ATカンパニー株式会社 代表取締役浅野 忍土
2015-11-10 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
ATカンパニー株式会社 代表取締役 浅野 忍土

自社の経営戦略を考えるポイントとフランチャイズのとらえ方

 このコラムのポイント

企業の経営幹部層の方には、特に見ていただきたいコラムです。漠然と使っているであろう「経営戦略」の本来の意味とは?、どのように自社を振り返るべきなのか。そして自社の方向性が定まったら知っておきたい「フランチャイズ」はどう捉えるべきか、というような内容がわかります。

フランチャイズWEBリポート編集部


フランチャイズとは企業における「経営戦略」のひとつである

皆さんは、フランチャイズをどのように捉えていますでしょうか?
私はこれまで、フランチャイズコンサルタントとして15年ほど、フランチャイズ展開に携わっていく中、企業経営者の方から頂くお話として一番多いのが「儲かるフランチャイズない?」との質問でした。
このように多くの方が儲かるフランチャイズビジネスを探されています。当然、事業ですから儲けることは重要だと私も考えます。

しかし、ただ儲かることを中心に据えるのではなく、企業であれば自社の置かれた環境や自社が大切にしたい価値観などふまえ、複合的に事業を選定すべきではないかと考え、私は今回のレポートを執筆しました。

結論からお伝えしますと、ビジネスの選定を経営戦略立案にまで昇華させて考えましょう、ということです。
経営戦略の1つとしてフランチャイズ選定を行うことで、これまでと違う次元で自社に合ったフランチャイズ選定が出来る、と私は確信しています。

フランチャイズを戦略立案の観点から見て行きますと、ある会社にとっては、フランチャイズビジネスへの参加は最善の戦略ではないかもしれません。

例えば、店舗ビジネスの多店舗展開と言っても、自社業態による直営展開もありますし、ライセンス展開、暖簾分け、そしてフランチャイズ展開もあります。

こう考えれば、フランチャイズは多数の戦略の中のひとつであり、どんな展開方法が自社に取って好ましいのか考える事が戦略立案の一部となります。

その前に、そもそも経営戦略とは何でしょうか?
ある定義に因れば、

・継続的、競争猶予を達成するためのポジショニングを構築すること
・企業を取り巻く環境との関わりについて、企業を成長に導くために何をどのように行うかを示したもので、企業に関与する人たちの指針となり得るもの

などと定義されていますが、正直分かりません。
凄く難しく書かれているものが多く、理解しがたいのが本音です。

私が代表を務めるATカンパニー株式会社が考える経営戦略の本質について述べたいと思います。簡単にご説明するとこの2つです。

まず「儲かる商品分野をつくる事」。
そして2つ目が「売れる仕組みをつくる事」。

この2つを考える事、満たす事こそが経営戦略であると考えます。
フランチャイズに加盟するという事はこの2つを手に入れる事でもあります。

自社の経営戦略を考える上で掘り下げたいポイント

例えば、あるラーメンフランチャイズを例にとって考えてみましょう。
ラーメンフランチャイズに加盟すると、味やメニューという形で、「儲かる商品分野」を手に入れる事が出来ます。
さらには、立地選定や店舗レイアウト、販促方法として、「売れる仕組み」の提供を受けるのです。
このような定義からも、フランチャイズは経営戦略の1つと言えます。

逆に、今検討しているフランチャイズビジネスが、上記の視点から、何か足りないとなれば、戦略として不十分なのだと判断も出来ます。

次に、その経営戦略をどう立案し、どう選定すべきか?に関して、考えて行きたいと思います。儲かる事が前提であれば、どんな戦略を選択することも、ある種正しいと言えます。
しかし、そう簡単に物事はうまくいきません。

それはなぜか?
選択した経営戦略には、遂行に必要な能力や求められる価値観や考え方が存在するからです。

もう少し深く掘り下げて考えていましょう。

まず、あなたは経営を通じて今後何を実現したいと考えているのでしょうか?つまり、これは自社の経営ビジョンです。

さらに、自社が大切にしている事、自社が重視している事は何でしょうか?所謂、あなたの会社のミッション、理念、価値観は何でしょうか?

この時点で、自社が大切にしているものと、今選ぼうとされている事業の方向性が合致しているでしょうか?

さて、次に考え理解しなくてはならないポイントは、新規事業として参入を考えているフランチャイズビジネスにおいて必要な要素4つです。

・求められる経営能力
・求められる人材能力
・求められる経営スタンス
・求められる経営上の価値観

経営戦略に対する意識を持つ重要性と裏付けるエピソード

経営戦略の意識を持つ重要性について理解を深めて頂くために、女性専門フィットネスクラブを展開している企業の事例をご紹介します。それは私がコンサルタントとして支援をしていたチェーンに加盟していた法人の加盟店様です。

建設業を営むその企業様は、これまでに女性のマネジメントを経験したことがありませんでしたが、新規事業分野を立ち上げるべく急成長している女性専門フィットネスクラブに加盟しました。
本事業の現場人材は女性であり、これまでの男性に対するマネジメントとは異なるマネジメントが必要であることは明白だったのです。

しかし、その加盟店企業はこれまで通りのマネジメントスタイルで、女性に接してしまったのです。
本業の建設業と同じように頭ごなしに叱るマネジメントを実施した結果、その会社の店舗はことごとく立ち上がりませんでした。

多くの企業が参加し成功しているフランチャイズ事業であっても、経営側(加盟店側)が求められる能力を兼ね備えていなければ、もしくは事後的にでも求められる能力を身につけなければ成功できないのです。
その加盟店企業社長は最後まで自社のマネジメントスタイルを変える事を拒絶され、結果、女性専門フィットネスクラブ複数店舗を撤退する事となったのです。

このような事例を鑑みていかがでしょうか。経営戦略としての視点を持って事業を選定すれば、また違った結果をもたらしたのではないかと思います。

ちなみに、この加盟店企業様は別の事業分野に新規参入された際には大きな成功を治めております。それは自社の価値観や求められる能力を発揮できる分野に参入したからです。

以上の話からも、フランチャイズ選定において、経営戦略という視点を持って頂きたいと思い、今回のレポートを執筆させて頂きました。

ATカンパニー株式会社 代表取締役 浅野 忍土

経営コンサルティング会社でフランチャイズ開発に携わり実績を上げた後、2009年ATカンパニー設立。各企業の経営戦略に沿って有望な新規事業を提案。小規模デイサービス事業、乳幼児教育事業など幅広い業種のフランチャイズ企業を支援。支援チェーンの一つ、乳幼児教室「TOE Baby Park」は3年半で、200加盟達成。2009年10~2014年9月までに延べ272件、月平均約5.4件ベースで加盟開発を実現する等、短期間での多店舗チェーン作りを得意とする。