合同会社FMDIフードビジネス多店舗展開研究所 代表坂本 和彦
2016-03-21 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
合同会社FMDIフードビジネス多店舗展開研究所 代表 坂本 和彦

フードビジネスのプロが解説!人不足を解消する「IT」「IOT」事情

 このコラムのポイント

「IT」が進展した「IOT」。こうした先端技術が発展することで人不足改善に役立つことをご存じでしょうか?作業の効率化でGDPを上げ、各店舗や業界、ひいては日本の経済発展につながります。 そんな先端技術について、フードビジネスのプロである坂本和彦氏に語っていただきました。

フランチャイズWEBリポート編集部


「IT」が今後の日本GDPを変える!?

「政府はGDPの7割を占める日本のサービス業の成長力強化に向けた包括的な対策を打ち出す、日本経済の長期低迷はサービス業の生産性の低さが原因であると分析しそのテコ入れが急務と判断した。」
先日の日経新聞にこんな活字が躍っていました。

そのための施策の一つとして「補助金を新設 → IT導入などを支援」とあります。中堅・中小のサービス業を中心に上限500万円の補助金制度を新設、また金融機関からの融資の信用保証枠を2倍に増やすなどの施策を打ちだしているのです。

少しさかのぼる事、昨年2月の日経ベリタスの紙面に「日本のサービス業が日本を救う」というような特集がありました。

各国の労働生産性を比較した時に特に米国の51米ドル、日本の27米ドルと約2倍の開きがあると指摘しています。

その大きな要因は、安価な労働力の確保でビジネスを組み立て生産性の向上の努力を怠ってきたことだと厳しく指摘しおておりました。そしてその解決策として「IT」を活用することであると結論付けています。

すべてのコストが上昇する中、余地があるとすれば確かに、米国の半分である労働生産性を米国並みにできれば大きな収益改善の可能性があるといえます。

人手不足にあえぐ外食業界の切り札になる!?IOTとはなにか

「IT」は情報技術です。その進化が「IoT」インターネット・オブ・シングス(インターネットと物の融合)へと進みます。 

まさに「ムーアの法則」通りの進化をとげる「IT」。ここ何年かで爆発的な進化です。ICチップの容量の進化が倍倍で進むわけです。一気に大容量のデータの処理が可能となりました。その代表的なのがセンサーです。

今、世界中で100億個のセンサーが年間使われています。「IoT」ではその100倍1兆個のセンサー情報を活用して社会に役立てようとしています。それをつなぐのがインターネットという事です。1兆個のレベルは患者の錠剤のセンサーで正しく飲んだか確認できるレベルと言っています。

ホットなところでは車の自動運転などが話題となっていますが、世の中を大きく変えるであろう事は間違いないですし、我々の生活にも無縁ではないという事です。インフラが変わっていくんですから。

その中で、フードビジネスにおいて生産性の向上は避けて通れない事です。その切り札は「IoT」になりえます
外食のシステムは大きく進化しています。しかし、まだ生産性が低いと指摘されています。

インターネットとの融合で、お店そのものの概念が大きく変わるかもしれない。世の中全体が「IoT」で変わろうとしている時、フードビジネスだけ例外ではいられないのです。

IT、IOTが外食業界にもたらす4つの効果

1.売上に貢献

お客様を店舗に誘導する情報発信は、すでにスマートフォンを通じて始まっています。

よりきめ細やかな顧客対応が可能になります。今まで一番の金食い虫であった広告宣伝が格段にコストパフォーマンス的に向上するでしょう。店舗ではスマートフォンが商品案内までしてくれます。もちろんロボットだって負けていません。

タッチパネルによるオーダーエントリーは標準化されるでしょう。

2.金融との融合

いわゆる決済システムです、お客様は現金レス、そうですスマホで決済が出来ます。

この研究はかなり進み現実化しつつあります。タッチパネルでのオーダーエントリーと決済が同時に行われるわけです。

ここは、欧米アジアのファーストフード等ではかなり普及してきています。 管理面の請求支払い業務もすでに電子化されてきています。その専門のシステムが販売されています。

もう、紙の請求書が届く時代ではなくなってきているんです。

3.店舗運営管理システムへの貢献

いわゆる労働生産性のアップに直接つながります。

主な物では受発注システムがあります、すでに自動発注システムを売り出している会社もあります。このシステムの導入で食材ロスが売り上げ比5%削減を達成したと言っています。その他の管理システム、シフト管理、勤怠管理始め店舗内管理システムです。

その次にあるのが教育システム、ここもすでにマクドナルド始め外食大手はスマートフォンやiPadなどによる教育システムの構築を進めています。紙のマニュアルはなくなりつつあります。

4.スマートストアで店舗の一元管理が可能になる

店舗の機器が全てインターネット経由で本部で一元管理されます。

現在、セブンイレブンは全店の機器の状況は本部で全て確認できる体制がすでに出来上がっています。遠く何百キロも離れた店舗の冷凍庫の扉が開いているのがわかるんです。

また、セキュリティー面でも、各店舗のリアルタイムの画像が一元的に管理でき、双方向のコミュニケーションまで可能です。警備会社でもシステムを開発しています。

もちろん店造りも、お客様の行動データ(いわゆるビックデータ)の解析に基づいた店づくりに変わります。

大手量販店はお客様の行動解析から店舗の配置レイアウトを考えているようです。
効率的な店づくり、と保守管理の効率化、エネルギーの効率化を図ります。

人にしかできない仕事がある一方で、効率化のためのIOT対策も必要

日本の製造業が世界でも屈指の高生産性を誇っていることを考えると、サービス業でも多くの可能性を感じます。生産性向上をはかった効率的な店舗運営が求められますし、できないところは退場を余儀なくされるでしょう。

しかし一方で「IT」「IoT」ではなく、人間にしかできない重要なこと―そうです。お客様に満足していただくためのサービスにより特化して強化するために使うということを忘れてはいけません。

やっぱり、人の手のぬくもり。優しい笑顔がフードビジネスの宝であることが再認識されると思います。

人にしかできない部分に、より特化して力を注げるように「IoT」を活用する工夫が問われてくることでしょう。

老舗と言われる店舗でも、表面上は格式のある雰囲気であってもその裏側では「IT」「IoT」で武装されたシステムで固められているんです。そして伝統的なサービスを提供していける。そこに対応していくことがこれからの100年企業を育てていくことになるのではないでしょうか。
 
人がいない、人が集まらないと嘆いていても解決にはなりません。情報を集めて、自社ではどこからできるのか検討を今から始めても決して遅くはないでしょう。ある意味でナショナルチェーン等を除いては横一線でしょう。 どんどんと新しい技術が生まれてきます。

以前と違って外食専門の情報システム会社が多くなってきています。当然コストもかかる話です、慎重に計画的に考えてはいかがでしょう。強固な骨太な経営体質を目指したいものです。

合同会社FMDIフードビジネス多店舗展開研究所 代表 坂本 和彦

フードビジネス勃興期の1980年より外食大手チェーン企業の日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社で30年以上に渡りフードビジネス、フランチャイズビジネスの最先端で数々の経験を積む。その後SVとして多店舗展開のための多くの重要なポイントを習得し、フランチャイズシステムを学ぶ。約7年間で店舗開発部門の責任者、執行役員として店舗開発戦略の立案と実行に携わりフードビジネスの事業拡大の基本である多店舗展開の重要性と課題を体験。2015年3月、合同会社FMDIフードビジネス多店舗展開研究所を設立。経営コンサルタントとして活躍。