株式会社経営教育研究所 FCアナリスト・コンサルタント今野篤
2015-06-03 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社経営教育研究所 FCアナリスト・コンサルタント 今野篤

2015教育フランチャイズ動向

 このコラムのポイント

フランチャイズ・ショー2015の取材活動を通し、教育コンサルタントの今野篤氏がまとめた2015年度の教育フランチャイズの現状です。幼児教育や学童保育、放課後デイサービスなどが旬であることにも注目でしょう。

フランチャイズWEBリポート編集部


変わる教育フランチャイズ

「第31回フランチャイズ・ショー2014」が、3月4日(水)から6日(金)の3日間、東京ビッグサイトで開催された。今回は200社・団体が出展し、延べ3万人以上の人が訪れた。教育関連は個別指導塾を中心に19社が出展した。

個別指導塾は12社が出展。個別指導に以前のようなパワーは感じられないものの、少子化・寡占化にも関わらず多い。今回の目玉はずばりクラスベネッセ。今回のFCショーではかなりの注目を浴び、説明に聞きに来る人が絶えなかった。

進研ゼミ会員数365万人に対してのダイレクトマーケティング、子会社の東京個別指導学院とのシナジー効果、そして圧倒的なブランド力。恐らく数年の間で1000教室以上の展開を行ってくるだろう。

その他、ECCベストワンが小学生向け学習教室(ECCジュニア)、拓人がスクールIEと幼児・英会話・学童保育をいっしょに出展するなど、『個別指導』+『能力開発・習い事』の組み合わせが増えている。王者明光義塾やシェア拡大中である城南コベッツをはじめ、ITTO個別指導学院トライプラス京進スクール・ワン、個太郎塾、名学館の次の一手も気になる。

2020年の教育改革を見据え、個別指導自体のブラッシュアップしつつ、新たな商品パッケージ開発を進めてくるのではないだろうか。今後、1:2の古典的な個別指導は、相当の企業体力か差別化要因もしくはその両方がないと、寡占化した市場で成長スパイラルに乗せることは難しくなるだろう。

一方、200教室間近のヒーローズや昨年からFC展開を始めた学びの森 J-STUDIOなど、低価格戦略を取る個別指導は確実に伸びている。単に塾の授業料が安いだけではなく、FC参入のコストも下げることで加盟希望者にも訴求し、2つの顧客(保護者・生徒と加盟者)をうまく囲い込んでいる。ただし低価格系の個別指導塾は、指導形式や授業価格帯がクラスベネッセとバッティングする可能性があり、戦略や出店計画の見直しが必要になってくるかもしれない。

幼児・学童保育に放課後デイが台頭

この数年間、個別指導から低年齢化にシフトしてきた教育ビジネスFC。減少傾向にある個別指導に変わり、出展が増えてきたのが英会話・英語、幼児、学童保育チェーンである。教育の多様化を受けて、教育フランチャイズもここ数年でだいぶ変化している。

英会話・英語は、千葉を中心に展開するIBジャパンが出展。同社は個別指導塾も数十校展開していることもあり、英語と塾のコンビネーションに強みがある。また、台湾から上陸したJOY国際教育グループがおもしろい。

同社は台湾で200以上、中国でも200以上の教室を展開する英会話スクール。元出版社の強みを活かしたテキストづくりに定評があり、仕掛け本や国の文化にあった教材など、日本の英会話スクールに対して差別化を図る。 代表のPeggy Huangさんにインタビューしたところ、インタビューの大半を教材について語り、教材に合わせてデジタルインタラクティブな指導に自信を持っていることが伺えた。既に東京・大塚に教場も構えており、台湾、中国に続いて、日本でもFCによる展開を開始する。

幼児・学童系は、勢いある拓人こども未来のキッズデュオを始め、学凛社アウラ、コペルが出展。
単に幼児の面倒を見るのではなく、英語や受験、教材、運動など付加価値をつけており、この3社は勝ち組ブランドと言ってよいだろう。幼児・学童系市場の伸び代は大きいので、今後FCショーなどで他の出展者も増えてくるのではないだろうか。教育業ではないが、子供服や子供用品のリサイクルFCからも2社出展があり、少子化時代との中、需要の高まりがある。

その他、数年前から学習障害児を対象とした専門塾がポツポツと出ており、今年のショーではハッピーテラスとFits横濱の2社出展があった。放課後等デイサービスと言われるこのサービスは、厚生労働者により平成24年4月に児童福祉法に位置づけられた新たな支援である。ウィキペディアによると、主に6歳から18歳の障害のある児童を対象として、放課後や夏休み等長期休業日に生活能力向上のための訓練および社会との交流促進等を継続的に提供するという。

学習障害児は現在、子供の6%(16人にひとりの割合)が該当すると言われており、決して少なくはない。国が後押しをする社会貢献型のインフラ事業であり、まだ競合も多くない。このマーケットも見逃せない。

株式会社経営教育研究所 FCアナリスト・コンサルタント 今野篤

株式会社経営教育研究所 代表取締役。FCアナリスト・コンサルタント。経営学修士。 旅行代理店、学習塾FC、ベンチャーを経て独立。専門は教育とサービスFC。 スーパーバイザー(SV)経験を活かし、FC本部の構築やSV育成を行う。 著書「フランチャイズ」「塾・予備校(協力)」。毎年「フランチャイズ・ハンドブック」発刊。