フランチャイズ研究会副会長 中小企業診断士山岡雄己
2012-03-05 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会副会長 中小企業診断士 山岡雄己

開業後のポイント ~失敗しない独立、開業 その3~

 このコラムのポイント

経営者として、開業前に開業後の収支をシミュレーションしておくことは必須です。自営業よりフランチャイズの方が成功確率が高いのは、そのための相談機能としてフランチャイズ本部が存在するからとも言えます。ただし、経営をしているといつでもうまく行くわけでもなくそういった時を乗り越える資金力や精神力も必要です。このコラムでは失敗しない独立開業をするためのコツが書いてあるので、加盟希望者の方必見です。

フランチャイズWEBリポート編集部


最大キャッシュアウトを見積もる

最大キャッシュアウトとは、”開業後にやってくる事業がまだ軌道に乗らない時期における最大の資金持ち出し額”のことです。これは開業後というより開業前の収支計画作成時にしっかり見積もる必要があります。FC加盟の場合は、FC本部から提供される「開業提案書」をベースに、ご自身で改めて開業後何カ月目に最大いくらの持ち出しが発生するのかを計算しておきましょう。この最大キャッシュアウト額に基づいて、それを賄えるだけの運転資金を調達しておく必要があります。
運転資金の目安としては、3ヶ月は家賃と人件費が支払える額とか、1年間は収入がなくても家族が食べていける金額とか、2ヵ月分の売上とか、いろいろ言われていますが、実際は業種業態や個々の状況によって必要な運転資金額は違ってきます。ですから、あくまでも初期投資計画、収支計画、投資回収計画の3つの計画書を作成して、そこからキャッシュフローを計算するようにしましょう。FC加盟の場合はFC本部と相談をしながら、最大キャッシュアウトや運転資金を見積もるとよいでしょう。

キャッシュフロー

「死の谷」を乗り越える

技術系ベンチャー企業は、新規技術とコストの擦り合わせが上手く行かず起業後半年くらいで「死の谷」を迎えるといわれています。一般的な事業においても認知度が上がらないとかリピート率が低いとかの理由で、売上が目標に達せず半年くらいで資金がショートしてしまうケースが散見されます。こういう事態に陥ったならば、予め用意していた代替案を採用するとか状況に合わせて柔軟に計画を変更するなど、臨機応変な対応なしには経営基盤の脆弱な企業は「死の谷」を乗り越えることができません。このような場合にはどのような手段を用いるべきか、経験に照らし合わせて適切なアドバイスをするのがFC本部の機能であるといえます。独立のFC加盟者は、FC本部のSV(スーパーバイザー)に対して、様々な助言を求めるとよいでしょう。
ただし大事なことは、人任せにしないこと。FC本部のアドバイスは聞くにしても、実行するのは経営者本人です。経営は自己責任であることを忘れないでください。また、上手く行かないことを人のせいにしてはいけません。人のせいにして責任転嫁する時間があったら、自分で少しでも状況を好転させる努力をすべきです。

ビジネスはギャンブルではない

ビジネスは確率論です。FC加盟は、事業の成功確率を高めるための有効な方法であると言えるでしょう。ただし、リスクとリターンはバランスがとれているので、FC加盟の場合はある程度の成功確率が見込まれる分だけリターンが限定されています。
そのようなFC加盟ですが、世の中に絶対というものはありません。経営者はFC本部の提供する情報を一方的に受け入れるだけではなく、自ら情報を集めたり人から意見を聞いたりして、できるだけ客観的な判断材料を揃えるようにしましょう。そして最終的には経営者自らが、上手くゆく確率の高い戦略を決断して選択するのです。客観的な判断材料に基づいて主観的に決定する、経営者には論理的思考と洞察力といった2つの思考パターンが必要とされます。 「営々黙々花が咲いても咲かぬでも」 これは、明日香出版社の創業者、石野誠一さんの言葉です。事業というのはとかくいい意味でも悪い意味でも業績の浮き沈みが激しいものです。経営者は、そういった好不況に一喜一憂していたのではとても身が持ちません。坦々と日々の営業を行い、結果を坦々と受け入れる。経営者の最大の敵は「不安」です。時には、出来ないものは出来ない、ゼロからやり直す、などの腹をくくった考え方も必要です。経営者には「胆力」も必要とされるのです。

経営者の人間力

フランチャイズ研究会副会長 中小企業診断士 山岡雄己

1965年、松山市生まれ。1988年、京都大学文学部卒。サントリー宣伝部を経て2002年独立。専門は、フードビジネス、フランチャイズ本部構築、 マーケティング戦略。ラグビーコーチの経験を活かして、流通サービス・飲食チェーン向けの人事制度設計、組織開発、能力開発コーチングにも携わる。現在、法政大学大学院 イノベーション マネジメント研究科 兼任講師。社)東京都中小企業診断士協会 フランチャイズ研究会副会長。