株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2016-10-02 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

思わず入店してしまいそうになる!繁盛店の「お声がけ」とは

 このコラムのポイント

このコラムでは、繁盛店がもつ『顧客を引き寄せる力』の一つ「ひと」の魅力にフォーカス。店長やスタッフが日常的にできる、お客様を呼び込む「心地いい声かけ」を身につける方法・視点について知ることができます。

フランチャイズWEBリポート編集部


名人からのお声がけ

「こんにちは、松下さん、今日もイイ天気ですね~今夜はキンキンに冷えたビールを用意してお待ちしていますよ~」

ある夏の暑い日、仕事の途中で汗をふきふき、このお店の前を通った時、お店の前を掃除していた笑顔いっぱいの店長に、こんな風に声をかけられました。

この日の夜、私は、迷うことなくこのお店ののれんをくぐり、キンキンに冷えたビールで喉を潤し、昼の猛暑の疲れを癒やしました。


飲食店の入口付近でのスタッフや店長の対応には、5つのレベルがあります。

【1】(最低のレベル) 店頭でお店に少し興味を持っているお客様に「気づかない」
【2】気づいても 入店するまで出てこない
【3】気づくと すぐに飛んで出てくる
【4】あらかじめ店頭で 一生懸命に呼び込みをしている
【5】(名人クラスのレベル) 店頭をゆく人全てに まるでお友達のように自然な挨拶、お声がけをしている

ざっとこんな感じです。

私が、あの日の仕事終わりのリセットにこの店選んだのは、間違いなく昼間に笑顔の店長からベストタイミング、ベストマッチのお声がけをされたからでした。

さて、今回のテーマは「店頭でのお声がけの効果」です。

店頭でのお声がけの効果

ではまず、もう一度先ほどの「店舗入口に対するお店の反応」について考えて行きましょう。

【1:最低のレベル】は問題外として、もうひとつ上のレベルのお店、【2】にある「入店されたお客様にだけ反応するというレベル」のお店って多いと思いませんか?

おそらくは、こう言うレベルのお店が世の中の9割なのではないでしょうか?

これは別に飲食店に限りません。
コンビニエンスストアでも、眼鏡店でも、アパレルショップでも、書店でも同じですね。
ほとんどのお店が、受け身で商売をしています。

もちろん、完全に受け身と言うよりは、看板を出し、店頭にPOPを出し、お店によっては、それを光らせたり動かしたり、音を出したり、臭いを出したり…と、色々と工夫をしているお店が多いですよね。

こう言う工夫はとても良いのです。是非ともやって欲しいともいます。

ただ、これだけで良いのでしょうか?
ちょっと思い出して下さい。

毎週書かせていただいているこのコラムの、第1回目「マクドナルドの元社員が語る!繁盛店になりたい店舗経営者が知るべき「真の売上公式」でお話しさせていただいた、「真の売上公式」をもう一度読んでみて欲しいのです。

そこには、売上とは「客数×客単価」だけではなく「ポテンシャル×吸引力」をよく考えて行こう。と書かせていただきました。

潜在顧客を引き寄せる力

「ポテンシャル×吸引力」とは、商圏内にいる潜在顧客(ポテンシャル)を店舗のお客様を引き寄せる力(吸引力)で売上は決まって来る、という考え方です。

この『吸引力』には、「場所」「ひと」「商品」「価格」「販促」の5つの要素が有り、それらを高めていくことにより「客数」や「客単価」が伸びていく、と考えています。

そんな『吸引力』において、とても重要な要素なのにもかかわらず、9割のお店が忘れていること… それが「ひと」の力なのです。

「ひと」とは、店長のことであり、スタッフのことでもあります。

あなたやスタッフ達が、ほんの少しこの「『ひとの力』の吸引力」を高めるだけで、お客様はあなたのお店に足を運び、お薦め商品を注文し、追加オーダーをドンドン出してくれるようになります。そのうちに、大切な友達にお店のことをクチコミしてくれるようになるのです。
 

「ひと」の力は、店の超強力な武器になる

では、ここで今日のテーマに戻りましょう。

店頭において、この「ひと」の力は、お客様をお店に引き寄せるために超強力な武器になります。

しかし、多くのお店では、POPや看板などのツールに頼り、"迷っている" もしくは "まだなにも決めていない" お客様の「選択決断」の背中を押すこともなく、ただ店内でボォ~っとしているのです。

ところが、わずかですが 繁盛店の店長は、この入口でのお客様の背中を押すお声がけが 非常に上手いのです。
 
だから、ついついその足で入店してしまうのです。また、冒頭の彼のように、私がその日の夜まで忘れずにその余韻を残すような「お声がけ」をするのです。
店頭に、お客様の姿を見かけたらすぐに飛んでいくのも良し、店頭に立って元気に呼び込みをするのも良しです。
 
ですが、呼び込みはフラれる率が高いので、だんだん心が折れてしまうのです。

それならば、チョットだけお店の前に出て、道行く人に毎日笑顔で挨拶をするというのではいかがでしょうか?

これならば、誰でも心折れずに笑顔を維持できるのです。

呼び込みをしていて、気付くこと

実は、冒頭の店長も最初は、呼び込みをしていたのです。

でも、たくさんフラれているうちに "自分がそうされても「入りたい」とは思わないよな…" と考えて、自分ならばどうすれば嬉しくなるかを考えたのです。そして行き着いたのが『ご近所お友達への挨拶方式』なのです。

彼はそれを実現させるために、まずは道行く人全員の顔を覚えてやろうと考えたのです。何度も店前を通るご近所さんや一度ご来店されたお客様ならば、覚えるのはたやすいことです。

そうこうしているうちに、たくさんの人の顔を覚え、毎日毎日、店の前でお客様に挨拶をするのが習慣になったのです。

さて、あなたのお店ではいかがでしょう

いや、あなた自身はいかがでしょうか?

お店の前を通る人たちにチョット挨拶をするだけで、いろんなことに気がつき始めますよ。
お店の中にすっこんでいたら気がつかないようなことにね。

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。