合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表中土井 鉄信
2015-11-23 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表 中土井 鉄信

塾業界にいるなら知っておきたい。成功ノウハウは、生徒との●●にアリ!?

 このコラムのポイント

学習塾オーナー(経営者)や塾業界スタッフの方の役目とは。自身の顧客でもある生徒とのコミュニケーションにありました。一見基本的なことのように思えますが、それは一方的なものであってはいけない・・ではどのように生徒とコミュニケーションをとらなくてはいけないのか。塾開業の前に知っておきたいコミュニケーション方法について教育コンサルタントの中土井氏が解説しています。

フランチャイズWEBリポート編集部


学習塾成功のカギはコミュニケーションにあり!

前回は、教育サービスとサービス業の違いについてお伝えしました。学習塾経営を成功させようと思うなら、学習塾のサービス構造を知らなくてはなりません。前回の顧客の二重性を理解することが、まず最初の一歩です。今回は、もう少し具体的な話をお伝えします。学習塾の仕事に関することです。

学習塾は、教育サービス業です。その中心的な仕事は、コミュニケーションです。教育は、指導する立場の者と指導される立場の者が相互にメッセージを伝え合う活動です。そして、メッセージの発信者と受信者がその都度、立場を入れ替えながら行なわれるコミュニケーションです。あるときは、教師が子どもたちに何かを伝え、あるときは、子どもたちが教師に何かを伝えて、お互いの成長を促しながら関係し合うものです。コミュニケーションなくして教育は成立しないものなのです。

学習塾もその構造に変わりはありません。学習塾で交わされるコミュニケーションの質が、学習塾の成功・不成功を決めるのです。今回は、教師と子どもたちが、ラポール(心と心の信頼関係)を形成するための指導法の一端を考えてみたいと思います。

生徒との相互理解=共感力がポイント!?

子どもたちとラポールを形成するために必要なコミュニケーションの姿勢とはどのようなものでしょうか。それは、高圧的なコミュニケーションではなく、共感的なコミュニケーションです。共感とは、「子どもたちのあるがまま」を感じる姿勢です。子どもが身体で感じていること、耳で聞いていること、目で見ていることを教師が感じようとすることです。

教育の世界は、往々にして建前論が優先します。ルールを守れない子どもに対して、ルールを守らせようとコミュニケーションを取ります。または、ルールを破った子どもには、叱責としてコミュニケーションを取ります。これは、子どもたちにとってみれば、高圧的なコミュニケーションです。子どもが、ルールを守れない理由を受容するよりも前に、建前を優先させるコミュニケーションだからです。これでは、子どもたちの心は、教師に対して閉じたままで、子どもたちの本音を聴くことはできません。

私たち教師は、子どもたちの本音に寄り添い受容し、また教師自身の心を解放して、率直に子どもたちと向き合い、そして、子どもの側に立ちながら、ルールを守ろうとすることの意義を発信していくことです。その際に重要なのが、子どもたちの本音をまずは受容することです。そして、子どもたちの心の中に、「この教師には、本音を言っても大丈夫なんだ」というように、教師に対する安心感が生まれれば、子どもたちも教師を受容してくれるようになっていきます。こういう状態が、良好なコミュニケーション環境なのです。

コミュニケーションは、よくキャッチボールに喩えられますが、ボール(=伝達内容)を自分自身の中から解放し、相手に向かって投げ、相手はそのボールを受容する、そういう一連の流れが良好なコミュニケーションなのです。一方的なものではないのです。

このような双方向のコミュニケーションを取ることが出来れば、相互理解が成立するのです。お互いの心の解放とお互いの心情を受容して、お互いの意志の交換(=相互発信)がなされることが大切なことです。コミュニケーションとは、相手を理解するために行うものだということを私たち教師は理解しておく必要があるのです。相手を理解しようとすれば、相手とのラポールが形成されやすくなるのです。

経営者も講師も、生徒の真の声を読み取れ!

ここで一つ覚えておいて欲しいのが、デノテーションとコノテーションという考え方です。デノテーションは、言葉の文字通りの意味です。コノテーションは、その言葉に含まれるメッセージ(含意)です。

私たち日本人のコミュニケーションは、なかなかストレートに自分の本心を表さないものですから、「デノテーションの奥に自分の本心を隠しているのだ」という考え方を知っていると非常に便利です。言葉の文字通りの意味のほかに、その奥にコノテーションという本心(真意・含意)があるのだということを知った上で、相手の話を聞くようにすると、相手の本心が徐々に聞き取れるようになってきます。

例えば、次の会話では、デノテーションとコノテーションの食い違いが見られます。

生徒:先生、私、数学が苦手なんだけど。
教師:そうだな。お前数学できないもんな。
生徒:だから、苦手って言ってるじゃん。
教師:だから、数学もっと頑張れよ!
生徒:(この先生だめだ!)

この生徒が、なぜ数学が苦手だと教師に言ったのか、この教師は分かっていないようです。子どものデノテーションに隠れたコノテーション(真意)を汲み取れなかったのです。

そこで、この場合は次のようにコノテーションを類推をするべきです。

生徒:先生、私、数学が苦手なんだけど。
教師:そうか。お前、数学で悩んでるんだな。
生徒:うん。
教師:数学は、計算が命なんだ。お前は計算が弱いから、この問題集でもやってみたらどうだ。もしそれで分からなければ、先生が、来週数学の補習をみてやるよ。
生徒:ありがとう!

私たち教師は、基本的に表現の奥に隠れたメッセージを読み取るようにしたいものです。相手の発言の真意と言ってもいいですが、それを読み取ろうとすることが、非常に重要なことなのです。子どもの本音を受容するために、子どもの発言の意図を推測してみてください。

学習塾の中にこのような本音のコミュニケーションが組み込まれるようになれば、学習塾が生徒の心の居場所になり、生徒が生徒を呼んでくるようになるのです。

図:子どもの「言葉・態度」から「真のメッセージ(含意・真意)」を読み取る

・デノテーション—言葉の文字通りの意味。
・コノテーション—その言葉に含まれている、もっと広い意味。(含意)
※コミュニケーションにおいては含意が伝わりやすい。

「どんな目的の発言なのか?」と意識することで、コノテーション(真のメッセージ)を聞き取れるようになります。

合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表 中土井 鉄信

教育機関NO.1クラスのコンサルタント。学習塾における運営コンサルティングの依頼は、規模も、指導方法もニーズも様々であるが、的確な判断力と、データ分析力で今までに携わった学習塾は全国津々浦々80塾以上。 在籍数減少など苦境に陥った多くの学習塾の再建を成功させた手腕と、歯に衣を着せぬ人間的な魅力で、全国の教室オーナーからの信頼は厚い。また、私立学校のコンサルティングや全国各地の教育委員会での講演や管理者対象研修などの依頼も多く、日々、全国を飛び回っている。