株式会社エムズ 代表取締役的羽 一郎
2016-08-16 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社エムズ 代表取締役 的羽 一郎

飲食店で独立!生き残れる業態の見極めとフランチャイズの活用

 このコラムのポイント

独立起業を考える人は、どういう理由で業種・業態を選んでいるのでしょうか。これまでおよそ400店舗の飲食店の新規開業に携わってきた 的場氏が、実際に出会った独立希望者のエピソードを例に、これから10年・20年…長く生き残る業態選びについて、わかりやすく語っています。

フランチャイズWEBリポート編集部


飲食業で独立する場合、どの業態を選ぶのかは非常に大きな要素になります。独立を希望する人は、どういう基準で業種・業態を選んでいるのでしょう。

自分の好きな食べ物だから、小さな店舗で営業できそうだから、調理が簡単そうだから、周辺に同じような店がないから。ほかにも理由はたくさんあります。
事業を始めるにあたって業種・業態をどうするかということは、後の立地条件、資金調達、調理技術など多様な問題に関係してきます。とりわけ、飲食業など設備投資に多額の費用が掛かる業種での起業は、途中で業態を変更するには、追加で大きな投資が必要になることも珍しくありません。

今回は、業種・業態の選び方について考えてみましょう。

独立希望者のつぶやき

私は、これまでにおよそ400店舗の飲食店の新規開業に携わってきました。 法人のチェーン店が多いですが、個人の新規開業にもたくさんかかわってきました。

50代くらいに差し掛かったサラリーマンからも多くの相談を受けました。
50歳といえば、サラリーマン人生も半ばを過ぎ、およそ将来の自分の立ち位置も見えてきます。このまま定年まで無難に勤め上げるのか。60歳で定年を迎え、その後嘱託として給料が下がって65歳まで勤め続けるのか。そのあとはどうなるのだろう。

独立起業すれば、体力の続く限り営業は続けられる。そうは言っても、あまり年を取ってからでは成功はおぼつかない。やるなら気力・体力のある今しかない。 そんなことを考えながらも、成功の確信が持てず、同じことを何度も繰り返し考える人が多いようです。

そんな時に、会社が退職金を割り増しての早期退職を募集し、背中を押される格好で独立・起業を決意された方もいらっしゃいました。

その方が私に言いました。
「飲食業でもやってみようかと思っています」

飲食業でも・・・

自動車メーカーに勤めていた人が、退職して自動車メーカーを起業するとは、まず考えません。しかし、飲食店に勤めていた人が、退職して飲食店を開業するのは珍しくありません。それどころか、飲食経験のない人が飲食店を始めているのも多くあります。

料理を作るだけなら、今は非常に便利な時代です。食品メーカーの作る調味料や加工食品のおかげで、素人でも美味しく作れるのです。

例えば、市販の和風だしで煮物を作れば、それなりに美味しい料理が作れます。焼肉店などで「秘伝のたれ」という表示をよく見かけますが、殆どの場合、市販のたれをベースにしていて、誰にでも簡単にできます。

素人の人が、「これなら自分にもできる」と考えるのも無理はありません。

昔の繁盛店がいつの間にか閉店していた

昔、長い行列のできていたラーメン店が、いつしか行列が短くなり、ついに閉店してしまいました。

こってりしたスープが特徴で、親父さんが一人、カウンターだけの7席の店を切り盛りしていました。
店の前には、待ち客用の丸椅子が置かれ、常に何人かが並んでいました。
狭い店に、一人でも多くのお客さんを入れようとして、隣の客との間隔は狭く窮屈な思いをしていました。しかも、ひっきりなしにお客様が来店するため、掃除が十分でなく、カウンターがべたついていました。それでも、お客さんが、美味しさを求めてやって来ていました。




転機が訪れたのは、近くに、駐車場付きのラーメン店が開店してから…
こってり味のスープが特徴ということは同じでしたが、店内は広く清潔で、あまり待つことなく食べることができました。

味さえ良ければ繁盛したのは昔の話で、店の雰囲気や、清潔さ、接客態度、料理の提供スピードなど、常に向上していなければならないのです。更に、季節ごとの新メニューなども要求されます。

時代は、飲食店にも進化を求めている

10年前の車と今の車では、ずいぶん進化しました。更に、自動運転へと進化しています。時代は、飲食店にも進化を求めているのです。 

勝ち残る飲食店とは…

外出するときに、毎回、弁当を作るのは大変です。
サラリーマンの昼食需要のように、飲食店が無くなることはないでしょう。
外食が「ごちそう」だった時代から、今は「日常食」になっています。
わざわざ外食に頼らなくても、自宅で、美味しいものが食べられる時代でもあります。

今流行っている外食の大手チェーンは、セントラルキッチンや配送網の充実で、非常に安価に提供しています。それも、個人には真似のできないレベルです。
回転すしや焼き鳥店などは「家庭でできない料理」の筆頭です。

焼肉店も、たれは真似できても、後片付けを考えたら、食べに行った方がいいでしょう。
てんぷらやから揚げも、料理のあとの油の処理を考えたら外食のほうが賢明です。「部屋を汚したくない」から外食するのです。

・家庭で手作りするより安い
・家庭では調理が困難(手間がかかる・特別な器具が必要な料理)
・部屋を汚してしまう調理工程がある

こういったニーズを満たす業態が生き残り、さらに、先ほどのラーメン店の例のように、同業で勝ち残らなければなりません。

そこで、ノウハウと経験を持つフランチャイズの優位性がポイントになってくるのです。

編集部より

現在、飲食店の廃業率は非常に高く、開業3年以内に廃業が7割、10年後の継続経営している店舗はわずか1割ほどと言われています。

飲食店が廃業しやすい理由には、
1)人口減少による市場の縮小
2)惣菜・コンビニ・スーパーなどの中食産業、宅配・通販などの台頭
が挙げられ、狭まりゆく市場を生き残りをかけて日々奪い合うという大変厳しい状態にあります。


では、こうした事情のなかで、なぜ飲食業を選び、またどのような業態を選ぶべきなのか。

飲食フランチャイズは、生き残れる特性(例えば、著者は文中で「セントラルキッチンや配送網の充実」と、その優れた流通システムを取り上げている)を数多く備えています。チェーン加盟の魅力は、小規模では叶わない、流通網の充実や業界のノウハウなどを、パッケージで手にいれられることにあります。

当サイトでは37の飲食チェーンを紹介しています。一口に飲食業と言っても、様々な業態があります。できるだけ多くの業態を知り、それらをしっかりと比較し、リスクを最小化を図った上での開業をおすすめします。

 

株式会社エムズ 代表取締役 的羽 一郎

大手外食産業で17年間勤務。沖縄から仙台まで約280店舗の直営店・フランチャイズ店の新規開業に従事。出店戦略の策定から立地調査、新業態開発、不振店の再生、フランチャイズ・オーナーへの経営指導、社員活性化教育など多くのスキルを身に付ける。 2003年に経営コンサルタントとして独立後は、外食産業やサービス業の経営指導を行う傍ら、商業施設の企画、フランチャイズのパッケージ構築、講演等幅広い分野で活躍している。