株式会社経営教育研究所 FCアナリスト・コンサルタント今野篤
2016-02-22 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社経営教育研究所 FCアナリスト・コンサルタント 今野篤

教育ビジネスアナリストが予測!2016年教育FC最新動向

 このコラムのポイント

ここ数年で一気に増えた塾や幼児教室などのフランチャイズ(FC)ブランド。市場を牽引してきた個別指導塾のほか、予備校、英語・英会話、学童保育、幼児教室、習い事など教育ビジネスの業態は多様化しています。そんな中差別化を迫られる各ブランドですが、その実態と動向について教育ビジネスアナリストの今野篤氏に解説いただきました。

フランチャイズWEBリポート編集部


広がる民間教育の裾野―2016年2月までの流れを振り返る

市場を細分化してみていくと、新しい分野での教育ビジネスが始まっている。自立式型の個別指導塾は従来の個別指導と違い、講師一人で5~10名程度の生徒を指導する。低価格な授業やフランチャイズ化と相まって勢力を拡大中である。

幼児教育や右脳開発、習い事では低年齢化および付加価値化が進む。民間学童保育は社会にあわせた変化を遂げ、都市部では潜在ニーズが高い。学習はもちろんのこと、運動、食事、送迎まで一気痛貫のサービスを提供する。

その他、0歳児からの幼児教室、現代に復活したそろばん塾、サッカーやスポーツ教室など、教育の多様化が進む。

幼児や習い事までを対象にすると、塾予備校の市場は一気に2兆円に膨れ上がる。
少子化が確定未来となった今、市場のパイを広げる―これは成熟した業界が避けて通れない道である。



しかしそこにあるのはM&Aの活発化や異業種による参入・既存市場の破壊でよりビジネスは複雑になり、より経営力のある企業が市場を支配している。

実際に東進ハイスクールのナガセ、学研HDやベネッセHD、Z会で有名な増進会による塾企業の買収が進み、かつて数年前まで20社近くあった上場塾は減り続け、昨年9月には学習塾最大手の栄光HDも買収により上場を廃止した。

また、リクルートやジャストシステム、DeNAといった異業種からの参入が相次いでいる。

一円刻みの価格競争にしのぎを削るような業界と比較すれば、教育サービスはまだまだ収益面でのゆとりが大きい。「教育費は聖域」といわれ続けてきただけに対前年比を維持し、不況下でも最も影響を受けにくい分野といっても過言ではない。その中でも堅調な業績を維持しているのが塾予備校業界である。

成長マーケットの教育フランチャイズ業界

日本フランチャイズチェーン協会のFC統計調査によると、2014年度の学習塾・カルチャースクール分野売上高は前年比105.6%の4,754億円。チェーン本部数は昨年に比べ2つ増えて90ブランドだった。

また、FC教室数は前年比100.7%の32,274教室と若干増え、一教室あたりの売上高も前年比104.9%の1,473万円と増えている。



個別指導教室を中心に、少子化や競争激化を背景にしつつも堅調に推移し、教育サービスのフランチャイズは教室数・売上高ともに成長を見せている。

学習塾において個別指導型のシェアは年々高まり、個別指導シェアの拡大を勢いづけているのが、低資本開業をウリにするアーリー系FC勢である。
個別指導型FCは年々本部数が増え、今ではFC本部同士の激しい加盟者争奪戦が激化している。

また教育の多様化に伴い、幼児教育、英会話、そろばんなど様々なFCパッケージが出てきており、新しい時代のニーズを反映した結果といえよう。

成熟する市場の中、本部は新たな商品・サービスの開発、FC加盟店の支援に力を注ぐ。
加盟者(オーナー)は自身のスキルの棚卸しをしつつ、ミスマッチのないようFC本部探しをしたい。

個別指導塾のフランチャイズ現状

個別指導塾を展開するFC本部は確認できているもので40社ほど。教室数にして実に6,000教室に上る。総務省の事業所・企業統計によれば、学習塾の教室数は約5万であるから、全学習塾教室数の1割以上が個別指導塾になる計算だ。

個別指導塾のフランチャイズは、「アーリー型」、「異業種型」、「集団型」、「個別専門型」と大きく4つのタイプに分類できる。

アーリー型

参入して10年に満たないアーリー型。「個別指導のセルモ」、「ヒーローズ」、「ショウイン」が代表格。これらの企業は低資本で加盟できるモデルやデジタル教材の活用によって、授業料・加盟金ともに戦略的な価値付けをし、既存の個別指導塾FCとは一線を画すビジネスモデルを構築。
この他、「エクセルシア」、「学びの森J-STUDIO」など新ブランドも登場している。

異業種型

塾以外の業種から参入してきた異業種型。「トライプラス」、「城南コベッツ」、「ECCベストワン」などが教室数を伸ばしている。これらの企業は、自社のコンテンツやノウハウを塾用のFCパッケージに仕上げ、差別化をはかる戦略だ。

「トライプラス」は家庭教師で培った講師ネットワークを土台に。「城南コベッツ」は予備校で培った成績保証制度や映像授業、「ECCベストワン」は総合教育機関ECCのコンテンツやネットワークを活かしたFC創りをしている。
また昨年からFC展開をはじめた「クラスベネッセ」に注目が集まる。

集団型

集団指導塾から参入する「集団塾」は、「個太郎塾」、「京進スクールワン」、「AXIS」が代表格。このグループは、企業スケールメリットやブランド力、集団指導塾で培った指導力を以て個別指導教室の勢力拡大をはかっている。

近年、「秀英iD予備校」や「フリーステップ」も個別指導FCに参入、集団指導塾による個別指導展開はいよいよ佳境に入ったようだ。

個別専門型

「明光義塾」、「スクールIE」、「ITTO個別指導学院」、「早稲田育英ゼミナール」、「Dr.関塾」、「名学館」などが代表格。
大手中心にこれまで培ってきたノウハウを活かし、次世代のFCビジネスモデル構築や新パッケージとサービスの開発が活発である。

「明光義塾」を運営する明光ネットワークジャパンは、早稲田アカデミー個別進学館ほか、世界を視野にNo.1を目指す明光サッカースクールなどをFC展開。

自分未来きょういくは、快適な学習空間と英語施設を併設した「みやび個別指導学院」、女子専用の「すみれ個別指導学院」、低価格な「NOVA個別指導学院」や「家庭教師のさらさ」など多チャンネル化を進める。

やる気スイッチグループの拓人は、個別指導のほか「幼児教室チャイルド・アイズ」、「英会話WinBe(ウィンビー)」、「民間学童Kids Duo」を集結させ、幼児~高校生向けの教育サービスを一体にした複合施設を展開中。また、スポーツを科学する「ゆめスポ」を新たにプロデュースした。

この他、「学研CAIスクール」は学習のタブレット化など、「Dr.関塾」、「早稲田育英ゼミナール」、「JUKUペガサス」、「名学館」も独自路線を打ち出し全国展開を進める。

幼児教室のフランチャイズ事情

就学前の児童を対象とする知育教育は、右脳教育の「七田チャイルドアカデミー」や作文道を柱に幼児と小学生の心と学力を育てる「ナーサリー」、「エンジェルコスモ」が以前からFCを展開中。

少子化による市場の縮小により顧客層の低年齢化が進み、幼児教育に進出する企業が増えてきた。それに伴い、昨今知育教育のFC化が進んでいる。

主なブランドでは0歳児からの幼児教室を展開する「コペル」、米国発のグローバルな教育システム「ジンボリー」、母親が生徒の「TOE Baby Park」などが近年FCに参入。

大手塾からは、心と脳を育む「チャイルド・アイズ」がFC展開をしている。

その他ユニーク教育ビジネスのフランチャイズ事情

教育が多様化するにつれて、続々と学習周辺サービス領域のFCパッケージが増えている。

ヒューマンキッズは、理科実験教室やロボット教室を全国に530教室展開中。くれファスは、LEGO(c)社のキットを使ったプログラミング授業を取り入れている。

近年復活したそろばんは、「京大個別会そろばん塾ピコ」と「イシド式そろばん」が全国展開中。両ブランド合わせると600教室にもなる。

また、子どものやる気や続ける力を育む「七つの習慣」、プロコーチが教える「明光サッカースクール」、正しく見る技術が学ぶ楽しみを伸ばす「目の学校」、生涯児童の学童保育と呼ばれる「放課後等デイサービス」など、教育FCも多様化時代を迎えた。

教育ビジネスをもっと知りたい方はこちら

実はこのコラムで触れた内容は、教育フランチャイズ業界の一部です。ほかにも成長している教育ビジネスだったり業界事情というのはまだまだございます。

いわゆる「ココだけの話」に関しては、来月の3月24日(木)に開催するセミナーでお話したいと思います。

このセミナーは、フランチャイズの情報サイトフランチャイズWEBリポートさんが主催し、今旬の教育フランチャイズ3社の成功事例や失敗事例もそれぞれの本部に話してもらうのですが、その前に私が基調講演の講師として業界全般のお話をしますし、セミナー最後でも希望制で、教育ビジネスに参入する上でのご質問などお伺いします。

実際のフランチャイズ本部をご覧になったら、おそらくビジネスのイメージもわきやすいかと思いますが、教育ビジネスアナリストとして、第三者的観点から皆さんの疑問に答えることができると考えています。

福岡開催なのですが、ご興味のある方はぜひこちらからお申込みください。(参加無料)

▽フランチャイズ活用!教育ビジネス参入セミナーin福岡
https://fc.dai.co.jp/seminar/schedule/fukuoka_20160324

残念ながら、セミナーにお越しになることができない・・という場合には、こちらのページなどご覧になって各教育フランチャイズ本部の比較をしてみてはいかがでしょうか。

▽教育フランチャイズを比較してみる
https://fc.dai.co.jp/feature/type/jyuku

株式会社経営教育研究所 FCアナリスト・コンサルタント 今野篤

株式会社経営教育研究所 代表取締役。FCアナリスト・コンサルタント。経営学修士。 旅行代理店、学習塾FC、ベンチャーを経て独立。専門は教育とサービスFC。 スーパーバイザー(SV)経験を活かし、FC本部の構築やSV育成を行う。 著書「フランチャイズ」「塾・予備校(協力)」。毎年「フランチャイズ・ハンドブック」発刊。