コンビニ研究家田矢 信二
2015-11-14 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
コンビニ研究家 田矢 信二

セブン&ローソン出身のコンビニ研究家が語る!日本流コンビニのビジネスモデル

 このコラムのポイント

このコラムでは私たちの生活にも身近なコンビニを「ビジネス」の視点からとらえています。コンビニの出店スピードの早さの秘密やそのために大手コンビニが行っている施策について。コンビニ本部出身のコンビニ研究家、田矢伸二氏が執筆しています。

フランチャイズWEBリポート編集部


コンビニ研究家として連載を開始します!

いらっしゃいませ、コンビニ研究家、店舗育成アドバイザーの田矢信二です。

私は、経営コンサルタント会社を退社してコンビニ研究家、店舗育成アドバイザーとして、コンビニを中心とした店舗ビジネスに関わる皆様に講演及び研修を実践しています。その他、テレビ・ラジオ出演、コンビニ関連の記事の執筆、ブログ、書籍の出版など、積極的にメディア・SNSを活用してコンビニ情報を消費者に発信しています。このコラムもその一つです。
今後「コンビニビジネス・コンビニ商売、経営」に関するテーマで、コラムを担当いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。

第1回は、「日本流コンビニのビジネスモデル」について、お話したいと思います。

コンビニ業界は飲食業界よりも店舗展開のスピードが圧倒的

コンビニといえば今や誰の生活にも欠かせなく、自然と毎日来店している方も多いのではないでしょうか。そんな、コンビニの市場規模、いかほどかご存知でしょうか?実は、国内史上初の10兆円を超えたところです。店舗数も55,774店が日本中に出店していることが明らかになっています。(日本フランチャイズチェーン協会調べ)

業界歴にして40年を超えたところですかね。コンビニ業界の規模感を他の飲食業界などと比べて見たいと思います。
まずはコンビニチェーン。初出店から1,000店舗を達成した年数は、セブン-イレブンが7年、ローソンが8年、ファミリーマートが15年になります。他業種・他業態で見るとマクドナルドが22年、吉野家が105年、スターバックスが8年の年数を費やしています。

こうして比較して見ると、コンビニチェーンは名だたる飲食チェーンに比べて1,000店を達成するスピードが突出していることがわかります。次に5,000店舗の達成年数を見るとセブン-イレブンが19年、ローソンが21年、ファミリーマートが26年になります。

次に、近年の大量出店時代を表す興味深いデータがあるのでご紹介しますね。平成16年度から25年度までの10年間を見ると面白い結果が表れました。出店数にして、セブン-イレブンが約5,493店、ローソンが約3,419店、ファミリーマートが約3,282店・・これを見ると、セブン-イレブンの出店スピードが圧倒的なのが理解できますね。

業界店舗数ナンバーワンとされるセブン-イレブンの強みの一つ「ドミナント方式(高密度多店舗出店)」は、またの機会に話したいと思います。この新たな10年に関しては、平均日販50万で仮定して算出すると約2兆円の市場規模が誕生していることになります。このような視点からも店舗数が、非常に大きな鍵になるビジネスモデルであると私は思います。(店舗数は各社HPの決算書より抜粋)

各コンビニ本部に加盟している加盟店の現場は、人育ての時代がやってくる

では、コンビニ店舗実際の現場はどうなのかと言うと「客数ビジネス」であると私は思っています。いかに多くのお客さまを接客するかが商売、経営に大きく影響します。チェーン本部はIT進化により効率化がドンドン進んでいきます。

が、日本の商習慣は「人」が関連することが非常に、多いです。そうすると、「開店しているだけで良いコンビニ」から「感じの良いコンビニ」が求められてきます。採用難である小売業・飲食業でも矛盾する「人育て」が必要です。

コンビニ業界でも、加盟する前から多店舗化(複数店舗展開)を意識する方は、「商売をするスキル」と同じくらいの「人を育てるスキル」について深く考えて未来設計をしていくことが成功の鍵になります。そうしなければ、売上が順調でも、人についてのコミュニケーションで継続的に悩みつづけなければならなくなるケースもあります。

非常に、魅力あるブランド力(価値)があるコンビニビジネスですが、1店舗1店舗の個店は小さな商売であることは、決して変わりありません。商売を通じて、パート・アルバイトを戦力化して一緒にお店を作ることが好きになることが「商売の原点」になります。

セブンやローソンなど大手コンビニが複数店経営を奨励している理由

現在、セブン-イレブンでは、1店舗経営のオーナーが64%、複数店経営をしているオーナーは36%になります(2015年度)。支援制度についても従業員向けの「従業員独立支援制度」「複数店経営奨励制度」と充実させています。

次いでローソンはというと、複数店経営をしているオーナーは61%。加盟店経営者のうち、3人に1人以上が複数店を経営しています(2014年度)。ここで、ローソン独自のオーナー支援制度をご紹介したいと思います。
4店舗以上の多店舗経営を実現したオーナーが対象になる制度ですが、その上で一定の条件を満たせばローソン公式認定のマネジメントオーナーになれる。ローソン独自の支援制度「マネジメントオーナー制度(MO)」と呼ばれるシステムです。

MOとは、端的に説明すると、通常の1店舗に対して経営指導などを行うスーパーバイザー(店舗指導員)ではなく、複数店舗全体に対して支援をするMC(マネジメントコンサルタント)がつく制度のことです。これはローソンとフランチャイズ契約を結び開業したオーナーにとってもメリットがある制度ですが、4店舗以上を軌道にのせるということは経営手腕があるオーナーという証でもあるといえます。

ただ、オーナーだけでなく本部にとっても力量あるオーナーに出店するのなら任せたいと考えるのは自然なことで、オーナー店舗の指導に当たる本部スタッフの人員だけでなく開業前に行う研修の必要もなくなるなど、本部にかかるコストも下がります。そういった意味では本部にとってもメリットある制度と言えそうですね。

ファミマ×サークルKサンクスに見られる経営統合も店舗数拡大の手段

店舗数を拡大する手段として、「経営統合」も挙げられるでしょう。現在、ファミリーマートと、サークルKサンクスは大きな経営統合を進めています。内容については、コンビニの店舗名をファミリーマートに一本化する方向で協議されています。私は、もし店舗数拡大の安易な経営統合であるなら、現場で生まれる不安感は相当なものであると予想します。

看板をかえることもそうですが、商品の入れ替え、契約書の再契約やオペレーションの再教育と多岐にわたります。一番、重要になってくるのが加盟店経営者の商売マインドです。これまで続けてきた商売の習慣から生まれる商売マインドは、すぐには修正できません。

そんな中で、経営統合し巨大チェーンとして、販売施策を均一化できるかどうかが私は不安要素だと思います。トップチェーンが経営統合に慎重なのは、本部チェーンの施策徹底度・経営理念を理解した加盟店経営者に、新規物件を紹介し複数店化を進める方が現場が強くなると、コンビニ本部スタッフ出身者として私は思います。

コンビニ研究家 田矢 信二

大阪府生まれ。幼少より実家のおもちゃ屋を手伝いながら商売を学ぶ。CVSチェーン本部で業界1位セブンイレブンと業界2位ローソンにおいて、現場経験を積んだ後にコンサルタント会社も経験。コンビニ研究家として、店舗ビジネス業界へ「人」に関連する育成テーマにて講演・研修には定評がある。コンビニをテーマにテレビ・ラジオにも出演。著書に「セブン―イレブン流 98%のアルバイトが「商売人」に変わるノート」(TWJ BUSINESS)がある。