合同会社FMDIフードビジネス多店舗展開研究所 代表坂本 和彦
2016-04-11 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
合同会社FMDIフードビジネス多店舗展開研究所 代表 坂本 和彦

吉野家にファミレス、チェーン店のちょい呑みビジネスが好調な理由

 このコラムのポイント

2015年頃からメディアでも話題にされ始めた「ちょい飲み」。チェーン店の居酒屋などが苦戦する中、吉野家など外食業界がはじめたちょい飲みスペースの提供が好調な様子です。今回はそんなちょい呑みビジネスがどのように盛り上がっているかの理由を探るべく、実際の人気にせまりました。

フランチャイズWEBリポート編集部


好調ファミレス飲みと居酒屋、ファミレスのこの活気はなんなのか?

夕方、満席状態のファミリーレストラン。皆さんも利用されることがあるかもしれません。
私が先日、打ち合わせで「ジョナサン」に入ったときもほとんど席は満席状態。その光景が非常に興味深かったのを覚えています。

客層は学生の団体15名ぐらい、部活の帰りでしょうか・・食事に余念がありません。そして主婦とおぼしき一団7、8名がビール、ワイン片手にワイワイと。サラリーマンらしきお一人様客がビール片手にピザを頬張る姿も。

その他2~3名の小グループ。子供連れの主婦。居酒屋で子供連れのお客様に遭遇したことはありましたが、高校生のグループと、お酒を飲むお客様の混在する姿は始めて見たように思います。従業員もさほど多くありませんが、料理はしっかりスピーディーに提供されていきます。

提供される商品は、美味しく熱々。価格は庶民の味方と言えるほどのリージナブルさ。グラスワイン¥100です。ファミレス飲みと言われるリーズナブルさ、レストランとしてのそこそこの居住性。コーヒー一杯でも、食事にも、はたまたお酒の需要も取り込んでいます。ファミリーレストランが33月連続売上前年比クリアを成し遂げた一つの要因がここにあります。

ファミレスは主だったブランドはほとんどアルコールを扱っています。以前から取り扱っていたものの、お酒を飲む場所としての認識は薄かったというのが実態ではないでしょうか。ここにきてがぜん注目されてきたというところです。ワインを海外の提携ワイナリーから直接仕入れている会社も現れています。コストパフォーマンスは強力です、特に若者、子育て世代のサラリーマン。お酒を飲む場所としての認知ががぜん上がってきています。

ちょい呑み(ちょい飲み)のファストフードも夜のお客様確保に好機

一方、ちょい呑みのファーストフードです。

ちょい呑みのパイオニア!吉野家の「吉呑み」

先駆けとなった吉野家の「吉呑み」では、オリジナルのおつまみやアルコール類を、お手ごろ価格で数多く取り揃えております。もちろん、牛丼など、吉野家でご提供しているメニューを「吉呑み」で召し上がっていただくことも可能です。店内はテーブル席が用意されています。また、喫煙室を設けて分煙している他、テレビを設置している店舗もあるので、お一人でも、グループでも、気軽に利用できるようです。

1杯200円でビールが飲める!富士そばの「ふじ酒場」

隠れた実力者、富士そばが展開する「ふじ酒場」。現在では都内10店の富士そばでお酒を楽しめるそうです。「ふじ酒場」なら2杯目以降は驚きのモルツ一杯200円。コストパフォーマンス的に優秀で、仕事帰りのサラリーマン客から人気を得ています。

鉄鍋パリパリぎょうざが鉄板!リンガーハットの「ちゃんぽん酒場」

好調さを取り戻したリンガーハットのちょい飲み参戦は意表を突かれた感じがします。居酒屋メニューの充実は本気度を感じます。

その名も「ちゃんぽん酒場」。浅草駅前の店舗が2015年6月25日にオープンしました。1階は通常のリンガーハットですが、暖簾もありどことなく‥・・居酒屋の雰囲気を匂わせています。
通常のビールを置いているタイプの店舗です。4時から2階の居酒屋がオープンします。

2階は全くの居酒屋です。ちょっと昭和のレトロ感がある作りになっています。飲み物はビール、ハイボール、焼酎、サワー系。おつまみは餃子がウリで、何種類もあります(黒豚餃子から、変わり種のつぶあん餃子まで!)居酒屋のおつまみを相当意識しています。本格的に居酒屋に参入です。

店長へのインタビューでは、客数が大きく増え、売上で40%増となっているとのことです。浅草という場所柄観光客も多く外人のお客様も多いということです。

これから「ちゃんぽん酒場」は、積極的に展開されるとのことで、今後に期待をしたいと思います。 

ケンタッキーは「KFC高田馬場店」改装でさらにビール販売強化

以前からトライを繰り返しているケンタッキー・フライドチキンも全国72店舗でビールの販売を開始しています。
以前もビールは一部店舗で販売していましたが道路交通法の変更に伴い、ほとんどの店舗が販売を取りやめた経緯があります。

また新業態として、『大人のためのケンタッキー』として始まった下北沢店での「ROUTE25」の取り組みも終了してしまっていましたが、新たに高田馬場店改装にあわせてアルコール提供にも力を入れ出しています。やっぱり「チキンにビール!!」の組み合わせは王道で、ケンタッキーならオリジナルチキンと生ビールの最強コンビが楽しめます。ちょい呑みをする際のおいしい食べ合わせを提案しているものと言えるでしょう。

居酒屋にない魅力をいかに打ち出すかが外食各社成功のポイント

今後、外食各社の「ちょい飲み」市場への参入が功を奏すか注視したいと思います。売上を大きく変えるには運営効率のアップが必須。

ちょい呑み需要の強化によって、ファストフードの弱い部分でもある、夜の顧客獲得と客単価アップに効果的に作用しそうです。各社ますます工夫を凝らして挑戦してくることでしょう。

外食チェーンがお酒を出して、居酒屋になるつもりなのか。独自の道を模索するのか大きな分かれ道です。独自色を出した、居酒屋にない魅力で頑張って欲しいものです。

コンビニの仁義なき外食化は業態の枠組みを変えてしまう

一方でコンビニ業界も、お酒対応を模索し始めている動きが見られます。コンビニは、外食の庭に容赦なく踏み込んできているのです。

コーヒーは言うに及ばず、フライドチキンからドーナツまで外食チェーンを脅かしています。そして今度は「お酒(アルコール)」。

ミニストップのコンビニ「CISCA(シスカ)」は夕方からお酒対応をはじめています。もちろんコンビニなので、棚には多くの食品(おつまみ)そしてお酒が並んでいます。お酒とおつまみを持ってカウンターへ。ギンギンに冷えたグラス、レンジで温めてくれるおつまみ(グラスと温め代は無料)。そして氷が入ったアイスペールが300円とリーズナブルなサラリーマンの味方です。

今は、コンビニはどこもカウンター席、テーブル席を設置し店内での飲食顧客を取り込んでいます(いわゆるイートイン)。昼時などほぼ満席の状態です。

そんなコンビニがファーストフード同様に夜のお酒ニーズに動き出してきました。もし、フライドチキン、コーヒー、ドーナツ同様にコンビニがアルコール提供を始めたら・・一気に何万店のコンビニですからこれが、外食業界に影響しないはずがありません。

最近の総合居酒屋業態の業績の不振が気になっているところですが、コンビニのボーダーレスな取り組みと、外食チェーンのお酒市場への参入は居酒屋業態にとってはますます影響は大きくなると予想されます。 

総合居酒屋という業態の立ち位置が微妙な感じになってきている感があります。

しっかり食事をしながらお酒を楽しむのであれば、専門レストラン、専門店に軍配があがりますが、「ちょい飲み」はファストフードを中心としたコストパフォーマンスの良い外食店、コンビニが充実してくるとやはり強いでしょう。そんなとき、特色のない居酒屋は‥‥!?

業態の再編が起こる可能性を感じます。特色のない総合居酒屋と言われる業態は先細り状態となり、かつてのデパートのレストラン、ファミレスと同じ道を歩むのかもしれません。

特にチェーンの総合型居酒屋は、コンセプトの再考が求められる局面に近づいています。世の中の枠組みが大きく変わっていくのではないかと私は予想しています。

合同会社FMDIフードビジネス多店舗展開研究所 代表 坂本 和彦

フードビジネス勃興期の1980年より外食大手チェーン企業の日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社で30年以上に渡りフードビジネス、フランチャイズビジネスの最先端で数々の経験を積む。その後SVとして多店舗展開のための多くの重要なポイントを習得し、フランチャイズシステムを学ぶ。約7年間で店舗開発部門の責任者、執行役員として店舗開発戦略の立案と実行に携わりフードビジネスの事業拡大の基本である多店舗展開の重要性と課題を体験。2015年3月、合同会社FMDIフードビジネス多店舗展開研究所を設立。経営コンサルタントとして活躍。