めるノウハウと、それをものともしない優れたオペレーションがあること。

それらがすべて備わって、居抜き出店で成功することができるのです。

株式会社エムズ 代表取締役 的羽 一郎

大手外食産業で17年間勤務。沖縄から仙台まで約280店舗の直営店・フランチャイズ店の新規開業に従事。出店戦略の策定から立地調査、新業態開発、不振店の再生、フランチャイズ・オーナーへの経営指導、社員活性化教育など多くのスキルを身に付ける。 2003年に経営コンサルタントとして独立後は、外食産業やサービス業の経営指導を行う傍ら、商業施設の企画、フランチャイズのパッケージ構築、講演等幅広い分野で活躍している。