株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2016-02-28 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

マクドナルド元店長に学ぶ。人気店を作るための「PDCAを回すコツ」

 このコラムのポイント

店舗経営にかぎらず、ビジネスで重要な「PDCAサイクルを回す」ということ。特にP=PLANに時間をかけることの大切さについて語られたコラムですが、これによって無駄を減らす効果があるのです。 そして効率的にPLANを計画するための秘訣について解説されているのでチェックしてみてください。

フランチャイズWEBリポート編集部


全国の店長・オーナーさん。PDCA、本当に回せていますか?

「PDCAを正しい順番でまわし続けている店長、オーナーの方は手を上げて下さい」

セミナーなどで、この質問をすると、手を上げて下さる店長やオーナーは、だいたい100人にひとりかふたり。
セミナー冒頭でのいきなりの質問ですので、パッと反応して手を上げるのにはまだ抵抗はあるかとは思いますが、それにしてもこの数、かなり少ないと思いませんか。

このコラムを読んでいる店舗経営者さまはいかがでしょうか?
PDCAを正しい順番でまわしていますか?

PDCAとは、PLAN(計画)、DO(実行)、CHECK(評価)、ACTION(改善)と言うビジネスの世界では多くの方が知っている、「仕事の順番」の基本中の基本です。

多くのビジネスマンがこのPDCAを正しく回しているつもりで仕事をしています。しかし、実際は全然回せてはいないのです。

店長やオーナーの皆さんもそれを自覚しています。

だから、手を上げられない・・・
だって、PDCAを正しく回せていたら、もっと成果が出るはずですからね。

PDCAを回せない店舗経営者の原因4つ

では、PDCAはなぜ正しく回せないのでしょうか?その理由は、PDCAの各フェーズ毎に存在します。

1)PLAN・・・計画に根拠・裏付けがない
2)DO・・・思いつきのアイデアなので、やってはみてもすぐに三日坊主
3)CHECK・・・「成功」を数値で定義つけしていないので良かったのか悪かったのかがわからない
4)ACTION・・・改善のつもりが実は前回と同じことを繰り返している

さて、あなたは、ここまで読んで胃が痛くなっていませんか?
もしも、思い当たる節があるのでしたら、覚悟を決めて続きを読んで下さい。
読んでいただければ、きっと、どこに問題があるのかが見えてくることでしょう。

「根拠のある計画立て」は時間がかかるが目標達成にかかせない

PDCAのPLANの段階で行うことはとてもたくさんあります。

よく「良い計画が出来上がったら、それはもう8割は目標を達成したこと同じだ」と言われます。逆に「状況は刻々と変化するので計画など立てることは無駄だ」と言われる方もおられます。

私はこのように考えています。

『根拠のある計画』を立てているからこそ、状況の変化に柔軟に対応出来る!

「根拠のある計画」とは、「調査」「分析」「仮説」「検証」「想定」「目標」「戦略」「戦術」「担当」「行程」などの要件が明確になっている「計画」のことを言います。
これだけの要件が明確に決まっていると、「状況の変化」に柔軟に対応出来るようになります。

ところが、計画には「思いつき」「思い込み」「過去事例」「他人事例」「習慣」などで立てたものもよくあります。
これでは、深く考えていないため、第2案や回避策などが出てきません。だから、原案に縛られてしまい問題が起きたときにその場でフリーズしてしまうのです。

ただし、「根拠のある計画」を作るためには「時間」「労力」が必要になります。
特に、きちんとしたPDCAに始めて取り組むときは、「調査」に時間がかかります。
分析の仕方や戦略の立て方がわからないともっと時間がかかります。

「スピード重視」を経営方針で謳っている会社の一部は、ここでこの「PLAN」を面倒に感じます。
これは「真のスピード重視」ではなく、「見せかけのスピード重視」です。

「真のスピード重視」を理解し、実践している会社は、この「PLAN」に時間を掛けることの目的とその効果を知っています。その効果として、最もわかりやすいのは、「PLANをきちんと作ると『やり直し』をしなくて済むようになる」、と言うことです。また「軌道修正」がしやすいという効果もあります。

不振店は「根拠のある計画立て」ができずやり直しにコストをかけている

仕事をする上で最も非効率的なこと、最も疲れること、最も意気消沈してしまうことは「やり直し」なのです。
いくら「スピード重視」で仕事をしていても、「やり直し」をする回数が多かったら、そして、せっかく「やり直し」をしても、また上手く行かなかったら・・・「労多くして功少なし」となるのです。

時間と労力を掛けて「根拠のある計画」を立てると、この「やり直し」が、大幅に削減できます。
もちろん、上手く行かなくなることはあります。

しかし、そんな時でも「根拠のある軌道修正」が出来るので、「再びやり直し」となる可能性が減るのです。

不振店や不振企業の多くは、この「やり直し」による「時間」「労力」「コスト」の無駄が非常に多くなっているのですが、なかなかそこに気づいていません

損益計算書を作るときに「やり直し」という勘定科目でその問題を集約したらわかりやすいんでしょうけどね。

「根拠のある計画」を立てるためのPLANを叶えるための順序とは?

では、「根拠のある計画」を立てるためのPLANとは、具体的にはどういうものなのでしょうか。

それが、前回お伝えした「現在地を知る」という作業になります。

前回は、「現在地」とは「お店の強み弱み」を知ると言うことだ、と簡単にお伝えしました。
「お店の強み弱み」の元になる考えは、コラムの第1回でお伝えした「新・売上公式」で図ることになります。

「新・売上公式」の「吸引力」については、このコラムが先に進むにつれてもっと詳しくお話しする予定ですが、いまは、第1回のざっくりとした内容だけもう一度見直しておいて下さい。

さて、この「新・売上公式(ポテンシャル×吸引力)」から「お店の強み弱み」を見つけ出すには、「店長による自己評価」「お客様による評価」「スタッフによる評価」「上司による評価」「データによる評価」が必要になります。

店長が知っておきたいお店のための「自己評価項目」

「店長による評価」とは、店長自身が、お店の「ポテンシャル×吸引力」についての情報や評価などを、どこまで細かく把握しているかを自分で自分を評価するのです。

例えば、私の研修では下記のような質問に対して店長に自己評価をしてもらっています。(注:飲食店のケースです)

ポテンシャルについて

1)商圏について何をどの程度把握していますか?
2)商業施設の年商、売上動向、年間来店者数、年間利用駐車台数を知っていますか?
3)メインターゲットはどこにいるどんな人でその人達は商圏内に何人いますか?
4)お客様の平均来店頻度は何回ですか?
5)新規のお客様の割合は何%ですか?
6)わざわざ来店のお客様とたまたま来店お客様の割合はそれぞれ何%ですか?
7)また来たいと思っているお客様の割合は何%ですか?
8)友人知人に紹介したいと思っているお客様の割合は何%ですか?
9)お客様があなたの店を選んだ決め手を知っていますか?
10)あなたの店の売り上げに影響を与えるライバル店はどこに何店舗ありますか?

立地について

11)商業施設の中で一番人が集まる場所からあなたの店は認識できますか?
12)店舗の側面20mからお店や看板は認識できますか?
13)店舗前の通行人数を平日同様日曜の朝昼夜で把握していますか?
14)商業施設内のお店が見ない場所でのお客様の認知度は何%ですか?
15)お客様が店名を正確に読める割合は何%ですか?
16)商業施設内にお店への誘導看板はありますか?
17)商業施設内の人の流れを把握していますか?
18)店頭のショーケース、POP、マット、看板、ガラス窓などは汚れ破損がなく美しい状態ですか?
19)客席、POP、メニュー、照明、床、インテリア、空調などは汚れ破損がなく美しい状態ですか?
20)厨房、デシャップ、バックヤード、裏口などは汚れ破損がなく美しい状態ですか?
21)クレンリネスの問題を発見、指摘されたときはすばやく改善されていますか?
22)スタッフのユニフォーム、身だしなみ、髪型、化粧などは清潔で好感の持てるレベルですか?

商品について

23)商品はオリジナル性が高く魅力あるものですか?
24)全スタッフが商品情報について詳しく説明できますか?
25)味見チェックは責任者が毎日行っていますか?
26)スタッフにより商品の製造にムラはありませんか?マニュアル化標準化はされていますか?
27)スタッフに対する調理の技術トレーニングは行われていますか?
28)衛生基準は高いレベルで維持できていますか?
29)厨房機器は適時メンテナンスされ不具合の無い状態を-維持できていますか?

お客やスタッフの声、統計データなどを参考に戦略戦術を立てること

他にも、「ひと・スタッフ・店長」について、「価格・販売促進」について細かな質問に答えていくことで、自分の店の「店舗力=現在」を知る作業を行うのです。全部で100問近くあります。

実際には、これらの質問に答えるには、事前に「お客様へのインタビュー・アンケート」や「スタッフへの満足度調査や面談」なども必要になります。

またPOSデータの分析や、商圏人口などの統計データの収集も必要です。

チョット面倒に感じるかも知れませんが、これらをきちんと行うことで、根拠のある「強み弱み」が具体的になって来るのです。そして、その「強み弱み」を元に、今度は「戦略戦術」を立てて行きます。

マクドナルドで行われていたローカル戦略の実例とは

私がいた時代のマクドナルドでは、店長はこの「戦略戦術」を立てることにかなりの労力を使っていました。
新人店長時代は、先輩や上司からこれを徹底的に鍛えられました。

今も、この「戦略戦術」は立てているようですが、企業としてグローバル志向が高まっているせいか、ローカル戦略についてはあまり重要視されていないように思います。
それが、今の不振の原因の1つでもあると思うんですけどね・・・

ただ、昔も今も、自店舗およびローカルエリアの戦略をきちんと立てて実行しているフランチャイズオーナーは存在します。

そんな彼らは、自分たちの店舗力や足下商圏をしっかりと見た上で「根拠のある戦略戦術」を立てて実行しているので、地元から愛される無くてはならないお店となっているのです。
ローカルチェーンというのは、この「戦略戦術」を持って実行してこそ成功するのだと思います。

次回は、ローカルで成功している彼らがどのようにして「強み弱み」を戦略に結びつけているのかについてお話ししましょう。

お楽しみに。

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。