株式会社エムズ 代表取締役的羽 一郎
2016-10-13 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社エムズ 代表取締役 的羽 一郎

飲食業の永続性について考える 〜食品メーカーの進化と飲食業の停滞〜

 このコラムのポイント

日々の業務に追われ、また現状を問題視することを避けてしまいがちなことは、どこの業界においても、耳の痛い話です。今回のコラムでは、飲食業が時代の変化に適応してきた歴史を追いながら、停滞する飲食業界が、飲食店が「今」動きはじめなければならないことを説きます。

フランチャイズWEBリポート編集部


飲食業で独立する場合、業種・業態の選定は非常に大きな要素になります。独立を希望する人は、どういう基準で業種・業態を選んでいるのでしょうか。
・自分の好きな業態だから
・小さな店舗で営業できそうだから
・周辺に同じような店がないから
ほかにも理由はたくさんあります。
一番大事なことは、その業種・業態でいくら売れるのかということです。そして、その状態が永く続くのかということです。
今回は、飲食業の永続性について考えてみましょう。

競合の変化

飲食業における競合といえば、元々は、同業種でした。
焼肉店なら焼肉店、定食屋なら定食屋。同じ業態で、味を比べたり、ボリューム、価格などを常に気にしていました。一方が値引きすれば、もう一方も値引きするということが多くみられます。

ファミレスが台頭して、メニューの幅が広がると、業種を超えての競合へと移っていきます。それでもまだ、飲食店同士の競合にとどまっていました。

コンビニがお弁当や総菜を売り始めた当初は、飲食店の売上にそれほど影響はありませんでした。作ってから各店舗に配送するため、お客様の手元に届くまでに時間がかかりました。せっかく店舗に行っても、売り切れていることも多くありました。この段階では、店内調理の飲食店を脅かすことはなかったのです。
しかし、コンビニの店舗が増えるにつれ、配送網が充実し、配送頻度の向上に加え、味そのものの向上で、コンビニ弁当は売り上げを伸ばしていきました。品切れが減ったことが、忙しい人たちのニーズに合ってきたのです。

スーパーの総菜部門も内容が充実してきました。
いつの間にか、飲食店の顧客は、コンビニやスーパーに奪われていきました。いわゆる中食の台頭です。
その結果、居酒屋のように、多くのメニューを揃えてそれなりのレベルで運営していた店舗が、軒並み売り上げを落としました。コンビニやスーパーで調理済み食品を買って家で食べれば、同じような料理が安く食べられるようになったのです。

さらに追い打ちをかけたのが、家庭で使う調味料や冷凍食品の進化です。
プロにしかできなかった煮物なども、素人が美味しく作れる調味料もありますし、材料と混ぜ合わせるだけで簡単に調理ができる食材もたくさんあります。冷凍食品の味の良さも、今や飲食店以上のものが多く売られています。

進化し続ける食品メーカー

冷凍食品の進化は、味だけではありません。かつての冷凍食品は、高カロリーで、健康に良くないイメージがあり、忙しい時や食材を切らしたときの助っ人的なイメージがありましたが、今や主役に躍り出そうな勢いです。

冷凍技術の進歩で、種類も増えましたが、健康にも配慮しています。塩分量やカロリー計算もしっかりされていて、ヘルシーさをうたう製品も増えてきました。

停滞する飲食業

飲食業の進歩はというと、それほど進んでいません。
『伝統の味を守り続けています』ということをよく聞きますが、変わらないことを売りにしている店も多くあります。

一般の飲食業にとって、一日の流れを時系列でみると…

朝は昼の開店に備えて分単位で仕込みをしていきます。昼の営業が始まると、少しでも早く料理を提供し、一人でも多くのお客様を迎え入れたいと、まさに戦争のような忙しさです。

昼食時間が終わると片づけをし、手早く自分たちの昼食をすまし、それが終わると、今度は夕食の仕込みです。そして夜のピークを迎え、後片付けをして一日が終わります。

営業時間中は、店から出ることもなく、殆どの時間を立ちっぱなしの作業が続きます。
パソコンの前に座って、じっくりと企画を考えたりする余裕はほとんどありません。それどころか、急にアルバイトが休んだりして負担が増えることの方が多いのが現状です。季節の新メニューを考える余裕もなく、挙句に、毎年使っているカビの生えたメニューを繰り返し使っているのです。

飲食業における進化

飲食業は全く進化しなかったかというとそうではありません。
人件費の削減につながる機器の導入で、注文を聞いた瞬間にオーダーが厨房に飛んだり、テーブル席でお客様が自身でモニターを操作して注文できる店もあります。

調理器具もずいぶん進化しています。
回転寿司でみられるすしロボットなどは、社員が握るシャリと遜色ありません。コンベクションオーブンなどは、一台でケーキからピザ・グラタン、油を使わない揚げ物まで多彩な料理を作ることができます。

従来、手書きで書いていたPOPなども、パソコンで簡単に作れます。

野菜なども、業者が事前にカットしたカット野菜も年間を通じて提供されます。

進化は、調理面だけではありません。
管理面でも、専用のソフトを使えば、売上や原価、人件費などの管理が簡単に行えます。

飲食業も確かに進化してきました。
しかし、これらは多くが専門のメーカーからの提案で、飲食店が自分で開発したものではありません。厨房機器メーカーや食品会社、ソフトウエア会社などが提案してきたものです。

飲食業が進化するために必要なこと

まずは、意識を変えることです。昨日の延長が今日であると思ってはいけません。

世の中は急激に進化しています。そのために、自分たちも変わっていく必要があるという意識を持つことです。

そのうえで、日々の行動、年間の計画、将来への研究を怠ってはいけません。

日常の作業に追われて進化にまで手が回らないというのであれば、進化しそうなフランチャイズに加盟するのも有力な方法です。

株式会社エムズ 代表取締役 的羽 一郎

大手外食産業で17年間勤務。沖縄から仙台まで約280店舗の直営店・フランチャイズ店の新規開業に従事。出店戦略の策定から立地調査、新業態開発、不振店の再生、フランチャイズ・オーナーへの経営指導、社員活性化教育など多くのスキルを身に付ける。 2003年に経営コンサルタントとして独立後は、外食産業やサービス業の経営指導を行う傍ら、商業施設の企画、フランチャイズのパッケージ構築、講演等幅広い分野で活躍している。