合同会社FMDIフードビジネス多店舗展開研究所 代表坂本 和彦
2016-02-22 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
合同会社FMDIフードビジネス多店舗展開研究所 代表 坂本 和彦

飲食のプロが語る!インバウンド観光客に対応するための多店舗戦略

 このコラムのポイント

「爆買い」という言葉が流行した昨年。東京オリンピックが開催する2020年にも訪日客が見込まれるので、まだまだ外国人観光客のニーズに応える施策を考える必要があるといえます。このコラムでは、飲食チェーンの方が外国人観光客に来店してもらうために対応しておきたいことを解説しています。

フランチャイズWEBリポート編集部


2015年の外食業界はインバウンド需要とシニア向けちょい高需要が下支え

2015年の外食の状況を見ると、インバウンド需要とシニア層が求めるちょっと高価格ないいもの需要が小売と同様に外食の下支えになったと言えます。

一方で若い世代、子育て世代の節約志向がコンビニ、スーパーの中食へ移行し外食を控える傾向が消費の二極化を拡大していると言えます。

外食の業績の下支えとなった、インバウンド観光客はどんな状況だったのでしょうか。

インバウンド観光客事情。45年ぶりに訪日外客数が上回る

日本政府観光局(JNTO)は2015 年の訪日外客数は前年比47.1%増の1,973万7千人で、JNTO が統計を取り始めた1964年以降、最大の伸び率となった。

過去最高であった2014 年の1,341万3千人を600万人余り上回り、1970年以来45年ぶりに訪日外客数が出国日本人数を上回ったと言っています。

主な要因は、クルーズ船の寄港増加、航空路線の拡大、燃油サーチャージの値下がりによる航空運賃の低下、これまでの継続的な訪日旅行プロモーションによる訪日旅行需要の拡大があります。

円安による割安感の定着、ビザの大幅緩和、消費税免税制度の拡充等も増加を後押しした。

市場別では、主要20 市場のうち、ロシアを除く19市場が年間での過去最高を記録し、中でも中国は前年比107.3%増の499 万人に達し初めて最大市場となったと分析しています。

特に中国人の爆買いは凄まじい勢いを見せていたようです。しかし、小売業ではまだら模様の様相であったようです、銀座中央通りに観光バスが隙間なく停車し、そこから吐き出された観光客は、ブランド物店に群がっていました。

あの銀座の中央通りの歩道は中国語一色です、でも全てのお店が恩恵を受けたわけでもないようです。

この爆買いは別にしてインバウンド観光客のお目当は、日本での食事にあるようです。我々も海外旅行時はその土地の美味しい食べ物を期待しますから、それは変わらないと言っていいでしょう。

飲食チェーンがインバウンド需要のため対応したいこと4つ

フードビジネスの多店舗化を目指す経営者の皆様はどう考え、どう対応していくことが必要でしょうか。

旅行者の旅の楽しみは、もちろんその土地の観光が大きいでしょうが、楽しみの最優先位にあげているのが、“食事”。特に日本食は最近の和食ブームもあり人気です。

我々日本人でもそこは変わらないでしょう。旅行に行ってその土地ならではの食事は最大の楽しみではないでしょうか。インバウンドのお客様に我々のお客様になっていただくため、考えなければいけないことがあります。

まずは、どのように我々の店をアピールするか。お店の存在、美味しい料理の存在を知ってもらわないことには、来店してもらうことは不可能です。

1.旅行者向けのガイドブックに広告を出す

そんな中、旅行者向けのガイドブックは非常に有効な手段のようです。もちろん口コミの力は大きいようですが、各国向けに多くのガイドブックが出ています。

Webでも探せますので是非トライしてみてはいかがでしょうか。いかにWebに情報発信するかが大事です。

インバウンド観光客を観察しているとよくわかります。あまり日本人に聞いているというよりは、スマホ片手に行き先を確認しながら行動しています。街角でよく見かけます。そう、Webの情報が彼らをナビゲートしているんです。

2.外国人留学生の力も借りつつ販売促進

そんな中、ユニークな取り組みで成果を上げている事例があります。
今、日本には多くの留学生が来ています、そんな彼らの中には非常に優秀な人も多くいます。でも日本では多くの場合飲食店等の労働力として働いているのが実情です。

この会社はそうした留学生に単に労働量としてではなく、販売促進の一員として頑張ってもらっています

その、留学生氏の出身国の日本紹介のガイドブック等への店舗の紹介を行っています。その国のことはよくわかっていますし、日本を目指す観光客が何を情報源にしているかわかっているわけですから。その効果は非常に大きいようです。来店したお客様対応もポイントを押さえて行うことができます。

3.英語表記を心がける

又、ホームページ等も英語等外交語表記でアピールすることも大事なようです。積極的に情報を発信し、その情報をお客様がSNSで拡散するという図式が多いようです。
来店していただいたときの対応も大事です。少なくとも店舗で英語表記等のメニュー等の工夫も必要でしょう。

4.16億人のイスラム教徒の来日が見込める中での「ハラル食への対応」

もう一つ気になることがあります。それは大きく訪日客が伸びている中でアジアでも訪日客の伸び率が少ない国があります。

中国、香港、フィリピン、ベトナム等が多いところで中国の前年107.3%増からフィリピン45.7%ベトナム49.2%などと大きな伸びを示していますが、マレーシア、インドネシア、シンガポールは伸びの低い国です。シンガポールが35.5%台ですがマレーシア22.4%、インドネシア29.2%と大きく出遅れています。なぜでしょう。

この国の人の多くはイスラム教徒です、日本で食事の不安が大きいため敬遠してしまっているのが一つの要因ではないかと言われています。



それは彼らの宗教上の理由からハラルでないものは口にできないからなんです。
日本に住んでいるイスラム教徒の人が日本で生活していくのに大変なのは何かというと、買い物をするときにその成分表をいちいち確認してから購入しているそうです。しかし日本語の苦手の人はそれすらもできません。ということをいっていました。 

いま、新大久保あたりにハラル食材店が非常に増えてきています。ここではハラルの食材しか置いていませんから、安心して買い物を楽しんでいるようです。

では海外ではどうなのでしょうか、アジア圏でもほとんどハラルマークが付いていますから、彼らはそれを見て安心して購入しているんですね。レストランでも同様とのことです。もちろんお祈りをする場所の問題も同様です。

その体制が不十分な日本は、行ってみたい国No.1でありながら二の足を踏んでしまう国になっています。マレーシアなどは個人所得も高い国です、そして親日的な国です。日本の体制が整ったとき大きな変化が生まれる予感がします。

日本食は大好きです、ラーメン食べてみたい!!これが彼らの声です。特に最近日本食がアジア諸国に進出していますから余計です。

世界人口のうち16億人がいるイスラム教徒の人が今後日本を目指します。楽しく、スムーズに美味しい日本食を味わっていただけるようにハラルへの対応を検討されても遅くはないようです。狙い目は食事と土産物だそうです。

国も積極的に支援を始めています、この機会に多店舗展開を目指す経営者の皆様は是非研究されて他店との差別化を図って見てはいかがでしょうか。

2020年の東京オリンピックも視野に。日本の魅力が伝わるような準備を

何れにしても、このインバウンド観光客の増加は、オリンピックもありますが国の政策もあり続くでしょう。

特に、欧米諸国の観光客と比較すると日本のそれは非常に少ない状況であり、フランスの8千3百万人、アメリカの7千4百万人とは言わなくてもイタリア並の5千万人でも日本の魅力を考えれば不思議ではない数です。
日本の魅力をアピールし、受け入れ態勢を整えることで可能なことでしょう。

観光客に迎合するのではなく、日本のアイデンティティーを大事にしその素晴らしさを感じてもらうことが成功の秘訣ではないでしょうか。

合同会社FMDIフードビジネス多店舗展開研究所 代表 坂本 和彦

フードビジネス勃興期の1980年より外食大手チェーン企業の日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社で30年以上に渡りフードビジネス、フランチャイズビジネスの最先端で数々の経験を積む。その後SVとして多店舗展開のための多くの重要なポイントを習得し、フランチャイズシステムを学ぶ。約7年間で店舗開発部門の責任者、執行役員として店舗開発戦略の立案と実行に携わりフードビジネスの事業拡大の基本である多店舗展開の重要性と課題を体験。2015年3月、合同会社FMDIフードビジネス多店舗展開研究所を設立。経営コンサルタントとして活躍。